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    アンデ

    まさのき

    DONEアンデルセンの「雪の女王」をわりとまじめにパロったカイ潔(+糸師兄弟)です。藤田貴美さんの漫画版に多大なインスピレーションをいただいてます。中盤までカイザーの気配が皆無ですが、ちゃんとカイ潔です。

    ゲルダ→潔(と冴)、カイ→凛、盗賊の娘→カイザー
    花待ちの窓雪の晩に、枕べで聞く物語



    第一のお話 はじまり


     昔、むかしのお話です。ここではないどこか遠くの国の、知らない土地の、小さな箱庭の村に、ひっそりとよりそい合って暮らす、三人の子どもたちがおりました。三度の春と冬のあいだに生まれた彼らは、名前をそれぞれ冴、世一、凛といいました。赤髪の冴は、三人の中ではもっとも年長で、その下に世一と凛が続きます。泣き虫世一と、やんちゃな凛、面倒見のよい冴の三人組は、遊ぶときも、出かけるときも、眠るときでさえもいつも一緒でした。血をわけた兄弟である冴と凛は、となりの家に住む世一のことを、まるで本当の兄弟のようにたいせつに思っていました。世一だって、冴と凛の二人と血がつながっていないことなんて、つゆとも気にしたことはありません。だって、朝も昼も夜も、扉を開けばそこに冴と凛が立っていて、ふたりといれば、世一に怖いものなんて、なんにもなかったのです。三人は野を駆けて遊び、泥まみれになって眠り、手に手をとって、いつまでもいつまでも仲むつまじく暮らしていました。
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    ryuhi_k

    DONEアンデッド骨×ネクロマンサー輪な擬人化パラレル。
    墓石の上、二人でダンスを:5「これ、どこ向かってんだ?」

    向かいのリングに問う。造りが良さそうな馬車は、それでも振動がゼロじゃあない。窓から覗く景色は、勿論初めてのものだ。何せまだ、リングの屋敷とその職場の往復しかしたことがない。この国も住んでる奴らも、何もかもが俺にとってはどうでもいいからそれに不満はないが、この後に訪れる二人きりじゃない時間には不安はある。

    「お前の意味不明な要望を多分どうにかしてくれる人のとこだよ」
    「男なら普通だろ」
    「えー……」

    何故かリングにはこの当たり前の欲求が理解できないらしい。そりゃ俺だって今の、リングの横の特等席を与えられてる状態は嫌じゃない。寧ろ嬉しい。だが、声、視線、動作、髪の1本ですら欲しがるようにしておいてそりゃないだろう、といいたいのも事実だ。勿論、俺の口からそんな言葉が出ることはない。この不満の言葉達すら、いつの間にかなんだかこう、リングにとって都合よく――……何か腹に渦巻いていた気がするが、どこかへ行ってしまった。そんなどうでもいいことはともかく、俺の身体が直るってんなら単純に嬉しい。というか、二人でこうして出掛けてるのは、所謂デートってやつなんじゃないだろうか絶対そうだ。俺の欠けた記憶に同じようなものは見当たらないが、そもそも前線に出ていた奴にんな経験がなくても変ではないだろう。色んな国の軍服を着て、色んな国の奴らをぶっ殺していたぶつ切りの記憶ばかりの俺に、マトモに街で暮らした経験は……多分ないんじゃないだろうか。別にそれがどうってわけじゃないが。
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