No Need to Say Goodbye「ラインハルト」
その言葉が自分を呼ぶものであることに彼が気づいたとき、影は口の中で何度も再び彼の名前をつぶやいていた。 その影は彼の友人でもあるが、名前で呼ばれたのは初めてだ。 当惑に近い感情を感じながらも不快感はなく彼は聞きいた。
「何だ、カール?」
影から帰ってきた答えには何の論理もなかった。 口を開けばいつも青山流水で自分が言いたいことだけを吐き出していた、必ず必要な分よりいつも一言多い彼の友人は、今この瞬間だけはその悪い性質を失ってしまったようだった。 代わりに、たった今初めて聞いた言語の一単語をかみしめてみる人のように声を少しずつ変えながら、繰り返し彼の名前を詠んでいるだけだった。 率直な印象としては、言葉を学んだばかりの子供がどもるように聞こえたりもした。 しかし、この子が何を望んでいるのかラインハルトは分からなかった。 彼の名前を解体して探したいものでもあるのだろうか。
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