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    yaginoura0811

    @yaginoura0811

    キショウタニヤマボイスの世界で13年くらい生かされてます。

    雑多なものの基本は総じて右側。推しの移り変わり激しい人間。推しの右側エロ大好き!!!!!!性癖色々。

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    yaginoura0811

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    好きの感情が迷子になったラカムとアオイドスの話。シリアス。

    アオイドスはふいに感じた重みに夢の中に片足を突っ込んだままの状態で薄っすらと目を開けた。
    暗闇のせいで何も見えなかったが、確かに感じる重みに身を捩る。
    遠くの意識の中で捉えた影はもぞもぞとアオイドスの胸元で動いている。

    これは夢なのか。
    それとも現実なのか。

    明確にならない世界の中でアオイドスは肌寒さを感じていた。
    今日は風もないし気温も低くはなかった。
    だが、確かに感じる寒気に少しずつ世界が明確になる。

    静かな部屋に寝息が響く。
    それが自分の寝息である事は分かる。

    そして今感じている寒気の原因も。

    ん、と寝息らしい息を漏らしてまた身を捩る。
    一瞬、戸惑ったように止まった影は一旦アオイドスから離れていく。
    だが、変わらず寝息を立てるアオイドスに再び重なっていった。

    唇に何かが触れる感覚がして目を閉じたままそちらに意識をやる。
    鼻腔を擽る嗅ぎ慣れたスモーキーな匂いに癒しさえ感じる。

    ふとした瞬間、その匂いが恋しくなる時がある。
    どうしようもなく。

    おそらく、相手も同じ事を思っている。
    そう思うだけで心が温かくなる。
    だけど、もしかしたら、それは自分の勘違いで、相手はそんな感情はこれっぽっちも抱いてないかもしれない。

    そう思ったら急にまた寒くなった。

    「…ん……も、っと……」

    寝言のように漏らしてみれば、覆い重なった影はまた下へと降り、腹部に温かさを一つ落とす。
    寝返りするフリをしてその影の身体に触れる。
    そして自分の息遣いとは別に、不規則に聞こえる呼吸が聞こえてくる。

    触れて欲しいと心の中で願いながら吐息を漏らすと、肌を弄られる感覚が心地よかった。

    だけど、その影は未だに迷いのある動きでアオイドスの身体に触れていた。
    これは躊躇いなのか、罪悪感を感じているのかどちらなのだろう。

    そんな事を思いながらアオイドスはその影の名前を口にした。

    「…アカ…イ、ドス…」


    その一瞬、息を詰まらせた影─ラカム─はポツリと一言だけ呟いてアオイドスから離れていく。

    そして遠くで部屋のドアが閉じる音がして、アオイドスはゆっくりと瞼を上げてぼんやりと天井を見上げた。


    どうしてだろう。

    アオイドスは深く息を吐いて額に手を置いて前髪を掻き上げる。
    行き場のない熱は迷いながら自分の身体をぐるぐると駆け巡る。

    こんなにさせたのはラカムだというのに、本人は一言だけ置いて出て行ってしまった。

    『……すまない…』

    何一つ嫌だとは思わなかったのに、置いていかれた言葉は謝罪の言葉で。
    それほどまでに罪の意識があったのか。

    ならば自分が嫌じゃないとその場でラカムを引き止めれば良かったのか。
    どうしてそうしなかったのだろう。
    …いや、何故出来なかったのだろう。

    「……寒いまま置いていくのは、卑怯だぞ…アカイドス」


    行き場のない熱と同じく彷徨う心にアオイドスは自らの身体を抱えた。
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