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    m__oji_

    @m__oji_

    ntm/ななつと色々をたまに書いてる

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    DOODLE読み直してたらやっぱ自分的に一番すごかったんだよな、になったので……今更の六巻のあと。原作ベース。全然名夏になってない暗い話です。この六巻から今後こんなに名夏になるとは思わないじゃん?!
    夕影のいない森(名夏)「先生、蝶が」
     タキが手を伸ばすと猫に止まっていた蝶は驚ろいて素早く飛び去った。
     鱗粉がわずかに舞っている。いくつもの光の粒が輝きながら空から土に落ちて行った。
    「あっ、ごめんね……」
     慌てて手を引いたタキを見上げて猫がため息をつく。それから夏目を見て、もう一度ため息をついた。
     呆れたような猫の態度に何も言えなかった。だって、猫の言うことは全部正しい。彼の言葉と同じように。
     飛び去る蝶を見送るタキと猫が視界の端に映っているのに何も見えていない。夏目からも全てが飛び去った気がして、何も見たくない。
     ただ深く深く息を吐き出す。
    「タキ、ごめん」
    「なにが……あ、これ」
     そっとクッキーの袋を差し出すと、タキはそれだけで全部を理解したように表情を引き攣らせた。受け取ろうと一度手を伸ばそうとして、でもためらってまた下げてしまうタキと夏目の間で、受け取ってもらえない袋が宙に浮いている。
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    m__oji_

    DOODLE19歳くらい名取さん。モブ多め。芸能界のしんどいところを見る暗い話。暴力的なことを匂わせる表現があります(名取さんが遭うわけじゃない)
    本誌の香がやばくて、あれ初めて使ったとき咽せたよね?!から見た幻覚です。
    名夏書こうと思ってたのになんか間違えちゃったな?!本誌のことで名夏も書きたい。


    2024/3/24
    負け犬、夢を見る(19歳名取周一) 眼の前で人が泣いていて、息が詰まる。
     どうして泣いているのかも鮮明にわかる。きっと同じ気持ちだからだ。名も知らぬ人からのひどく重くて辛い感情が重なり合う。
     でも、涙は出ない。ずっと幼い頃に泣いたきり泣いた記憶がない名取には涙を流す人が遠く見える。
     どうしたらこんなにも絶え間なく涙が出るんだろう。
    「ちょっと、この娘は下がらせて! どういう教育してんだよ、こんなんで泣いてたら使えないよ!」
     初老の監督からの怒鳴り声に慌てて周囲が動き出すのを少し離れたところから見ていた。
     投げ付けられた手酷い言葉に唇を噛み締めるけれど、名取は泣き続ける歳下の少女に手を差し伸べることもできない。彼女の名前すらろくに覚えていないくせに、助け船なんか出せない。慌てた様子で駆け寄ってきたマネージャーの女性が泣く少女の手を取って宥めながらセットの後ろに連れて行くのをただ見送った。
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    m__oji_

    DOODLE事後の話なのでちょっとそれっぽい描写があります
    わかってる夏目くんとわかってない名取さん
    ランドスケープの削ったとこを再利用したので同じ話感がすごいんだけど、いつも同じ話だしそんな気にするな……

    2023/11/18
    テュペロハニー(名夏) ぽたりと水がこぼれ落ちた。
     髪の先を伝う水滴が落ちて床に小さな水たまりを作る。ぼんやりと落ちる水を見ているとぱさりと髪に布がかかった。
     真っ白のタオルで髪を拭われる。
    「自分で拭けますよ……」
    「いいから。じっとしてて」
     自分で髪を拭おう手を上げたけれど、すぐに掴まれて下ろされる。とても穏やかで優しい声だけれど、有無を言わさずに濡れた髪や身体を拭われるのはいつも変わらない。
     指先がタオルごと後頭部をかき回していて、水が髪から飛び散る。柔らかな手付きではあるけれど離してくれるつもりは全くなさそうで、仕方なく半端に浮いたままだった腕を下ろした。
     視界がタオルで塞がれてしまう。上の方は何も見えないから下を向くと、名取は窮屈そうに長い脚を曲げて座り込んでいた。狭い洗面所の床は二人で座り込んでしまえばもういっぱいで、小さな空間に無理やり詰め込まれたみたいだ。動きにくそうにしながら手を伸ばされていて、無理してそんなことしなくていいのにって思うけれど、それを言ってみたところでやめてくれはしないなってわかっている。
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    MAIKING名夏のパラレルの続き

    これで話的には半分くらいまで来たかなくらい。六万字近く書いたのに更に六万書くってコト……?
    塔子さんがくれた着物は箱崎のカラーの!です!と思ってるんだけどあの花は椿と牡丹で合ってるのかやや不安

    2023/9/18
    遺失物取扱所-4(名夏) 隣で敷布にしっかりくるまった夏目がよく眠っている。
     着物の裾はしっかり掴まれたままだ。動くに動けず、触れないのだから振り解くこともできずに名取はただじっとしているだけだ。
     数日前から夏目は名取を掴んで昼寝をするようになって、掴んで来る手の近さにもすっかり慣れた。今も特に動じることもなく夏目の隣で借り物の書物を手にしている。
     とは言っても本の中身は頭に入らなくて、隣で眠る子供が吐き出す呼吸音を名取はじっと聞いていた。
     ずっと掴まれたままの裾からじわりと体温が移っている。人の幼子のように高い温度がすぐ近くに在った。触れることはないのに、今にも触れそうなほどひどく近い距離にいる。
     夏目との距離がひどく近くなっているように思う。名取にとっては分不相応にも思える距離が、それが正しいことなのかわからない。誰も見ていない二人だけの暮らしの中で、どんどん麻痺する感覚が間違っていないか何度も考えてしまう。
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    m__oji_

    MAIKING名夏のパラレル的なやつの続き

    何気にずっと忘れないで書いてるけど全然話は進んでないけど文字数だけは結構嵩んでる……
    今年中に終わって欲しいんだけど無理そうな気がして来た。がんばれ

    2023/8/6
    遺失物取扱所-3(名夏)「うわー山積み……」
     戸を開いた途端、げんなりを絵に描いたような顔をして夏目は肩を落とした。
     確かにこれだけ札や絵馬が積まれているのを見たのは名取も初めてだ。
     人の世の失せ物探しの末社と神域の末社を繋いだ社の中は、失せ物探しの願いが書かれた絵馬、札、手紙の類で溢れかえっていた。うわあーと夏目が呻いている間にも、天井からぽんと軽い音がして新しい絵馬が落ちてくる。
    「今日すごいね」
    「すごすぎます。なかなかない……」
    「何かあったのかな」
    「大社で夏の大祭があったから人がいっぱい来たんだと思います。でも、大祭の後でもこんなに多いのはなかなかないですね」
     大祭、の言葉にそうかと頷く。
     確かに大社では一昨日まで夏の大祭が行われており、人の世に下りた時の人出はなかなかのものだった。ただの人の観光客も多かったが、他所の社からの使いや神職も多く訪れており、神域にはどこからかやってきた見知らぬ神が数日滞在していた。人の世の大社の拝殿や社務所がいつになく人だらけでごった返していたのを思い出す。
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