陰から見守るということ 高校最後の春休み─。
静かな、まどろみのような時が如月骨董品店に流れる。
店主・如月翡翠は店内の目録を眺めながら様々考え事をしている。
彼も高校3年生。
もうすぐ卒業が近づき、家業である骨董品店を継ぎながら新たな店の展開について模索している。
彼と共に半年間東京を守る為に戦った戦友たちも今、
それぞれ新しい旅立ちの準備をしている頃だろう。
(さて、どうしたものか─)
彼の脳裏にあるのはこの店の将来と、そして東京の将来。
そして、一人の青年の将来。
今、彼は密かに秘めた思いと共に決意している事があった。
するとその時、店の戸がガラガラと開いた。
★
「お邪魔するよ」
低く落ち着いた声で音もなく入ってきたのはいつぞやこの店を訪ねてきたのは身長2メートルほど、拳武館の首領である鳴瀧冬吾だった。
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