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    現パロ

    しおん

    DONE現パロ(社会人×大学生)|仕事ばかりして生活を疎かにしていたブと、弟的な存在であるシと二人暮らし中のネの話。まだ出会っていない。

    ※少し前のX投稿分の加筆修正版です。
    ナイト・オン・ザ・プラネット 世間が「働き方改革」だの「仕事とプライベートの両立を目指す」だのと足並み揃えてぞろぞろ同じ方向へと向かうなか、ブラッドリーの入社した企業は設立当初から変わらない。よくも悪くも。
     成果を上げた分だけきっちりと報酬に反映されるので、「自分らしく働こう」というスローガンを掲げる今時の会社よりはずっと稼げる。成績に応じた実績給が支払われる他にも昇給や昇進という形で努力が評価されるのだ。若手のうちから役職につくことだってめずらしくはない。
     本人の頑張り次第とはいえ給料やボーナスも抜群によく、各種手当も充実しているものの、採用活動では苦戦しているようだ。……いや、採ることはできるのだ。福利厚生や報酬に惹かれる学生が後を絶たないため、説明会はいつも賑わっている。隅々まで磨き上げられた社内はドラマのセットのごとく輝き、インターンで訪れたやつらはみな興奮したように目を見開く。金を掛けて開く内定者懇親会は好評で、秋頃になって辞退を申し出るやつもいない。問題は入社してからだ。
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    キタハル

    DOODLE現パロ同棲半伝 自宅で映画鑑賞会
    週末、自宅映画会リビングのソファの上に二人で座り、ぴたりとくっつく。このソファは二人で住み始める時に二人で念入りに選んだ家具のうちの一つだ。清掃のしやすい合皮製で、はみ出しながらも昼寝ができて、男二人で仲良くくっついて座るのにも心地のいい優秀なソファ。物には寿命があるとはいえ、長いこと使えるはずの作りのいいソファだ。見た目もいい。結構いいお値段はしたのだが、手に入れられて大満足の良い子である。ティーパックで淹れたお茶のマグカップを用意し、泣いてしまった時用のティッシュ箱を机の上に置き、二人してクッションを膝の上に抱え込んでから、照明を薄明かりに落とす。
    週に一度の自宅映画会は、元は伝蔵さんの発案だ。仕事関係のことと伝蔵さん以外への興味が薄い私を心配して、映画をきっかけに色んなものに興味をもたせようと考えてくれたらしい。今のところ映画視聴をきっかけに継続的な趣味に繋がったことはないのだが、関係する本を読んだり、出かける先に選んだりするきっかけにはなっていて、それなりの効果を上げている。しかし私の興味の最たるものはやはり伝蔵さんで、くっついた部分から伝わる体温や、映画を見て笑ったり泣いたりする横顔や声、軽い感想を言い合う時間などが好きだ。少々下心のような動機だが、伝蔵さんも映画作品を見る時間が取れるので楽しみにしていると言ってくれている。
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    fujimura_k

    PAST23年8月発行『未明の森/薄暮の海』現パロ月鯉
    本編『未明の森』の鯉登サイドの後日談のような話。発行当時は別冊としてお付けしました。本編をご覧になった後にこちらをご覧ください。
    薄暮の海その海ならば、溺れて、沈んでも構わない。その海ならば―


    あの日から、間も無く十二年が経とうとしている。
    八月二十八日。一緒に花火を見たあの公園で。
    そう約束したあの時、十二年という月日は途方も無いように思えたが、過ぎてしまえばあっという間だった。
    十二年。約束を忘れることは無かった。一日千秋の思いで待ち続けて、その日を目前に控えてふと気付いた。
    日付と場所は確かだが、何時にとは約束しなかった。と。だから何時に行けばいいのか見当もつかなくて、それなら朝からずっと待っていればいいじゃないと開き直ったのは約束の十日前だった。
    待合せには絶対に遅れなく無い。もしも擦れ違いになったりしたら。そう考えただけでゾッとして、遅れずに済むようにと、待合せ場所の近くに前日から泊ることにした。けれども宿は直ぐには見つからなかった。夏休みでホテルが満室、なのではなく、ホテルそのものがその一帯には殆どなかったのだ。どうにか見付けたのは、十二年前には花火が上がっていた、その港近くにある小さなビジネスホテルだった。
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    fujimura_k

    MOURNING現パロ月鯉 珈琲専門店・店主・月島×画家・鯉登
    脱サラしてひとりで珈琲専門店を営んでいた月島が、画家である鯉登と出逢ってひかれあっていく話。
    作中に軽度の門キラ、いごかえ、菊杉(未満)、杉→鯉な描写が御座います。ご注意ください。
    珈琲 月#1 『珈琲 月』


     そのちいさな店は、海の見える静かな街の寂れた商店街の外れに在る。
     商店街は駅を中心に東西に延びており、駅のロータリーから続く入り口付近には古めかしいアーケードが施さていた。年季のいったアーケードは所々綻びて、修繕もされないまま商店街の途中で途切れているものだから一際寂れた雰囲気を醸している。
     丁度、アーケードの途切れた先には海へと続く緩やかな坂があり、下って行くと海沿いの幹線道路へと繋がっている。坂の途中からは防波堤の向うに穏やかな海が見え、風が吹くと潮の香りが街まで届いた。
     海から運ばれた潮の香りは微かに街に漂い、やがて或る一点で別の香りにかき消される。
     潮の香りの途切れる場所で足を止めると、商店街の端にある『カドクラ額縁画材店』の看板が目に入るが、漂って来るのは油絵の具の匂いではない。潮の香にとって代わる香ばしく甘い香りは、その店の二階から漂って来るモノだ。
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