「待たせたな」
店を閉めて、外で待ってた刑部に声をかける。昼間は汗をかく陽気でも、零時を過ぎればさすがに空気が冷たい。
今日は週に一度、刑部が来る日だからバイクでは来ず、このままどちらかの部屋に行く予定だ。
「いや…」
言葉を濁した刑部が、直前まで見ていたスマートフォンの画面を切った。画面の光に照らされていた煙草の煙が、途端に姿を消した。
「んだよ、よくない知らせか」
「晃は知らなくていいことだよ」
咥えていた煙草の灰を落としながら、刑部が笑顔で蓋をする。それに少しばかりカチンときて、つい棘のある言葉がでる。
「そーかよ。急ぎの用なら別に、今日来なくても良かったんだぞ」
心とは正反対の声が出るか止まらない。刑部はそんな桐ケ谷を見つめると、煙草を吸って煙を顔面に吹きかけてきた。
1037