廃墟の教会でくすんだステンドガラスから、淡い光が差し込んでいる。
彼女にここで待つように言われてから、どれだけの時間が経ったのだろう。
事の発端は、この廃墟を見つけたことだ。
「生前、本とかテレビで見たわ。ここで家族とか友達を呼んで、豪華な式をするんでしょう。昔、憧れたわ」
「したいのか?」
「……え」
「冗談だ」
「あなたの冗談って、やっぱり面白くないわ」
彼女は頬を膨らませて拗ねた。
「お前といると、本当に退屈しないな。そんなことが許されるとでも思っているのか」
「なに? 許しが必要なの? 悪人なのに」
「お前にしては正論だな。だがそれをする必要もないだろう」
「……少しくらいいいじゃない。どうせ誰もいないんだから」
「許さないから、地獄があるんだろう。それすら従わなかったのが俺たちだ」
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