Knights of Night⑤ 吸血鬼探し、確かに理にかなっている、終始俺に固執するその訳としては。だが、
「……貴様に俺が必要な理由は把握した、だがそれに至った過程が明かされない限り返答はしかねる」
応じるにはまだ早すぎる、何故そうなったのか、見つけて何をするつもりなのか、そして今、どうやってサギョウの中に入っているのか、それらを語らせてからでなければ否も応も──と、俺は考えていたのだが……
「何者かとかいずこかって、何ひとつ、全っ然見当もつかないのか?」
「場所に関してはの。じゃが企てた者については少々の心当たりがある、とは言うても、あまたの中の一部であろうな、くらいのものじゃが」
「へぇ、つまり、大勢から恨みを買ってるって意味だ?」
「それは心外じゃなぁ、羨望の眼差しを受けているとでも言っておくれ」
「じゃあなんでこんなことになってるんだよ?」
「うむ、話したいのは山々であるしその責務が朕にあるのも承知しておる、だが生憎時間が──そう、夜明けまであまり間がない。故に諸々は探す道すがらにでも語りたいのだがどうじゃろう? ダンピールのぬしよ」
こちらの緊張を他所にふたりは──いやある意味ではひとりなのだが──安穏とした調子で会話を繰り、あまつさえ下しかねていた決断を迫ってくる始末。
苛立ちに変わる焦燥、流石に耐えられず声を張り上げた。
「何度聞かれても同じだ! 今全てを明かさぬ限り返答するつもりはない! ……それとサギョウ! お前もお前だ! 少しは自分の立場を考えんか!」
自由を奪われている身体、それは一歩間違えば吸血鬼の意思でどうにでもされるということ、最悪の場合、考えたくもないが、自死の手段まで取り得る、と。
それを分かっているのかという意図で問うた俺に
「分かってますしそれは多分そっちも同じですよ」
見慣れた瞳で、サギョウは静かに告げた。
「『僕』がこの吸血鬼の持ち札に取られたのはすみませんその通りです、でも、同時に、僕にとっては先輩も取られてるんですよ」
「……っ 何を……」
「ぬしはこちらに手を出せないと朕が理解しているという意味じゃよ」
困惑した俺に答えをもたらしたのは紅い瞳の吸血鬼。
「ここまでぬしはこちらへ近付く素振りすら見せておらん。構えと気迫からしてこの身をその刀の一振りで屠るには充分過ぎるほどの手腕を持ちながら、そうしないのには、『この者』を己が手にかけるのは出来うる限り避けたいという考えから、じゃろう?」
「……っ」
反論など出来ようはずもなく、いまだ刀身を鞘に収めたままの俺に、目の前の、吸血鬼は、サギョウは、交互に目の色と口調を変えた。
「そこから、朕は、ぬしにはこの者を殺せないと踏んでおる」
「だけどこの吸血鬼は、僕の身体を使ってあんたを、どうにか、することも、できる、だから──」
「「盾にされているのはどちらも同じ」」
改めて突き付けられる事実、最後の言葉は、果たして、どちらが言ったのだろう。