遺失物取扱所-5「今年も来た……」
「お元気そうで何よりですが」
名取の頭の上までよじ登った猫がぶるぶる震えていて、名取もため息をついた。
元は陶器だと自分で豪語する猫は大きさに見合ってそれなりに重い。その重さと硬さで頭の上で震えられては首を痛めそうだ。下りて欲しいのだが、名取にがっしりと張り付いた猫は簡単には離れそうにない。
震える猫が見つめる先で多軌と田沼が七瀬と談笑している。一年ぶりの再会に話が尽きないのか、楽しそうに七瀬と手を繋ぎ話し込んでいる様子の多軌は猫の存在にまだ気付いていないが、所詮時間の問題だ。すぐ大喜びで駆け寄ってくるだろうと名取にもわかる。
猫の恐怖が近付いているのはよくわかっているが重いものは重い。
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