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    蜂須賀

    DOODLEちょっと不思議話、1篇。
    弐之助さん主催のアンソロジー『幻想奇譚蒐集録』より再掲
     二次元、映す面、その輪郭 三綴りその朝は頭痛と上がってくる胃酸の不快感で不機嫌に髭をあたっていた。電動は好かないから毎朝カミソリを使っている。
    目覚めたのは居間の床だった。カーテンを閉める習慣を忘れて久しい窓から射す朝日が、目の前のアルミ缶から零れた液体と、緑の瓶に当たり煌めいていた。まるで他人事のようにそれをぼんやり眺めるが、数時間前の自分と今の自分が繋がっていないわけはない。浴びるように飲むアルコールはやがて循環代謝され頻繁に通うトイレで体外に排出されるものが、飲酒したという自己嫌悪だけはそうはいかず、体内に溜まり続けた。肉体を管として、なにもかもがただ通り過ぎればよいものを。
     うつろな顔と荒れた肌を見たくなくてカミソリを当てる部分だけに視線を集中する。それから目を閉じて指先の感覚で顎のラインと三日分の伸び丈を探る。ふと、かすかなカビの匂いがした。のろのろと手を動かしながらぼんやりと思う。雨? いや、ついさっき陽の眩しさで目が覚めたのだ、そんな予報だったか。天気などに関心を向ける生活でもないが、けれど時折見上げる空の色を無意識に読む癖程度は残っていた。
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    mori_nmm

    SPOILER短編集『Fの蒐集』のちょっとした裏話とか、あとがき的なものです
    ライナーノーツ(Fの蒐集)■キノコ番の男
    だいぶ前から温めていたネタでした。不思議の国のアリスに出てくる芋虫がモチーフです。個人的に芋虫~蛹~蝶となる過程が好き。そしてあの飄々とした感じはトレイにも似合うなと思っていたのと、どうしても彼が煙草を吸っている姿が見てみたかったのです。ふだん他者に見せている彼の姿とキノコ番をしている誰も知らない彼の姿。ヤバいキノコが寄生している芋虫(本当に?)の不気味さ。それに本能的な気持ち悪さを感じながらも、好奇心旺盛なジェイドが関心を持つ様をじめじめと書いてみました。唐突な胸のドキドキは恋と勘違いするそうですし、この2人がくっつくのも時間の問題ですね。

    ■甘やかなてのひら
    1話目と異なりすでにできてる2人です。キラキラした午後のデートにぶちかますジェイドの突拍子もない言葉は、まあ、ありそうですよね。トレイの頭から転がって割れたウズラの卵はハンプティダンプティです。割れた卵が元に戻らないように、ジェイドの首を絞めて笑ったトレイはもう、普通ではいられません。それを誘導したのは、紛れもなくジェイドなのですが悪びれもないですね。彼はもとよりトレイを普通ではないと思っていますから、内なるそれを引きずり出したぐらいにしか思ってません。トレイの涙はびっくり泣き半分、興奮半分です。
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    桃原@Xfolioに移動中

    DONEとある街で「血雨探花は美人をさらって蒐集している」という伝承を聞いた花怜。花城が語る真相とは。🦋🌸
    ※花城の捏造回想あり
    ※ネタバレは特にないと思いますが一応原作後イメージ
    美しい人その地方には、とある鬼の伝承があった。

    鬼の名は、血雨探花。燃えさかる炎のような紅い衣をまとい、銀の蝶とともに現れるというその鬼は、とても強欲で美しいものに目がなく、三界中から金銀財宝珍品珠玉の類をかき集めていたという。
    しかし、血雨探花がどんな高価な宝よりも好んだのは、美しい人間だった。その執着ぶりは老若男女を問わず、彼の美の基準にかなった美しい者は一人残らずさらわれて、ある者は鬼界の彼の城の地下牢に閉じ込められ、またある者は魂を食われたのち石像にされ蒐集品として城の大広間に飾られたという。
    一説には、血雨探花は絶世の美人の姿をしており、その美貌は見目麗しい人間たちを絶えず食っているからだとか。

    ――だからこの辺りのモンは、夜出歩く時は必ず守り袋を持ち歩くんだ。袋に、こうしてほら、美人画を描いた御札を入れておくのさ。万が一血雨探花に出くわしたら、コイツを投げて、ヤツが美人画に気を取られている隙に逃げるって寸法よ。兄ちゃんたち、旅の人だろ? 夜遅くなるんならコイツを持ってかなきゃ。一人十枚でも二十枚でも、命に比べりゃ安いモンだ。さあ買った買った!
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