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    えみった

    DONE朝菊ちゃんバンドパロ小説
    フライト時間や時差を考慮して微調整しました。ひとまず第1章は完成。やったー!
    ⚠️オフィス職員として男女モブが登場します。
    【冒頭の英文訳 : 一緒にいてくれとは言わない、だけど念のため灯りは点けておくよ。
    知らないよな、俺がこれまで歌った全ての静寂におまえの名前を書き込んであるよ。】
    アーサーさんの詩の一部を引用しました(という体裁)
    (1)

    I’m not asking you to stay, but I keep the light on just in case.
    You don’t know it, but I wrote you into every silence I ever sang.

     雑踏の中で、少年が大きな楽器ケースを背負って歩いている。ショートヘアで、ブルネットとは違う、光を通さない黒髪。身につけているものは上から下まで全て黒で、そこだけ異質、まるで大きなカラスが歩いているようだった。高校生くらいかもしれない。行き交う人より頭半分ほど小柄にも関わらず、誰とも接触せず、器用にすいすいと進んでいる。
     少年は交差点に行き着くと四方を見回した。しばらく考えこむような仕草のあと、意を決した様子で同じく交差点で立ち止まっている老夫婦に話しかけた。お互いに身振り手振りのやりとりを経て、老夫婦は笑顔で手を振り少年は頭を下げた。日本人だ。日本で育って、つい最近ここへ来た日本人。確実に、たぶん。
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    海月(うみのつき)

    DONE・若き数学者と詩聖のお話パート2。
    ・ちょっぴりカプ寄りな表現あり。苦手な方は回れ右。
    ・奏章Ⅳのネタバレを含みます。
    ・モリンテかンテモリか……んー、どっちでもいいんじゃない?派 考えるの面倒臭いから心とか魂で感じる方がいいと思うー。
    FunFanService 太陽の光など生まれてこのかた知らない曇天と、人ひとりの姿さえ見られず存在意義を失った大通り。亡者が居住しているはずの建物の扉は、皆一様に固く閉ざされたまま。色欲区はまさにゴーストタウンじみた有様だった。

    「色欲区というから一体どんな場所かと身構えていたが……僕の想像とはかなりかけ離れていたよ」

     色欲、というからには、そこかしこに「情欲を抱いた人間」がわらわらしていると予想していたのだが、異様な静けさだけが居座っている区域内の様相に、モリアーティは肩透かしを喰らった気分になった。
     ……別にそういう人間が見たかった訳ではない。どちらかと言えば僕自身は(自分で言うのも躊躇われるが)、欲より理性で得られる利益を優先する。だから逆位置にいる人間を目の当たりにすると、どうしても顔が歪んでしまう。醜悪という感情からではない。理解に苦しむ、という意味でだ。むしろ偏桃体やら前頭葉が発達した人間という生き物として、彼らは何も間違ってはいない。過ぎる欲望は身を滅ぼすが、欲や願いがなければ人は生きる情熱を失ってしまう。ちょうど薪の類と同じ原理だ。みずからを燃やしてエネルギーを獲得し前進していく。きっと、おかしいのは僕の方だ。僕は薪ではなく、ちょっと他人より効率がいいだけの石炭なのである。
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