「わあ、かわいいですね！」
　そう言ってセレストが指差したのは、ギャメルの家のぼろぼろの障子である。
　その障子は見事なまでに穴だらけであった。子供の頃にギャメルや妹が指で開けた穴もあれば、うっかり箒の柄で突き破ったものもある。よろけて手をついた拍子に景気よく破れてしまい、穴というより大きな裂け目になっているところもあった。張り替えるのを不精して、つどつど補修の紙を重ねているせいで、障子はまっさらな所がひとつもない。もともと貼ってあった一枚の障子の面積より、花形に切った補修紙の方が多いくらいだ。幼い自分や妹が切り抜いた花もそのまま残っていて、いびつな形のものも多かった。あの、花ともヒトデともつかない形のものは、マンドランが切ったものだっただろうか。もともとの真っ白だった姿が思い出せない、まるでテセウスの舟みたいだ。

どうかな。今日の服、頑張りすぎていないかな。可愛いかな。
エレベーターの鏡に映し出された自分の姿を眺め、髪型が崩れていないか、服が皺になっていないか、疲れた顔をしていないか、軽くチェックをする。
大丈夫。恐らく、問題は無かった。
三階で降り、明かりのついた彼の部屋を確認してから、最後に鞄の中身も最終確認をする。今朝、出勤前に気合いを入れて作ったランチボックスの中身は、ギュウギュウに詰め込んでよく冷やしておいたからか、少しも崩れてはいなかった。完璧だ。小さくガッツポーズをして時計を確認すると、丁度夕飯時だった。タイミングも悪くない。大丈夫。大丈夫。万事、問題ない。
心の中で少し自分を鼓舞して、わずかに緊張しながらチャイムを押す。暫くすると、ドアは開かれないまま、ガチャリとインターホンが繋がれた。

【垩空】沙漠中救下的奇怪美男子是否会诱拐救命恩人？茫茫沙漠总是充满危机的，尽管已经临近边城，但还是有一位“倒霉蛋”被强盗拦截。那是一群荒漠地带群居的人，以打劫大小商队和落单商人为生，遇到他们，轻则丢失财物，重则丢失性命，令人闻风丧胆。

“倒霉蛋”看起来是真的倒霉透顶了，居然落单成了一个人。本来就不算高大强壮的身躯，在一群莽汉中间看起来更是弱小。浅棕色的长发飘散在夹着沙尘的风中，渺小到好像要和沙漠融为一体。

“喂，把钱交出来。”为首的人扛着大刀大摇大摆地走来，刀上的锯齿比野狼的牙齿还要锋利，应该一下就能把这位男子的脖子要断吧。

“钱…？抱歉，我没什么钱。”不知者无畏，“倒霉蛋”穿着的西域服饰明显说明了他并非当地人的身份，很大可能是西域的商人或者有钱人家的少爷，似乎还没有感觉到危险的降临。