ビオラ・スミレ科スミレ属「最近、妹が栞をつくるのにハマってて、弦一郎くんにも……って」
きらめくシールと色鉛筆のイラストで彩られた紙片を幸村から差し出され、ややひるむ。可愛いが、可愛すぎる。リボンが黒なのは幸いだった。
受け取って、なんとはなしに裏返してみるとそちらは無地で、ただ端の方にひそやかに花が押されていた。水ににじんだ絵の具のようにじんわりした淡い黄色と薄紫の花びらに見覚えがある。
「お前の花だな」
驚いたように幸村がぱちぱちと瞬きをし、それにあわせて長いまつ毛が揺れた。
「知ってたの」
「名前までは知らん。だがお前の庭で見た」
「そっか」
噛みしめるように幸村は言って、それからにこりと笑った。
「ビオラ。ビオラだよ!」
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