With you【ラカアオ】抑えられないパトス。初期衝動。
アオイドスとラカムが身体を重ね合う関係になってから、何度も肌同士を触れ合わせる度に思う。
いつも側にいる事がどれだけ尊いのかを。
焦るようにアオイドスを抱きしめたラカムはなんの躊躇いもなく白い肌に唇を寄せる。
微かに跳ねた身体がラカムに密着して腕に手を回し、呼び慣れたニックネームを呼び微笑む。
それに応えるようにラカムの手はアオイドスの衣装の肩口に伸びて慣れた手つきで寛げる。
脱ぎやすいように腕をまっすぐに下ろしたのを確認してから、ラカムは優しく衣装を剥ぎ取り再度首筋に唇を寄せた。
何も纏わない状態のままアオイドスはラカムの前戯に意識を集中させ、温もりを感じる。
じれったいけれど、この甘ったるい時間が二人の欲を掻き立てる。
少しずつ汗ばんできた肌は触れ合った場所からじわりと熱が広がり、ゆらりと瞳が揺らぐ。
目を閉じればお互いの鼓動が速まっていくのを感じる事が出来る。触れ合うだけではない行為が、二人にとってなによりも大事なものだ。
「…こっち、そろそろ触るな?」
「…ん…いいぞ…アカイドス」
アオイドスはゆっくりと腰を浮かせ、ラカムの首に手を回すと、鼻先を肌にくっつけて息を吸い込む。
煙草の残り香が鼻腔をくすぐるのがアオイドスにとって媚薬になり得た。
ラカムの指先が内側を擦り上げると、アオイドスの口から吐息が漏れ出し、肩が揺れる。
見えにくい位置からの挿入だが、一瞬でも肌を触れ合わせていたいが故に対面したまま後ろを解し、解される。
絡みつくようにアオイドスの内側がひくりと蠢き、ラカムの指を締め付ける。
何度も触れられた場所はおそらく、赤く色付いて華やかであろう。
アオイドスは絶えず甘い声を発し、蜜を溢れさせながらびくりびくりと震える。
お腹を擦られているような感覚と湧き上がってくる熱がアオイドスの身も心も乱していく。
「ぁ…あっ…もう…だめだ…アカイドス…」
「ん、ほぐれてきたみたいだし…俺も…、我慢きかねぇ」
実のところ、この数ヶ月こうして行為に及ぶ事が無かったために限界はとうに超えていた。
ただ目の前の、愛しい存在が欲しい。理由はそれだけ。それで充分なのだ。
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「ぁ…ぅっ、ッ…アカイ、ドス…」
ギジギシと音を立てながら揺れるベッドの上でアオイドスが嬌声を漏らしながら腰を揺らめかせる。
ラカムの指先がアオイドスの背骨に這わされ、指の間をすり抜けるような赤い髪を絡めとりながら奥を突き上げる。
ラカムの昂りが内側を満遍なく擦り上げる度に汗を滲ませながら短く息を吐く。
ラカムは自身を包み込む感覚に呻きながら、アオイドスにキスを送る。
絡めた舌が湿りを帯びた音を発しながら触れ合っていく。
女性のような可愛らしさは無いけれど、何時でも観客を魅了し続けるアオイドスの声はラカムの耳に今も美しく響いている。
自分を求める声も、行為の時にだけ呼ぶ名前も何もかもラカムにとって大切なものであり、護りたいものである。
「……あぁ…ラカム…ラカムっ…」
「っ…そんなに、名前呼ばれると、止まってやれなくなっちまうだろ?」
「はっ…い…いい…止まらなくていい、から…もっとパトスを感じさせてくれ…」
「……わかった」
押しては返すように迫り来る波にアオイドスは瞳を蕩けさせながらラカムに視線を送る。
アオイドスから放たれる薔薇の香りに、ラカムはお酒を嗜んだ時のような浮遊感を感じた。
アオイドスの全てがラカムにとって失い難いもの。
声も、熱も、匂いも全て。側にあって欲しいもの。
それがどれだけ自分の心を満たしていくのか。
この先も身をもって感じていたいと思う。
「…アオイドス…愛してる」
「…あぁ…君は…本当に………」
なんて罪作りな男なのだろう。
言葉の続きの代わりに漏れ出した美声と共に、ラカムはアオイドスの望むままに熱いパトスを捧げた。
ずっと消えないように、お互いの存在を分かち合うように。
大切に。