二束のサンビタリア「ん……」

　歯の裏側を舌でゆっくりなぞってあげると、甘く蕩けた声が、吐息に乗ってかすかに漏れて聞こえてきた。
　僕の背中で、僕の上着を握り締めてる両手の指先に、きゅうっと力が込められていく。こんなふうに、言葉以上にスグリの想いを語ってくれる仕草のひとつひとつが、とっても愛しい。
　ソファに座ったまま、もう少し身を寄せて、抱き合ってる体をもっと密着させる。スグリの匂いがする。それと、さっきまで一緒に飲んでたホットチョコレートの匂い。スグリのぶんのマグカップにはたっぷり入れておいたあまいミツの味が、スグリの舌の上に、まだ濃く残ってる。

　居間のテレビで見てた映画のキスシーンに合わせて僕から仕掛けたキスだけど、こうして一度スキンシップをはじめると、もっと触りたいって気持ちがどんどん強くなっていって、離れるのが寂しくなっちゃう。スグリも同じように思ってくれてるみたいで、唇を重ねるだけだったキスはだんだん、お互いの舌を絡め合わせて、深くて濃密な触れ合いに変わっていく。