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    st

    miya_ko_329

    DONEST前後のどこか。モブ猫視点からの彼ら。おとうさんは息子と遊びたい。第二連王はそろそろ休暇取りたい。
    GG/猫とシンとレオと、ときどきカイ 吾輩は猫である。名前はまだ無い。
     という一節から始まる小説が、今となっては亡国となった彼の国にあった、らしい。もっとも私もまた猫であるがゆえ、その内容までは知らないが。
     私の名前は無いこともないが、ここの人間は好き勝手に呼ぶので決まった名前など無いし、そのすべてが自分の名前と言えよう。つまり、クロだのかぎしっぽだのくつしただのギザミミだの、それらはすべて私を呼ぶときに人間たちが口にする名前だったので。
     縄張りにしている領域――人間たちはここをイリュリア城と呼んでいる。その昔、母が子猫だったとき、ここはおよそ人の住まう場所ではなかったのだという。大昔から大変な繁栄を謳歌していたこの都市は、しかし完膚なきまでに破壊された。その頃は何だかよくわからないいきもの(ギアというらしい)と人間は血で血を洗うような戦いを繰り返していたらしいので。そして、人々再び街を整備し、いつの間にかこんなに大きな城まで建てられた。私が生まれたのは、この城が建ち、『王』と呼ばれる人間がここにやって来てしばらく経ってからだった。そう語りながら、ずいぶん平和になったものね、と老境の域に入った母は笑った。
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    miya_ko_329

    DONEXrd~STのどこか。第一連王捜索隊の第二連王と、つかの間の逢瀬のカイデズ。
    GG/レオとカイデズ 第一連王が見当たらない、と城内職員がそろそろ心配し始めた。およそ彼を害することのできる人類は非常に限られている。平時の城内においては皆無と言っていい。まず心配の必要はないと思いつつレオは彼らを宥め、少し席を外すことを告げて見当を付けている場所に進む。行政エリアを抜け、王のプライベートエリアへ。人の私的な時間にまで足を突っ込むことは本意ではないが、そう言っていられる状況でもない。足を進め、見えてきた扉には複数の門衛が立ち侵入者を拒む。だがそれを第二連王だと認めると張りつめていた空気を少しだけ緩めた。
    「あいつはここか?」
    「三十分ほど前にお入りになりました」
     若い門衛は遠慮がちに答え、レオは軽く息を吐き足を踏み出す。わずかに残されたカイの自由を、これ以上許すことのできない時間の無さと状況を恨むしかない。少々の罪悪感が過るが、これも給料の内と割り切ることにした。築年数の割に古めかしいデザインの扉は重い音を立てて開かれた。見た目は単なる扉だが、その実厳重なセキュリティが敷かれている。組み込まれているであろう複雑怪奇な術式はレオの理解の範疇外だった。これを突破できる人類こそ存在しないのではないだろうか(しかしこの数ヶ月で人類の枠の外のような人類に散々出くわしてしまったので、油断は禁物だ)。それほど堅牢に守られた扉の向こう。果たしてその先は緑萌ゆる園であった。空調の行き届いた屋内とは違う自然そのものの空気。幸いなことに今日は暖かな日だった。やわらかな陽射しが程良い熱を持ってレオを迎え入れる。色彩豊かな花々が咲き誇り、小鳥が遊ぶ。間違いなく現実でありながら、世界から隔絶された楽園を思わせるのは、ここがあまりにも完成された空間だからだろう。それぞれが完全な調和を以てこの場を作り上げている。
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