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    何歳になっても夢を見る

    MENUこちらは九月開催の恋と深空オンリーイベントにて頒布予定のサンプルになります。

    支部にて掲載している“この楽園で生きていたかった”を加筆修正したものに、書き下ろしを加えた16,000字が本文となります。
    話の流れなどを見て購入を考えたい方は、お手数ですが話の大筋は変わっていないため、支部の方から全文ご確認いただけると幸いです。
    この楽園で生きていたかった本作品は主人公名が意図的に空白になっております。ご自身のお名前を入れて
    お読みいただければと思います。また、作中は過激な描写を含んでいます。
    体調等にご配慮のうえ、お楽しみいただければ幸いです。


    在りもしない日々

     柔らかな日差しが差し込んだ昼下がり。締め切ったままにしているカーテンの裾を微かに揺らす風が運んでくるのは、腐りかけた林檎の甘ったるい匂いだった。からりと晴れているからなのか、熱気を孕んだそれがやけに鼻の奥へと纏わり付く。思わず眉間に寄った皺へと、そっと伸びてきた気配に目を開けば。

    「兄さん、おはよ!」
    「……ん、はよ」

     ピントの合わない視界の中で、昔と何も変わらない笑顔を浮かべた   と目が合った。寝起き特有の貼り付いた喉から、笑顔と共に囁かれた言葉に囁き返す。いつだってオレより後に起きていたはずのお前が、今日は先に起きてるなんて珍しいな、なんて。大きな欠伸をしながら零せば、少しだけ拗ねたような声がすぐに言い返してきた。
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    osame_jr

    DOODLE「あの夜から、四年」開催おめでとうございます。
    この物語に狂ってもうこんなに経ってしまったんですね。
    あの夜から数年を経たからこそ考える、そんな彼を考えました。

    少しでもにぎやかしになりましたら幸いです。
    ひとり、ふたり、つながり あれからそれなりの月日が過ぎた。僕はどういう訳か甦ったKKと一緒に祓い屋をやっている。あの夜を越えても、僕はエーテルやワイヤーなどの能力を扱うことはできた。と言ってもあの夜の力はKKに借りていたものだったからか、僕自身に発現した力はそよ風みたいなものだったけど血反吐吐くような訓練をしてなんとか一端の祓い屋になった。その時に反対するKKとひと悶着あったのも今となっては良い思い出だ。
     平和とは言い難いけど、それなりに充実した日々を送っていると思う。両親や麻里に約束したようにちゃんと生きている、つもり。
     でもそんな日々の中で、ふと物思いに耽ることもある。

     渋谷という町はいつも人に溢れている。老若男女、外国の人々に人知を越えたマレビトたちまで裏も表もあらゆるものに溢れている。地下でも地上でも、全力疾走するなんてとんだ迷惑行為になるほどには。車道の真ん中を突っ走るなんてことも、車の上に跳び乗るなんてことも論外だ。
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