朝の祈り「なんで！　またワタクシのベットにいるんですかっ！！」
「寝起きの君が見たいからさぁ」
「セクハラ！　セクハラですよそれは！！！」
「おっと、主語抜けたね。すまない。ストレスをかけたい訳じゃなくてさ。でも君の祈る姿が見たくてつい、ね？」
「それなら、ちゃんと礼拝堂で見せてるでしょう！」
「…ああいう形式ばった奴じゃなくて、純粋な祈りが良いんだよ。君が毎朝毎晩、するようなのがよい。とても、良い」
「〜っ！　ワタクシの信仰を評価してくださるのは大変良いのですがね！　プライベートというものがあります！」
「そうだね。だから毎朝しのびこみたいのを我慢して、一週間に一回程度に済ませてるんだけどなぁ」
「増やされたらたまったものではありません！　んもー！どうしてちゃんと施錠してるのに、難なく入ってきちゃうんですか！」

３人で付き合ってる葉流圭(智・主)・主智。②　意識をめぐらせる必要はあるが、意識し過ぎると失敗する。
　投球時のリリースポイントにおける指先の話だが、関係性を語るのにもまた、当てはまる。
　試合中かと思うほど派手な音を立てて捕球されたミットのその奥の鋭い瞳に、清峰は固唾を呑んだ。いつもなら激励の音だが、今はひたすら威圧に感じられる。
　少し荒っぽさが乗った返球から智将の機嫌の悪さが伝わってくる。
　それもそのはずで、先日に要と手を組んだ清峰はさっそく、あろうことか投球練習のさなかに「ペアリングつけたい」と願望を球に乗せて投げ込んだ。真剣に臨まなければならない場において、私情をなじられるのは当然だ。
　というより、投球を好み抜いて没頭する清峰が、その最中に他のことへ意識を割いていることがもうすでに珍しかった。

日記　風呂から上がり、身支度を整えると、僕は洗面所の扉を開けた。籠っていた空気が外に流れ出し、冷たい風が室内に入り込んでくる。扉を全開にして空気を入れ換えると、今度は廊下へと足を踏み出した。薄暗い廊下を通り抜けつつ、青年の待つリビングへと足を向ける。
　しかし、廊下の奥にあるはずのリビングからは、一切の灯りが漏れていなかった。入り口から室内を覗いて見るが、青年の姿はどこにもない。ここにいないとなったら、残りの選択肢は彼の部屋だけだろう。踵を返して暗闇に背を向けると、僕は目的の部屋へと足を向ける。
　案の定、家の隅にある彼の部屋には、煌々と灯りが灯っていた。部屋の主であるタッグパートナーの青年が、学習机の前に腰を下ろしている。真剣に手を動かしているところを見ると、何らかの作業をしているようだ。室内に足を踏み入れると、僕は彼の背中に声をかける。