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    slow006

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    slow006

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    第13回 菅受けワンドロワンライ、「バカンス」及菅で参加させていただきます。

    #及菅
    andKan
    #菅受ワンドロワンライ
    kankeWandolowanRai

    第13回 菅受けワンドロワンライ「バカンス」及川のオフに合わせ、どうにかこうにかもぎ取った有給休暇。幸いにも理解ある職場だったためあっさりと許可は出た。しかし、自分の代わりに授業に入ってくれる同僚への引き継ぎ、不在中の教材の用意、子どもたちへの周知などなど、ギリギリまで奔走しての結果である。
    地球の反対側に恋人がいると知っている同僚は「お土産買ってきてくださいね」とにこやかに送り出してくれた。

    さまざまな人の協力により獲得したバカンス。楽しまなければ損だ。菅原は日頃の疲れを押し出すように、ぐっと伸びをした。
    果てまで続くスカイブルー、くっきりとした輪郭の白い雲。そして、目の前に広がるのはエメラルドグリーンの海だ。菅原の周辺には人っ子一人おらず、いわゆるプライベートビーチというやつである。入江のようになった場所で、完全に断絶されている。

    始まりは3ヶ月ほど前に届いた及川からメッセージ。添付データには旅行会社のチラシがあった。「1日1組様限定!プライベートビーチへご招待!」と綴られた大きな文字と、いかにもバカンスといった海の写真。自分が知る海よりも透き通った色をしているそれに一瞬海外かと思った。流石にそんなホイホイ海外に飛ぶ余裕はないぞと思ったところ、よくよく詳細を見れば日本の海だった。
    「一緒にバカンスを楽しみませんか」と少し間をおいて、遠慮がちに送られてきたメッセージに菅原は顔が綻ばせ、すぐさま手帳でに記してあるスケジュールを確認した。


    そんなこんなで、果てまで続くスカイブルー、くっきりとした輪郭の白い雲、目の前に広がるエメラルドグリーンの海だ。菅原は泳ぎ疲れて一旦離脱。パラソルの下でのんびりサイダーを飲んでいる。本音を言うと飲みたいのはビールだが、水辺で危ないから夜まで我慢してと及川に言われ、炭酸ジュースで欲求を誤魔化している。

    及川はまだ海で泳いでいる。学生時代よりずっとたくましくなった身体は数メートル先でもわかる。普段は暗がりでばかり見ている筋肉が、陽の下で惜しげもなく晒されている。ここがプライベートビーチで良かった、人がいたら逆ナンの嵐でバカンスどころじゃないぞとしみじみ思いながら眺めていると、菅原の視線に気がついたのか及川がへらりと笑ってこちらに向けて大きく手を振った。いい大人が子どもみたいな顔をする。普段接している子どもたちとおんなじような表情で、菅原は思わず吹き出す。笑いながら手を振り返すと、大きく振られていた手は手招きに変わっていた。


    「スガちゃーーーーーん、おいでよーーーーーー!」

    離れて暮らして会うたびに変化があって寂しいと感じるときもある。しかし、なんだかんだ根っこはそのままなのかもしれない。人懐っこし眼差しも、にぃっと歯を剥き出して笑う口も。

    「今行くーーーーーー!」

    パーカーを脱ぎ捨てて駆け出す。時間を置いて踏み締めた砂は驚くほど熱くて、火傷しそうなくらいだ。早く早くと叫ぶ及川の声に合わせるように、勢いよく砂を蹴り上げた。砂浜が湿り気を帯び始めかと思えば、あっというまに浅瀬に到着。水に足を取られてよろめくと、いつのまにか側まで来ていた及川に身体を支えられた。

    「あっそびーましょ」

    悪戯にぎゅうっと抱きしめられて、その勢いで及川もよろけて、揃って海の中へ。水に潜る刹那、見えた笑顔がいつになく楽しそうで来て良かったと菅原は回した腕に力を込めた。バカンスは続く。
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    slow006

    DONEリプorマロ来たセリフで短編書くで、リクエストしてもらいました!
    思い出を全部大事に抱えているのは、及川の方だと思っている。
    ねぇ、こうちゃんいつのまにか眠っていたようだった。
    日曜の昼下がり、暖かな春の空気に包まれて菅原はすっかり眠くなってしまった。ぼんやりとした頭と気怠い身体に逆らうことなく、居間にあるソファーに深く腰掛け、微睡むこと早一時間。せっかくの休日が……と、のろのろ身体を起こすが、左手だけ自由が利かず、立ち上がるまでには至れない。仕方がないかと半開きになったベランダへと続くガラス扉のほうを見る。すると、網戸越しにベランダの手すりの上をするりと通るかたまりが見え、菅原は二十代の頃に暮らしていたアパートを思い出した。同じようにベランダの手すりの上を滑るかたまり。斑ら模様を歪ませながら手すりの上を器用に歩くのは、菅原の住むアパートの、二軒先の戸建てで飼われている猫だった。さぞ良いものを食べているようで、外を出歩いているのにも拘らず毛並みが良く、水晶玉のような瞳はきらきらと輝いていたのを覚えている。いつだって仏頂面をしているその猫はどこか及川の幼馴染である岩泉を彷彿とさせるため、菅原は勝手に「岩泉」と呼んでいた。それに対し、及川は「スガちゃんさあ、よく見て!岩ちゃんはもっと愛嬌ある顔してるし!」と遺憾の意を示したが、菅原がそれを受け入れることはなかった。そもそもこの猫が家人に「ミーコ」と呼ばれていることを知っている。それでも、菅原にはもう岩泉にしか見えないので「岩泉」なのだ。
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    slow006

    DONEリプorマロ来たセリフで短編書くで、リクエストしてもらいました!
    弱っている及川さん良いよねと思いつつ、こんな弱り方するか?と己の解釈と戦っている……。想定していたシチュじゃなかったら申し訳ない……。
    何も云わないで薄暗い玄関にいた。春からの新生活に向けて引っ越したばかりの部屋は物が少なく、未開封の段ボールがそこらかしこに鎮座している。引っ越した、と言ってもまだ準備段階。ここに住んでいるわけではなく、住環境を整えている真っ最中だ。照明もまともに機能しているのは部屋のなかだけ。玄関は用意していた電球ではワット数が合わず、そのままになっている。

    三月も終わりに差し掛かった頃、菅原のもとに一件のメッセージが届く。「これから会えない?」とただ一言。差出人は及川徹。半年ほど前から菅原と交際をしている、要は恋人である。恋人といっても付き合い始めた時期が悪い。部活だ受験だと慌ただしく互い違いになることもしばしば。そもそも通う学校が違う。きちんとしたデートは指で数える程度。なんとか隙間を見つけては逢瀬を重ねていたが、それでもやっぱり恋人というには時間が足りない気がしていた。そして、この春から二人は離れ離れになる。菅原は地元の大学へ進学。及川は単身、アルゼンチンに行くという。どうやら知己の人物を師事してとのことだが、よもや誰が予想できただろうか。それを初めて耳にしたとき、菅原は「そっか」とただ一言だけ返した。完全なるキャパシティオーバーで受け止めるのがやっとだった。
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