Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    し ぐ 📛

    DONE酔っ払った(?)朔間先輩に晃牙くんが食べられちゃう話/別垢であげていたものの再掲
    だって愛だからさ 部屋の扉に背を預け、男がひとり、赤ん坊のように丸くなって眠っている。
     新月の夜を思わせる美しい黒髪と、薄手のシャツからすらりと伸びる白魚のような腕。暗闇に溶け込むそのひとに視線を落とし、それが誰なのかすぐに気が付いた俺は、苦笑交じりにちいさく息を吐いた。――いくらこのマンションのセキュリティがきちんとしているからって、流石にこれはまずいんじゃねぇの。
    「……起きて、朔間先輩」
     名前を呼びながら視線を合わせるようにその場にしゃがみこんで、すうすう気持ち良さそうに寝息を立てている先輩の身体へふたつの指先でぴたりと触れた。先輩にしては高い体温が、皮膚を介してじんわりと伝ってくる。
     ぴくり。先輩の意識は俺が想像していたよりもずっと浅いところを漂っていたらしい。触れた部分から波紋がひろがるみたいに、熱を持つ先輩の身体がちいさく揺れる。それから、言葉にならない音をむにゃむにゃ零して、ゆっくりと先輩の頭が持ち上がった。橙色の照明を弾く長い睫毛が震え、薄い瞼の下から血みたいに真っ赤なルビーが顔を覗かせる。
    2291

    anoco_enst

    CAN’T MAKEクロスロのときに朔間零に頼まれて大神晃牙の面倒を見ていたバンドマンモブの話
    不夜城までつなげたい、無理、解散
    やってらんねーよ 朔間零は、明らかに特別な男だった。

     俺の周りのやつらは彼を「零ちゃん」と呼んだ。歳上であることくらいしか彼になにひとつ勝てやしないクズたちが、「歳上である」というその一点張りでなんとか取っている唯一のマウント・ポジションがそれだった。それでも、上下関係は歴然で、俺たちに微塵も敬語を使う様子のない朔間零は、そこにいるだけですべてのヒエラルキーをひっくり返した。朔間零を頂点に書き変わったピラミッドは、彼以外を全部一緒くたに「その他大勢」の土台にしてしまう。全員が地に落ちて、価値基準が彼になる。そういうわけで、いつのまにか大の大人が、たかだか高校生のガキに好かれたくて必死になるのだ、可哀想なぐらい。笑っちまうよな。でも朔間――媚びたような「零ちゃん」という呼び方が俺はどうしても馴染めずにそう呼んでいた――は、単純にすこぶる魅力的な良い奴だったから、好かれたいのにはそういう理由もあった。詰まるところ、みんな「零ちゃん」が大好きで、仲良くなりたくて、彼のように、或いは彼の、特別になりたかったのだ。
    670