侘助
spring10152
DONE侘助と三芳くんのお祭りデート with 藤花さま秋の大祭 まだまだ昼間の日差しは強いものの、風が涼しい空気を運び、夜になれば風流な音色を奏でる虫達がやかましい蝉の季節は終わりだと言わんばかりに静かで透き通った鳴き声で秋の訪れを告げる。
そんな秋の足音を聞きながら、三芳が親から引き継いだ茶の店の閉店作業をしていると、適当な所に置いてあったスマホが軽快な音でメッセージの受信を知らせる。
仕事に関する急ぎの連絡を見落としてはいけないので、彼は店じまいの手を止めてメッセージを確認する。
『今からお祭りに行きませんか』
メッセージを送ってきたのは親友で幼馴染の侘助だった。
彼と三芳は昔から毎年一緒に近所の神社が開催するお祭りに遊びに行っていたが、歳をとるにつれて他に一緒に行きたい人ができたり、仕事の後の疲れた身体で人混みに混ざりたくないといった理由でその習慣は廃れ気味だった。
3066そんな秋の足音を聞きながら、三芳が親から引き継いだ茶の店の閉店作業をしていると、適当な所に置いてあったスマホが軽快な音でメッセージの受信を知らせる。
仕事に関する急ぎの連絡を見落としてはいけないので、彼は店じまいの手を止めてメッセージを確認する。
『今からお祭りに行きませんか』
メッセージを送ってきたのは親友で幼馴染の侘助だった。
彼と三芳は昔から毎年一緒に近所の神社が開催するお祭りに遊びに行っていたが、歳をとるにつれて他に一緒に行きたい人ができたり、仕事の後の疲れた身体で人混みに混ざりたくないといった理由でその習慣は廃れ気味だった。
spring10152
DONEミサキ様が侘助の母を罠に嵌める話連れ去り桜 温かい風が心地よいうららかな日和、侘助の母は洗濯の終わった衣服を洗濯機からカゴに移して庭に出ると、鼻歌混じりに形を整えて物干し竿に吊るしていく。
半分ほど洗濯物を干し終えた時、彼女の視界の端で家の中で遊んでいた筈の幼い我が子が走って家の敷地から出て行く姿が見えた。道路に飛び出しては車に轢かれてしまうかもしれない、と瞬時に危機感を抱いた彼女は手に持っていた洗濯物を取り落とし、折角洗ったそれが土で汚れることなど気に留めず、息子の名を呼びながらその後ろ姿を追った。
「侘助!」
母が洗濯物を干している間、まだ眠気の残る頭でぼんやりと子供向け番組が映るテレビの画面を眺めていた侘助は、突然切羽詰まった声色で名前を呼ばれて意識を完全に覚醒させる。何かあったのかと、靴の踵を踏み潰しながら慌てて庭に出るとそこに母の姿は無かった。
3177半分ほど洗濯物を干し終えた時、彼女の視界の端で家の中で遊んでいた筈の幼い我が子が走って家の敷地から出て行く姿が見えた。道路に飛び出しては車に轢かれてしまうかもしれない、と瞬時に危機感を抱いた彼女は手に持っていた洗濯物を取り落とし、折角洗ったそれが土で汚れることなど気に留めず、息子の名を呼びながらその後ろ姿を追った。
「侘助!」
母が洗濯物を干している間、まだ眠気の残る頭でぼんやりと子供向け番組が映るテレビの画面を眺めていた侘助は、突然切羽詰まった声色で名前を呼ばれて意識を完全に覚醒させる。何かあったのかと、靴の踵を踏み潰しながら慌てて庭に出るとそこに母の姿は無かった。