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    ネモ

    michi2_

    DONE6周年マップスト前夜の渡部の話。6周年のマップ1を読んで渡部😭になってしまったので救済したかった。
    5周年で渡部が玲ちゃんに贈るために選んだ花が紫のアネモネだということが前提になっています。
    花にうもるる仕事が大事なことなんて百も承知だ。大事じゃない仕事なんてない。国の中枢に噛んでいる自分の仕事は責任が国に及んでしまうこともあるから適当になんてできないし、たとえそうでなくとも、自分がやりたくてやっている仕事を適当に扱いたくなんかない。
    (そう、やりたくてやっている仕事だ)
    仕事そのものに文句はない。過分な仕事量は信頼の現れでもある。“渡部ならなんとかできる”と思ってもらえるのは嬉しいし、ひと肌でもふた肌でも脱ぎたくもなってしまうというものだ。ただ……
    (一歩進んで二歩下がる……いや下がってはないけど。なにこれ、ひとつ片付けるとふたつに分裂する仕様にでもなってるの……?)
    ひとつ捌けたと思ったらその倍、ふたつ捌けたと思ったらそれ以上に。終わらない無限ループに突入してはや二週間。タスク同士が絡み合っているせいで、ひとつ進むごとに関連して他のものも動くからこんな状態になっている。そう、理屈としてはわかっている。いるけれど。
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    kouyamaki

    DONEpixivに上げた「青木の選択」シリーズの続き。
    #10「悪行」

    悪戯の後、薪さんと青木がくっつくまでの話。他のシリーズとは別軸の2人です。

    季節感はフィクションです。ネモフィラと球根生産のチューリップがまだ同時に咲いているような、4月下旬~5月上旬のイメージです。

    このシリーズはあと1~2回で完結の予定です。最後まで書くのが目標です。お付き合い頂ければ幸いです。
    #10「悪行」光が残した絵のキリンのガントリークレーンは、5基になっていた。









     去年の暑い夏は光を苦しめた。暑くなる前に海で眠らせてやりたいと青木の母は言う。
     どんたくが終わってしまえば福岡は初夏だ。どんどん気温が上がる。梅雨に入れば湿気も重くうっとおしい。
     49日までまだあったが、青木も舞も散骨に賛成した。49日といっても、生前の光の希望で宗教的な葬儀は一切執り行っていない。青木家3人と薪で小さな骨を拾った。
     船を出してくれる葬儀社や、付き合いのある生花問屋の伝手で、青木の母は大量のチューリップの花びらを用意することにした。球根生産のための、花摘みの最後の季節だったのだ。
     かつて散華と名うって、100万枚のチューリップの花びらをヘリから地上に撒いてみせた前衛いけばな作家がいた。
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    いずみのかな

    DONEサイトを運営していたころ、広瀬彩夜子さまのサイト「#∧♭」に差し上げたものです。
    お題は「春の海ひねもすのたりのたりかな」でした。
    春の潮騒 日差しがじりじりと背を焼いていく。
     手に持って歩いているジャケットもただ暑く邪魔苦しい。白い煉瓦敷きの道に歩く人影は少なく、まるでがらんとしたこの街に自分たちの足跡が響き渡り、何度も反響しているような錯覚すらしてくる。全面ガラス張りの建物たちは陽光を遠慮なく乱反射させ、せめてもの言い訳のように植えられた、細く頼りない街路樹を黒く浮き上がらせていた。しかし、影はそれ程濃くはない。まだ夏には遠いからだ。
    「暑いな」
     横を歩く男が、足を止めて呟いた。Yシャツの袖はとうに捲くられ、少し皺が寄ったハンカチで首筋を拭う。
    「殆ど風が無いからな」
     有栖は返して、隣に立ち止まった。歩道は煉瓦と青いガラスによる洒落たデザインが施されている。しかし、ガラスが嵌っていただろう場所は大抵ぽっこりと穴が開いていた。確かにガラス製の煉瓦はオブジェとしても美しいだろうが、だからといって歩道に埋まっているものをわざわざ外して持って帰るのは酔狂としか言い様がないだろう。
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