紫煙の替わりにキャンディを「君は煙草を吸うのかい?」
「あ? だからなんだよ」
吸血鬼退治人の懐に突然転がり込んできた変なやつ。
真祖にして無敵とはついて回る噂話に過ぎず、実態はただのクソ雑魚だったこいつ、吸血鬼ドラルク。
ロナ戦の原稿が思うように行かず、事務所の窓を開けて紫煙を燻らせていたら、出かけていたらしく扉を開けるなり意外そうな顔で声をかけられる。
「別に深い意味はないけどね。君から煙草の臭いがしたことはなかったから」
「あぁ……。別に、常に吸うほどヘビースモーカーじゃねぇよ。こう……、原稿が進まなかったり、本業がうまくいかなかったときに……」
そこまでしゃべって、別にこいつに話すことじゃないと、唐突に思い出す。
「って、どうでもいいだろ。どうせ煙いだの臭いだのってすぐ死ぬんだからさっさとあっち行ってろ」
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