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    百合菜

    REHABILI2020年のバレンタイン創作です。
    pixivで掲載していたものの未完に。
    完結させるべくまずはこちらで掲載していきたいと思います。

    「想い重なるまで、あと半歩」の翌年1月の話。
    いつの間にか関さんと玲ちゃんはくっついています。

    冬の寒さで目が覚めた大輔。
    そんな彼が抱いた想いとは。

    ※続きはpixivに掲載しています(完結済)
    冬の中に感じる春の温もり冬は嫌いだ。
    それは関大輔が子どもの頃に抱いていた感想だった。

    築年数を重ねた部屋の中には寒気が覆い尽し、大輔を襲ってくる。
    暖房設備はあることにはあるのだが、脆弱で寒さを吹き飛ばすには心許ない。
    そもそも母親が女手ひとつで生活を支えているこの家で暖房を使うのは贅沢の範疇に入る。
    寒いときは布団の中で丸まって過ごす。そして、布団の温度が自分の体温と同化するのを感じるのを待つ。
    それが大輔の幼い頃の冬の記憶だった。


    「また、あの夢か……」

    布団と身体の隙間から入り込んできた1月下旬の冷たい空気で大輔は目を覚ます。
    寝起きの悪さを自覚している自分だが、冬はむしろ寒さでいったん目が覚めてしまうことが多い。
    それはもしかすると、物理的に寒さを感じるだけではなく、幼い頃の記憶がよみがえって苦しくなるからかもしれない。
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    sirasu810

    DOODLE麒麟ギ主上ぐだverの十二国記パロ、くっつき台輔の小話。うまく具現化できなかったけど、お題ポストありがとうございました!
     天と地を貫くかのようにそびえる凌雲山りょううんざん萋州国さいしゅうこくにおいては峯抄ほうしょう山と呼ばれるそのいただきには、王の居城、峇水宮こうすいきゅうがある。この宮を遥かな高みから見下ろすことができたなら、湖のように広がる浅葱あさぎ色の屋根が、本物の水池と重なりながら、典雅な橋の数々によって結ばれている玲瓏れいろうな光景を眺めることができるだろう。
     地にあれば山の頂は天と同じに遠く、頂にあっては地上の街明かりは砂粒のように小さい。それぞれは雲海によって隔絶された別世界だった。それでも宮の庭院にわに芽吹き枝伸ばしている植物たちは、照るの変化を敏感に汲み取り、地上と同じように春には春の、夏には夏の花を咲かせ、見る者たち(その多くが寿命から離れた仙である)に生命の循環があることを知らしめる。王の私室に面した場所に植えられていた空木ウツギもまた、真白の花を満開にしていた。夏の訪れを告げる落葉樹は、陽が落ちれば月光の下、夜風に葉を揺らす。この時期の風に含まれる熱と湿り気は、こずえの合間のみならず、室の中にも流れ込んでいた。
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