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    スリップ

    3stlo_guri

    MOURNING昨日upした「ゲがタイムスリップして10年後の千ゲに会う話」の逆バージョン。

    「千がタイムスリップして10年後の千ゲに会う話」
    ポイピク初っ端から没ネタを供養すな
    10年後の自分達が喧嘩していた件について



    きっかけは、些細なことだった。
    結婚生活が十年目に突入しようとしていた春、四月一日。ゲンは朝から研究に没頭している千空に朝食をすすめ、そして激怒した。

    「千空ちゃん、ごはんできたよ」
    「〜」

    この「〜」に、ある日突然、何だか無性に腹が立ったのだ。全くもってくだらない。
    思い返せば、今日だけのことではなかった。最近返事を求めればずっとこんな感じで流された。
    何だかな、やだなぁ。
    新婚当初はキッチンで支度していると、いい匂いにつられてやってきた千空が覗き込んだり、後ろから抱き締めてきたものだった。ご飯を作れば美味しそうに食べていたし、日頃の感謝とか言って、たまに手の込んだプレゼントなんかも送ってくれた。
    ゲンは己の心が乾いてきていることに気づきながらも、気づかないふりをした。十年目だからと少し手の込んだ朝食を用意して。
    呼びに行って目も合わさず「〜」と言われたときに、「あ、これ駄目だ」と突然思った。
    お互いの平和のため見て見ぬふりをしていた感情が、心を冷ましていく。
    一度思ってしまったらもう駄目だった。
    もういいや。

    「千空 2334