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    slow006

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    slow006

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    第12回 菅受けワンドロワンライ、「宝物」及菅で参加させていただきます。
    同居・謎時空の二人です。
    前回のギリギリ参加は流石に酷すぎると反省したので、今回はせめて1週間以内に……。

    #及菅
    andKan
    #菅受ワンドロワンライ
    kankeWandolowanRai

    第12回 菅受けワンドロワンライ、「宝物」朝の気配に自然と目が覚めた。隣からすうすうと寝息が聞こえて、菅原は寝転んだまま視線を隣に向けた。そこには、気持ちよさそうに眠る及川の姿があった。珍しいこともあるもんだ、と布団から腕を引き抜いて無造作に流れる及川の前髪をそっと撫ぜた。普段は菅原よりも及川のほうが早く起きるのだ。曰く「あんまりかっこ悪いとこ見られたくない〜」とのことで、だから菅原にとって及川の寝顔はまあまあ貴重である。普段はきっちりセットされた髪もぐしゃぐしゃ。睫毛長えなあと顔を眺めていると薄らだが髭も生えていることに気づく。菅原はいつも十分程度で身支度を終えるが、及川はその倍の二十分、ときに三十分に及ぶこともある。隙なんて感じさせない普段の姿を思うと、この気の抜け切った今の様子のなんと可愛らしいことか。自然の口の端が緩み、菅原はもう一度及川の前髪を撫ぜる。
    この無防備な姿をずっと見ていたいとの考えが一瞬頭を過ぎったが、そうもいかない。なんていったって今日は平日である。このままでは菅原も及川も遅刻確定だ。頭の中で一、二、三とカウントをしてから、上体を起こす。そして、いまだ眠りこける及川の身体を揺すった。「遅刻するぞ」と及川の髪の毛を、今度は乱雑にわしゃわしゃと掻き回す。それでも及川は「うんうん」と唸るだけだったので、実力行使だとベッドを抜け出し、シャッと勢い良くカーテンを開けた。白い朝の光が一気に寝室に射し込む。半覚醒状態の及川にとって余程眩しかったようで、両手で目を多い間延びした呻き声を上げていた。かと思えば、また動きが止まってしまったので、致し方なく菅原はベッドに戻り、及川の傍らに寝そべった。

    「及川ぁ」

    再び身体を揺すり、あやすように声をかけた。もぞもぞと足元の布団が動いたので、そろそろ起きるなと顔を覆う手をちょんちょんと突っついた。すると、ゆっくりだが両手が顔から離れていく。いかにも渋々といった表情をしていて、これまた見ない表情なので今すぐ鏡を持ってきて本人に見せてやりたい。続けてゆっくりと、今度は瞼が開いていく。普段きらきらと輝く瞳はまだ眠いのかとろんとしていて焦点があっていない。「おはよう、ねぼすけ」と先ほどよりもほんの少しだけ強めに髪をわしゃわしゃと掻き回す。てっきり嫌がってすぐに起き上がるかと思いきや、意外にも及川はされるがままで、とろんとした瞳のまま菅原のほうをじっと見つめていた。なんだこの可愛い生き物は。気位の高いでかい猫が懐いたみたいな。すべて許して預け切っているみたいな。ここまでの姿はなかなか拝めない。いっそこのまましまっておきたいくらいである。
    あとちょっと、あとちょっとだけ。目の前の及川とサイドテーブルに置いた時計とにらめっこをしながら、時間の許す限り菅原は目の前の男を慈しみ続けた。

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    Replies from the creator

    slow006

    DONEリプorマロ来たセリフで短編書くで、リクエストしてもらいました!
    思い出を全部大事に抱えているのは、及川の方だと思っている。
    ねぇ、こうちゃんいつのまにか眠っていたようだった。
    日曜の昼下がり、暖かな春の空気に包まれて菅原はすっかり眠くなってしまった。ぼんやりとした頭と気怠い身体に逆らうことなく、居間にあるソファーに深く腰掛け、微睡むこと早一時間。せっかくの休日が……と、のろのろ身体を起こすが、左手だけ自由が利かず、立ち上がるまでには至れない。仕方がないかと半開きになったベランダへと続くガラス扉のほうを見る。すると、網戸越しにベランダの手すりの上をするりと通るかたまりが見え、菅原は二十代の頃に暮らしていたアパートを思い出した。同じようにベランダの手すりの上を滑るかたまり。斑ら模様を歪ませながら手すりの上を器用に歩くのは、菅原の住むアパートの、二軒先の戸建てで飼われている猫だった。さぞ良いものを食べているようで、外を出歩いているのにも拘らず毛並みが良く、水晶玉のような瞳はきらきらと輝いていたのを覚えている。いつだって仏頂面をしているその猫はどこか及川の幼馴染である岩泉を彷彿とさせるため、菅原は勝手に「岩泉」と呼んでいた。それに対し、及川は「スガちゃんさあ、よく見て!岩ちゃんはもっと愛嬌ある顔してるし!」と遺憾の意を示したが、菅原がそれを受け入れることはなかった。そもそもこの猫が家人に「ミーコ」と呼ばれていることを知っている。それでも、菅原にはもう岩泉にしか見えないので「岩泉」なのだ。
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    slow006

    DONEリプorマロ来たセリフで短編書くで、リクエストしてもらいました!
    弱っている及川さん良いよねと思いつつ、こんな弱り方するか?と己の解釈と戦っている……。想定していたシチュじゃなかったら申し訳ない……。
    何も云わないで薄暗い玄関にいた。春からの新生活に向けて引っ越したばかりの部屋は物が少なく、未開封の段ボールがそこらかしこに鎮座している。引っ越した、と言ってもまだ準備段階。ここに住んでいるわけではなく、住環境を整えている真っ最中だ。照明もまともに機能しているのは部屋のなかだけ。玄関は用意していた電球ではワット数が合わず、そのままになっている。

    三月も終わりに差し掛かった頃、菅原のもとに一件のメッセージが届く。「これから会えない?」とただ一言。差出人は及川徹。半年ほど前から菅原と交際をしている、要は恋人である。恋人といっても付き合い始めた時期が悪い。部活だ受験だと慌ただしく互い違いになることもしばしば。そもそも通う学校が違う。きちんとしたデートは指で数える程度。なんとか隙間を見つけては逢瀬を重ねていたが、それでもやっぱり恋人というには時間が足りない気がしていた。そして、この春から二人は離れ離れになる。菅原は地元の大学へ進学。及川は単身、アルゼンチンに行くという。どうやら知己の人物を師事してとのことだが、よもや誰が予想できただろうか。それを初めて耳にしたとき、菅原は「そっか」とただ一言だけ返した。完全なるキャパシティオーバーで受け止めるのがやっとだった。
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