『そこがイイんだ』 明日から久し振りの連休だからと、ふたりで楽しく酒を酌み交わしていたら、サギョウが突然聞いてきた。
「先輩ってぇ、自分でするときぃ〜、どういうふうにするんですかぁ〜?」
「? する? とは、なにを?」
「なにってぇ〜、そのぉ、オナニ──むごぉ」
「よぉーし寝るぞお前飲み過ぎだ」
遅きに失して殆ど言わせてしまったが最後の最後に手で口を塞いで封じた。
そして有耶無耶にしようと、したんだ、俺は。
それなのに──
「……っぷは! ……っふふ、なぁに〜? 真っ赤になっちゃってぇ〜、恥ずかしいんですかぁ? んん〜?」
その手を取って逃れたサギョウがにやにやと意地悪く追撃してきたから
「当たり前だろう! そんな、もの……、ひとに明け透けにするものでは……!」
「僕らの間で今更ぁ?」
俺は、突っぱねたのに
「それでもだ! お前だって知られたくはないだろ──っんなっ」
「僕は、構わないって、言ったら?」
サギョウが、掴んだ俺の手のひらを、べろりと舐め上げ、ながら、
「僕が教えたら、先輩も、教えてくれる……?」
それまでの不安定な視線を、素面の時よりも更に鋭く──まるで得物の照準器を覗くように──細めて
「見せるから、見せて」
自分の下腹部に、手を、当てた、から──
俺も、腹を括るしか、なかった。
……いや、この言い方は嘘になるな。
俺は今よりももっと、知りたかったんだ。
サギョウのイイところ、を。
サギョウも同じだったんだろう。途中で、
「そういうの、イイんだぁ」
と、嬉しそうに頬を緩めていた。