雷鳴 微かに香っていた雨の匂いが濃くなってきた頃にポタッ、ポタッと雨粒が地面や屋根を打ち始めた。変則的な間隔をあけて聞こえてきた雨音も次第に雨粒を増やし、大雨へと変わっていった。
そもそも本日の天候は晴れ。
今朝からカラッとした気持ちのいい夏空が広がっていたのだからこの時季によくある通り雨だろう、と宿儺は特に気を留めずにいた。
このような雨を見るとあの子犬と出逢った日を彷彿とさせられる。あの時も傘を強く打つ雨の日であった。
そういえばその子犬の姿が見えないなと、宿儺が部屋の中に目を向けると、遠くの方からゴロゴロと雷鳴が聞こえてきた。これはいかん、と思い宿儺は腰を持ち上げくだんの子犬の捜索に向かった。
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