koshikundaisuki
DONE第20回 #菅受ワンドロワンライ影菅で参加させていただきました。テーマは「鍋」にしました。
鍋春雨としらたきと葛切りとマロニーの違いを知らないが、俺たちはそれらを総じて「ちゅるちゅる」と呼んでいる。知らないからこそ、そう呼んでいるとも言える。
はじめて菅原さんの手料理を御馳走になったのは、春はもう少し先、といった季節の出来事だった。期末試験前に赤点回避対策を講じてやった、といって呼び出された菅原さんのアパートでのこと。各教科のポイントと過去問から解析した「テストを作るだろう先生と出やすい問題」をまとめた菅原さんオリジナル問題集を、解いてはバツをされ解いてはバツをされを繰り返すうちにすっかり夜になっていた。俺と菅原さんの腹の音が同じタイミングで鳴り響き、お互いハッとして顔を見合わせた。フルセットでやったときより俺はずっと疲弊していたし、赤ペンで丸付けをしていただけの菅原さんはなぜか息切れしていた。
2706はじめて菅原さんの手料理を御馳走になったのは、春はもう少し先、といった季節の出来事だった。期末試験前に赤点回避対策を講じてやった、といって呼び出された菅原さんのアパートでのこと。各教科のポイントと過去問から解析した「テストを作るだろう先生と出やすい問題」をまとめた菅原さんオリジナル問題集を、解いてはバツをされ解いてはバツをされを繰り返すうちにすっかり夜になっていた。俺と菅原さんの腹の音が同じタイミングで鳴り響き、お互いハッとして顔を見合わせた。フルセットでやったときより俺はずっと疲弊していたし、赤ペンで丸付けをしていただけの菅原さんはなぜか息切れしていた。
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DONE #菅受ワンドロワンライお題「準備」です
味噌ラーメン食べながら書きました
ツッコミどころ多いけどご愛嬌ということで…
味噌ラーメン前夜 子どもというのはしばしば突拍子もないことを言う。そこには彼らなりの道理やこだわりがあるのだと、よく耳を傾けてみればそれが分かることもある。
「俺が明日の試合勝ったら北海道に来て」という及川の発言も、おそらくそういう類のものだろう。こいつは時々呆れてしまうくらい幼稚なところがある、人のこと言えないが。
俺は突っぱねずにフンフン、どうした?と傾聴の姿勢をとったが、よくよく聞いてもそれは「北海道で待ち合わせてラーメンを食べたい」という依然としてわけのわからない主張だった。
「負けたらナシなわけ?」
「だってそしたら次の日も試合だもん」
「あ、そうかお前」
「そう、今中国。急だけどスケジュール空いてさ、せっかくだから」
1145「俺が明日の試合勝ったら北海道に来て」という及川の発言も、おそらくそういう類のものだろう。こいつは時々呆れてしまうくらい幼稚なところがある、人のこと言えないが。
俺は突っぱねずにフンフン、どうした?と傾聴の姿勢をとったが、よくよく聞いてもそれは「北海道で待ち合わせてラーメンを食べたい」という依然としてわけのわからない主張だった。
「負けたらナシなわけ?」
「だってそしたら次の日も試合だもん」
「あ、そうかお前」
「そう、今中国。急だけどスケジュール空いてさ、せっかくだから」
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DONE第13回 菅受けワンドロワンライ、「バカンス」及菅で参加させていただきます。第13回 菅受けワンドロワンライ「バカンス」及川のオフに合わせ、どうにかこうにかもぎ取った有給休暇。幸いにも理解ある職場だったためあっさりと許可は出た。しかし、自分の代わりに授業に入ってくれる同僚への引き継ぎ、不在中の教材の用意、子どもたちへの周知などなど、ギリギリまで奔走しての結果である。
地球の反対側に恋人がいると知っている同僚は「お土産買ってきてくださいね」とにこやかに送り出してくれた。
さまざまな人の協力により獲得したバカンス。楽しまなければ損だ。菅原は日頃の疲れを押し出すように、ぐっと伸びをした。
果てまで続くスカイブルー、くっきりとした輪郭の白い雲。そして、目の前に広がるのはエメラルドグリーンの海だ。菅原の周辺には人っ子一人おらず、いわゆるプライベートビーチというやつである。入江のようになった場所で、完全に断絶されている。
1407地球の反対側に恋人がいると知っている同僚は「お土産買ってきてくださいね」とにこやかに送り出してくれた。
さまざまな人の協力により獲得したバカンス。楽しまなければ損だ。菅原は日頃の疲れを押し出すように、ぐっと伸びをした。
果てまで続くスカイブルー、くっきりとした輪郭の白い雲。そして、目の前に広がるのはエメラルドグリーンの海だ。菅原の周辺には人っ子一人おらず、いわゆるプライベートビーチというやつである。入江のようになった場所で、完全に断絶されている。
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DONE第12回 菅受けワンドロワンライ、「宝物」及菅で参加させていただきます。同居・謎時空の二人です。
前回のギリギリ参加は流石に酷すぎると反省したので、今回はせめて1週間以内に……。
第12回 菅受けワンドロワンライ、「宝物」朝の気配に自然と目が覚めた。隣からすうすうと寝息が聞こえて、菅原は寝転んだまま視線を隣に向けた。そこには、気持ちよさそうに眠る及川の姿があった。珍しいこともあるもんだ、と布団から腕を引き抜いて無造作に流れる及川の前髪をそっと撫ぜた。普段は菅原よりも及川のほうが早く起きるのだ。曰く「あんまりかっこ悪いとこ見られたくない〜」とのことで、だから菅原にとって及川の寝顔はまあまあ貴重である。普段はきっちりセットされた髪もぐしゃぐしゃ。睫毛長えなあと顔を眺めていると薄らだが髭も生えていることに気づく。菅原はいつも十分程度で身支度を終えるが、及川はその倍の二十分、ときに三十分に及ぶこともある。隙なんて感じさせない普段の姿を思うと、この気の抜け切った今の様子のなんと可愛らしいことか。自然の口の端が緩み、菅原はもう一度及川の前髪を撫ぜる。
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DONE第11回 菅受ワンドロワンライ、「待ち合わせ」及菅で参加させてもらいました。高校卒業後くらいの二人です。次回開催まではセーフというお優しい言葉をいただいたので、滑り込みで……。
第11回 菅受ワンドロワンライ「待ち合わせ」「じゃあ、また放課後」
コートもマフラーもお役御免。朝の空気もすっかり和らいで、春の訪れを感じた。賑やかな昇降口を抜け、人もまばらな廊下でハイタッチ。教室は二つほど離れているので、ここでお別れだ。じゃあ、と菅原が自分の教室のほうへ歩き出し、名残惜しくて振り返ると及川はまだ教室に入らず、へらりと笑ってドアの前で手を振っていた。
一限、二限、三限、四限と終わり、昼休みも各々クラスメイトたちと食べる。曜日によっては五限の選択授業で一緒になったりならなかったり。他人からするとそっけないようにも感じるようだが、それはそれ。顔を合わせない間、互いのことが気にならないと言えば嘘になるが、二人で話し合って決めたことなので、特別苦でもなかった。
2151コートもマフラーもお役御免。朝の空気もすっかり和らいで、春の訪れを感じた。賑やかな昇降口を抜け、人もまばらな廊下でハイタッチ。教室は二つほど離れているので、ここでお別れだ。じゃあ、と菅原が自分の教室のほうへ歩き出し、名残惜しくて振り返ると及川はまだ教室に入らず、へらりと笑ってドアの前で手を振っていた。
一限、二限、三限、四限と終わり、昼休みも各々クラスメイトたちと食べる。曜日によっては五限の選択授業で一緒になったりならなかったり。他人からするとそっけないようにも感じるようだが、それはそれ。顔を合わせない間、互いのことが気にならないと言えば嘘になるが、二人で話し合って決めたことなので、特別苦でもなかった。
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DONE第10回 菅受ワンドロワンライ「きらきら/歌/ごちそう」及菅で参加させてもらいました。 全年齢、20歳overの及菅です。
第10回 菅受ワンドロワンライ「きらきら/歌/ごちそう」冷たい空気に肺と気管がチクチクした。仕事で体育の授業があるので、まったく運動をしないというわけではないが、やはり部活動をこなしていた時代には及ばない。少しでも負担を減らそうとスーッと鼻から息を吸い、息を吐く時は口から。ハーッと吐いた息は白く、機関車にでもなった気分だった。
今日、及川がアルゼンチンから日本に帰ってきていた。前の帰国はいつだったか、電話やメールはよく寄越してくれるのでいまいち覚えていない。とはいえ、生身の及川に会えるのは久しぶりだ。知らせを聞いて菅原は歓喜したのだが、平日なので当然仕事がある。それに『先生』という立場から、なるべく休みたくなかった。そんなこんなで「じゃあ家で待ってるね」という及川の言葉に甘え、大人しく出勤したのだが。
2567今日、及川がアルゼンチンから日本に帰ってきていた。前の帰国はいつだったか、電話やメールはよく寄越してくれるのでいまいち覚えていない。とはいえ、生身の及川に会えるのは久しぶりだ。知らせを聞いて菅原は歓喜したのだが、平日なので当然仕事がある。それに『先生』という立場から、なるべく休みたくなかった。そんなこんなで「じゃあ家で待ってるね」という及川の言葉に甘え、大人しく出勤したのだが。
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DONE第9回 菅受ワンドロワンライ「秋の夜長/秘密」及菅で参加させてもらいました。 全年齢、18歳及菅です。
第9回 菅受ワンドロワンライ「秋の夜長/秘密」とっぷり、外を出ると街はすっかり夜に浸かっていた。秋の夜長とはよく言ったもので、陽が落ちるのが早い。昼間の暖かさは何処へやら、肌に触れる空気は冷たく思わず首を竦めた。横目でちらりと隣に並ぶ菅原を盗み見ると、同じように首を竦めているところで、「おんなじだな」とじんわり嬉しくなる。思わず声を漏らして笑うと視線に気づいたようで、「なんだよ」と笑いながら体当たりをされた。細まった目は、これまでと違う意味を含む。付き合い始めのむず痒さと温度に浮かれて、「ぐえっ」とわざとらしく声を上げると、今度は前を歩く花巻が「いちゃついてんなよー!」と野次を飛ばしてくる。それを見て、松川と澤村、東峰が笑い、岩泉は振り返り視線を投げただけだった。
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