仕方がないんだ。典子さんのため、明子のため。
それなら、俺は。
何でもやるんだ。
俺は敷島浩一。れっきとした男だ。何でこんなことを前置きする必要があるかと言うと、話は長くなるかもしれない。
俺は独身だ。だけど、内縁……というか、転がり込んできた女性と赤ん坊がいる。典子さんと、明子だ。
俺の家に転がり込んできた時は、明子は元気な様子だったけど典子さんは疲労困憊といった様子だった。
男に騙され、赤ん坊を押し付けられ、親からも勘当され、子供を抱いて一人彷徨うだけの日々だったらしい。赤ん坊がいては日雇いも水商売もできない。日に日に減っていく貯金に焦燥感を覚えてらしい。
そこで、俺と出会った。俺は親に先立たれて独り身。なんとなく、典子さんに同情してしまった。
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