グッバイ・マイ・ワールド(前編) 嵐はエンジン音を伴いやってきた。
「ヒゲ! おい‼ そこのヒゲ‼」
ホームルームを終え帰路につく学生たちの道を塞ぐように校門前にバイクで現れた男たちは、狼狽する生徒たちの顔をじっくりと見定めてからひとりの男に声を掛けた。
呼ばれた男――野間は、声や周囲の視線にも動じない様子で立ち止まり自分を指さすと、
「ん?」
と軽い調子で首を傾げた。
六人の男たちは険しい目を更に吊り上げ、バイクから足を下ろして砂利を踏む。この場で唯一まともな受け答えができそうと思い声を投げたが、自分たちに怯まないのは気分が悪い。そうありありと想像できる苛立った足取りに、周囲の緊張がぐっと高まる。
「お前だよ。他にヒゲがいるか?」
7472