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    半グレ

    ほしいも

    DONE■現パロ・同棲
    二人で夜逃げをして港町で同棲する、半グレみたいな生活をしている猗窩煉
    責任感の強い煉キョくんは居ないし、強者の二人はいません。どちらかと言えば弱者です。
    港町に夜逃げした猗窩煉逃げるように実家を出た後、辿り着いた町は港が近く潮の香りがする田舎だった。


     猗窩座と杏寿郎が勢い任せに飛び出したあの晩、二人そろって無性に地平線から昇る太陽が見たくなって、渋る猗窩座を宥めながら「何処でもいいから海の方へ」と強くねだったのは杏寿郎だった。一番最初に朝陽を見た町で暮らすことになるだろうと、どちらともなく決意をしながら、それでも口には出さずに宛てもなく車を走らせた。

     築年数が自分の年齢をゆうに超えているアパートは、曰くつきでない限り理由の説明が出来ないほど家賃が安く、その割に空室ばかりが目立っている有様だ。田舎町のおんぼろなんてこんなもんだ、と仲介人の前でも遠慮なく猗窩座が呟いていたのを思い出しながら、潰れたタバコの箱を握った杏寿郎がガラス窓を開く。キュルキュルと甲高い音が響き、すぐ足元でうたた寝に興じている猗窩座が起きてしまわないかと寝顔を覗き込むも、存外図太い神経をしている青年はすうすうと規則正しい寝息を続けていた。
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