カラーバスより鮮明な　無機質なコンクリート壁の頭上にある埋め込み式ライトが点々と灯り、先が見えないくらい長く伸びた廊下を照らし出している。
　どことなくひんやりとしていて一歩間違えば病院のような重い空気を連想させる空間の中、パタパタと滑りの悪いスリッパの裏面から発せられる音は何ともマヌケだ。そうしてこんな場所で一人さまよっている自分も。
　もうこの施設に来て随分と経つ筈で、そこまで複雑な構造はしていないのも十分に承知している。
　逆を言えば余分なデザインを削ぎ落しているからなのか、方向感覚を狂わされるのだ。
　しかも今日はどうにも寝付けなくて、頭の整理がてら色々と考えながら適当に歩いてきてしまったのもあって余計に混乱していた。

オレンジストラテジー「前々から思ってたけど、お前って結構律儀だよな」
　「……馬鹿にしてんのか」
　「違うってば。なんですぐそうやって怒んの」
　「テメェが意味分かんねーこと言うからだろ」
　さほど広くは無い店内。やはりそこまで大きくは無いテーブルで膝をつき合わせて向かい合っている凛が眉根を寄せる。
　しかし本気でキレていないのが分かっているので、特に気にもせず置かれたおしぼりの封を切った。
　随分と長い距離を歩いたのもあって、腰を落ち着けた途端に心地よい疲労感が体を回っていく。
　本格的な夏まではいかずとも、少しずつじめついた暑さを宿し始めている空気が町中に満ちていて、ずっと露出していたうなじはおそらく日焼けしているのだろう。

【凛洁/凪洁】姐姐（下） 03.

“诶？”

同班的女生睁大眼睛，指着手腕上亮晶晶的银手镯：“是问这个吗？”

我努力控制着自己的面部肌肉，想让表情显得友善一点，维持维基百科“如何看起来礼貌”词条下的搜索推荐点了点头。那个女生大概没想到我看起来如此虚心，一副受宠若惊神情，忽然明白了什么般抬手捂住嘴：“凛君，是有喜欢的女孩子了吗？”

话音落下时我听到身后升起窸窸窣窣的悄声议论，好多双眼睛从课本里抬起来粘到我后背上，青春期的男生女生往往这样，翻来覆去不明缘由最喜欢听人谈爱情八卦。反驳的话堵在喉口，我默默移开眼睛，鬼使神差问：“你们女生……都喜欢这种东西吗？”

那女生听完“噗哧”笑出来：“喜欢的人送的东西，当然都会喜欢的呀！”

【凛洁/凪洁】姐姐（上） 01.

一盆血水“哗啦”泼过来的时候我感到一阵恶心。鲜红被冲淡成粉红，蜿蜒过我鞋面，抬着眼睛看，砧板上同样粉红的是鱼肉，鲜嫩颜色如扒开的下眼睑，可惜到了傍晚早已不新鲜，苍蝇围城，散发尸僵般腥臭死气。

我几乎没犹豫就朝卖鱼的老板挥过拳，肥肉横生的男人肚腩堆成一座山，看似凶神恶煞实则色厉内荏，被掀翻在地后甚至爬不起来，粗黑的手指在肮脏粗粝地面上摩挲，冲我狠狠呸一口骂“婊子养的”。我面无波澜抓紧书包带，心里想，活该，谁让你弄脏洁世一给我洗干净的鞋。低下头，雪白鞋面边缘沾上隐约血点，这时我不得不想到洁世一：她在月亮下把衣服慢慢浸泡在水盆里，微光勾勒出脖颈流畅的曲线，柔软的发辫蓬松摇曳，身上的衣裙随着动作水波般流动着，纤细素白的手指像纯银。窄窄的出租屋，我躺在床上假装睡眠，眼睛却悄悄睁开道缝窥视她剪影，细巧漂亮的手腕让我时常幻想着买一只手镯套在上面，听它与腕骨碰撞时悦耳的叮当响声——可惜我只是个高中生，连学费都要靠洁世一掏的高中生。

【凛冴】不相解（一）因为“世界第一不是谁都能当的”
所以冴要是世界第一，凛只能是世界第二

糸师冴一生走过很多路，最长的走到了西班牙，可是记忆里回家的那条路，却总是走不够
记忆中，每次走那条路时都会牵起凛小小的手
凛的手，小小的，却很暖，暖得在冬天怎样也不舍得放开，总是这样，从球场的草坪到家门口，任谁也不放开一分一秒
有时候凛生闷气，却在回家时还要紧紧握着冴的手
其实这条路很短很短，光凭感觉去想也没有几公里吧；长吗？两人都没有概念，换个方式问呢：比如路上发生了什么、说了什么，大概会记得一清二楚吧
很漫长，幸福的


所以冴很早便注意到了
凛对于自己的那份情感


“凛，如果用一天的时间把你想干的事情全都做一遍，大概会干些什么？”

坐在桥边的少年面对着夕阳发出了疑问

わたれ+りつれ-凛月side-
あんなヤツと別れて欲しかっただけ。
兄者の中ではいつでも俺が一番だったのに、その一番を取られたのが悔しくて邪魔だっただけ。
ただそれだけだった。
だから、アイツが……『日々樹くん』が海外へ長期の演劇公演へ飛び立ったのを好機に『日々樹くん』の偽の熱愛報道の記事を作って兄者に見せつけた。
俺の作戦では勘違いをした兄者が『日々樹くん』に別れを告げるはずだった。
でも、兄者は……。

｢……そうか………｣

この一言だけを呟いて部屋へ行き、その日以来、兄者の様子がおかしくなっていった。



＊＊＊



｢渉……♡渉……♡後ろ…準備してきたから…ぬるぬるだから…♡すぐ…挿入出来るぞ…♡｣

あの偽の熱愛報道の記事を見せた日から兄者は『日々樹くん』の名前を呼びながら俺の部屋に来るようになった。

Still Unforgiven(サンプル)第一夜　廃病院へようこそ①　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　　
　　 1

　1人でこんな遠くまで来るなんて、記憶している限り初めてのことではなかろうか。
　早朝から電車に揺られ、ビル群から春めいた自然に変わっていく景色に感嘆したり、どこか感傷的な気分に浸ったり。
　そんな時間を二時間以上過ごした後に、乗り継いだバスを後にしたあんずを出迎えたのは少し寂れたバス停だった。
「……すごい……。こんな景色、初めて……」
　眠い目をこすりながらバス停に降りたあんずは、目の前に広がった光景に思わず吸い寄せられるように歩き出した。
　映画の中に入り込んだような錯覚の中、あんずは広大な自然と、そこに存在する古い茅葺の日本家屋に魅入る。

Noblesse oblige　真に美しいものを見た時、人は誰しもその輝きに目を奪われる。
　地位や名誉なんていうちっぽけな建前など、一切合切いっさいがっさい忘れてしまうのだ。　　　　
　そうしてその美しいものに魅せられて、実際に手に入れてみたくなる。
　どんな形をしていて、どんな風に動いて、どれだけの可能性を持つのか。
　かつて、乳母に叱られながらもはしゃぎ回った庭園の片隅に実る艶々とした林檎をもぎ取った日を思い出す。
　誰にもバレないように、ひとりそれに噛り付いた際に弾けた果肉の甘酸っぱさと、少し硬い皮に残った歯形。小さな胸に宿った確かな高揚感と罪悪感。
　でもそれは子供の頃だから出来た話だ。年齢を重ね、自分の立場というものを身近に感じ取れるようになった。

【凛洁/冴洁】《恶雨天》（上） 这一年糸师凛十六岁，不大也不小的年龄，站在未来人生的分叉口，如深浓夜里擦起火柴，发现哪里都是下坡路。金融海啸，糸师家基业在风雨如晦里摇摇欲坠，他们需要缓冲、周转、人脉，最最重要的是需要钱，于是婚姻像明码标价的钞票，他是赌桌上红绿异色的筹码，叠得整整齐齐推出去，与六面骰同桥牌一起，在深黑绸布上留下规规矩矩的压痕。

在晚宴上见到洁世一，他的联姻对象，宴会厅烛灯华美，四面厚重的天鹅绒帷幔把光一丝不苟吸进去，庄重到昏暗。空气里飘陈旧木香，这场景太严肃，每件虚与委蛇的晚礼裙或燕尾服都令他反胃，那时洁世一回过头，穿很素的白衣，显得脸也很素，微微透出点粉气，太大太圆的蓝眼睛显得幼齿，糸师凛脑子里一时只剩下几个词，干净，纯洁，在油彩绘里像水墨，像群波中间捧出珍珠。