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    slow006

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    slow006

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    第9回 菅受ワンドロワンライ「秋の夜長/秘密」
    及菅で参加させてもらいました。 全年齢、18歳及菅です。

    #及菅
    andKan
    #菅受ワンドロワンライ
    kankeWandolowanRai

    第9回 菅受ワンドロワンライ「秋の夜長/秘密」とっぷり、外を出ると街はすっかり夜に浸かっていた。秋の夜長とはよく言ったもので、陽が落ちるのが早い。昼間の暖かさは何処へやら、肌に触れる空気は冷たく思わず首を竦めた。横目でちらりと隣に並ぶ菅原を盗み見ると、同じように首を竦めているところで、「おんなじだな」とじんわり嬉しくなる。思わず声を漏らして笑うと視線に気づいたようで、「なんだよ」と笑いながら体当たりをされた。細まった目は、これまでと違う意味を含む。付き合い始めのむず痒さと温度に浮かれて、「ぐえっ」とわざとらしく声を上げると、今度は前を歩く花巻が「いちゃついてんなよー!」と野次を飛ばしてくる。それを見て、松川と澤村、東峰が笑い、岩泉は振り返り視線を投げただけだった。

    今日、及川と菅原が会ったのはたまたまだった。及川は岩泉と花巻、松川と、菅原は澤村と東峰と、それぞれ出かけていたのだ。途中、映画館でばったり。そのまま合流し、1日行動を共にした。少し前まではライバル校。でも部活を引退した身をしては、とくに敵意を抱くこともなく、「話してみたら結構面白いじゃん」というのが、全体の流れである。

    棚からぼた餅、及川と菅原はおんなじように思った。付き合い始めたとはいえ、受験がまだ残っている。なかなか会う時間も取れない。だから、予定外に会えたこと、一緒に過ごせることは素直に嬉しかった。
    しかしながら、問題がひとつ。まだ、誰にも話していないのだ。岩泉にすら、澤村にすら。ゆえに大っぴらにベタベタするわけにもいかず、時折見つからないように視線を送るのが精一杯だった。

    屋外は思いのほか冷えて、寒さから逃れるようにポケットに手を突っ込んだ。すると、ひやりと侵入者が紛れ込む。突然の来客に及川が思わず肩を跳ねさせると、体当たりをしたまま寄り掛かった菅原のつむじから押し殺すような笑い声が聞こえる。小声で「バレるよ」と咎めると、「へーきへーき」と能天気な声が返ってきた。ポケットに入ってきた手は、及川の手よりもほんの少しだけ小さいが、それでもまあまあの大きさはある。なかはぎゅうぎゅう、菅原が手を抜かない限り、及川の手は抜けない状態だ。ぎゅうぎゅうのなか、もぞりもぞりと菅原の手が滑る。手の甲から指先へ、指の間を埋めるように、被せるように指が交わる。菅原の手の動きには粗さがみえて、色気もへったくれもなかったが、及川にとっては十分な刺激だった。
    今すぐぎゅってしたい。でも抱きしめようにも手は抜けず、結局菅原にされるがまま、秘密を抱え、ひたすらに歩いた。
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    slow006

    DOODLEリプorマロ来たセリフで短編書くで、リクエストしてもらいました!
    弱っている及川さん良いよねと思いつつ、こんな弱り方するか?と己の解釈と戦っている……。想定していたシチュじゃなかったら申し訳ない……。
    何も云わないで薄暗い玄関にいた。春からの新生活に向けて引っ越したばかりの部屋は物が少なく、未開封の段ボールがそこらかしこに鎮座している。引っ越した、と言ってもまだ準備段階。ここに住んでいるわけではなく、住環境を整えている真っ最中だ。照明もまともに機能しているのは部屋のなかだけ。玄関は用意していた電球ではワット数が合わず、そのままになっている。

    三月も終わりに差し掛かった頃、菅原のもとに一件のメッセージが届く。「これから会えない?」とただ一言。差出人は及川徹。半年ほど前から菅原と交際をしている、要は恋人である。恋人といっても付き合い始めた時期が悪い。部活だ受験だと慌ただしく互い違いになることもしばしば。そもそも通う学校が違う。きちんとしたデートは指で数える程度。なんとか隙間を見つけては逢瀬を重ねていたが、それでもやっぱり恋人というには時間が足りない気がしていた。そして、この春から二人は離れ離れになる。菅原は地元の大学へ進学。及川は単身、アルゼンチンに行くという。どうやら知己の人物を師事してとのことだが、よもや誰が予想できただろうか。それを初めて耳にしたとき、菅原は「そっか」とただ一言だけ返した。完全なるキャパシティオーバーで受け止めるのがやっとだった。
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    slow006

    DOODLE第17回 菅受けワンドロワンライ、「嘘・ハプニング」及菅で参加させていただきました。麦茶カランができたので満足ですが、時間が色々足りなかった。もうちょっと細かい描写入れたかった。
    嘘つきジージーと蝉が鳴く。夏休み真っ只中の小学生がはしゃぐ声が聞こえる。生温い風がそよりと部屋を抜けて窓辺に吊るした風鈴が揺れる。外の明かりに頼った室内は薄暗く、窓一面に広がる青色はまるで額に収まった絵画のようだった。外は雲ひとつない青空で、まさにレジャー日和。今遊ばずして、いつ遊ぶ。夏の陽気に誘われて外へ繰り出すぞ!とはならず、及川と菅原は勉強会を開いていた。夏休みと言えど受験生。部活がない日は勉強だ。及川の部屋に折り畳みのテーブルを広げ、それぞれの得意教科を教え合っていた。参考書を共有しやすいようにL字に座り、黙々と勉強。つい先ほどまでは。

    「ごめん、パーカー踏んで滑った」
    「や、大丈夫」

    今は、及川が菅原を押し倒し、すっぽり菅原を覆っている。きっかけは「麦茶、おかわり持ってくるね」と及川が立ち上がったこと。その足元には菅原を迎えに行く際に来ていたUVカットパーカーがあった。すべすべした素材のUVカットパーカーは滑りやすい。おまけに畳の上だと摩擦も少ない。つるりと滑ってすってんころりん。そばにいた菅原を巻き込んで、という具合である。幸いにも、及川が咄嗟に床に手をついたため菅原を押し潰すことはなかった。自分の下にいる菅原も、見る限りどこかを強く打った様子はなさそうだった。大事な時期に怪我をしたりさせたりするのは困る。及川はホッと胸を撫で下ろし、もう一度菅原のほうに目を向けた。
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    slow006

    DONE第14回 菅受けワンドロワンライ、「とろける」及菅で参加させていただきます。
    第14回 菅受けワンドロワンライ「とろける」夏が終わり涼しい秋へ、と思いきや異常気象により一気に真冬の寒さとなった。つい先日まで真夏日を観測していたのだ。当然寒さへの備えなどなく、寝具は夏使用のまま。どうにかこうにか引っ張り出した毛布のみが頼みの綱である。次の休日、防寒に向けて環境を整えようと及川と菅原は約束……したものの、それまでは寒いもんは寒い。ましてや菅原はバレーを辞めてから随分経ち、筋肉がないわけではないけれど現役の頃よりは確実に基礎体温が落ちている。そんなこんなでここ数日は及川にひっついて眠る。夏の間は暑いからくっつくなと及川を冷たくあしらっていたくせに、とんだ手のひら返しである。
    とはいえ、及川とて満更でもなく、この状況を享受していた。腹に回る手、足は少しでも温度を得ようと及川の足に絡んでいる。背中側は見えないけれど、顔から腰まで沿うようにぴったりくっついているのがわかる。これでもまだ寒いのか、埋まるのではないかというくらいに擦り寄ってくるものだから、及川は一度菅原からの拘束をほどき、寝返りを打って菅原を腕の中に収めた。
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