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    slow006

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    slow006

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    第11回 菅受ワンドロワンライ、「待ち合わせ」及菅で参加させてもらいました。
    高校卒業後くらいの二人です。次回開催まではセーフというお優しい言葉をいただいたので、滑り込みで……。

    #及菅
    andKan
    #菅受ワンドロワンライ
    kankeWandolowanRai

    第11回 菅受ワンドロワンライ「待ち合わせ」「じゃあ、また放課後」

    コートもマフラーもお役御免。朝の空気もすっかり和らいで、春の訪れを感じた。賑やかな昇降口を抜け、人もまばらな廊下でハイタッチ。教室は二つほど離れているので、ここでお別れだ。じゃあ、と菅原が自分の教室のほうへ歩き出し、名残惜しくて振り返ると及川はまだ教室に入らず、へらりと笑ってドアの前で手を振っていた。
    一限、二限、三限、四限と終わり、昼休みも各々クラスメイトたちと食べる。曜日によっては五限の選択授業で一緒になったりならなかったり。他人からするとそっけないようにも感じるようだが、それはそれ。顔を合わせない間、互いのことが気にならないと言えば嘘になるが、二人で話し合って決めたことなので、特別苦でもなかった。

    あれよあれよという間に三年になり、部活も揃って引退したので、授業が終わればすぐ帰宅だ。「じゃあ、また放課後」という言葉通り、菅原は教室を足早に出る。待ち合わせ場所は昇降口。ではなく、校門。でもなく生徒の行き来が少ない裏門だ。何故かと言うと及川がすぐ女子生徒に囲まれるから。最初の頃こそ、教室だったり、昇降口だったり、校門だったりで待ち合わせていたが、女子に見つかるとにっちもさっちも行かず、待ち合わせどころではなくなるので裏門に落ち着いた。なお、裏門がダメだった時は近くのコンビニで待ち合わせている。

    裏門に到着し、今日はどうかなと菅原が周囲を見渡す。まばらに人はいるものの、普段及川を目で追っているような女子の姿は見当たらなかった。ほっと胸を撫で下ろしたところで門の影からニュッと手が伸びてきて、菅原は瞬間ぎょっと目を見開く。伸びてきた手はひらひらと揺れ、そしてひょっこりと悪戯っ子のような表情の及川が顔を出す。

    「おう、ひょっこりはん」
    「そんな顔の出し方してないし!」

    揶揄われて口を尖らせながら出てくる姿に、菅原は上がった心拍数を隠してケラケラと笑う。少しでも驚いたと知れたら逆に弄られる。及川の表情を見るに、どうやら驚いたことはバレていないらしい。口を尖らせ続ける及川の背を宥めるように叩き、機嫌をとるように腕を引く。機嫌をとると言っても、及川の態度はポーズなので、さほど気にすることではないのだが、さすが末っ子というべきか。自分より大きな身体で小さな子供のように拗ねるので、菅原としては面白くて可愛かった。
    引っ張られた及川の身体が、力の抜けた猫のようにぐにゃりと揺れるが構わず歩き始める。ふてくされた子どものように渋々足を前に出した及川だったが10mほど歩けば、もう自力で歩いていた。

    受験勉強もあるから放課後遊び回ることはしないけれど、登下校を一緒にして歩きながら他愛のない話をする。あれが食べたいだとか、受験が終わったらどこに行きたいだとか、そんな話ばかりだけれど、だらだらと話をするのは楽しい。ときおり、買い食いをすることもあって、そんなときは一緒にいられる時間がほんの少しだけ伸びるので嬉しかった。
    「じゃあ、また明日」
    及川がくるりと身体を回転させて菅原の顔を覗きこむように首を傾げる。傾いた陽の光が髪に透けて、キラキラ光って綺麗だった。
    「おう、また明日」
    手を小さく上げて、応えるように菅原も首を傾ける。早く明日が来れば良いなと思いながら。


    「っていう妄想をたまにしてたんだけど」
    「え、可愛い」
    及川の部屋、アルゼンチン出立に向けた荷造りを手伝いながら、なんとなく互いの高校生活を振り返っての会話だった。出会いは高校三年。放課後デートなんて甘い響きのするものは片手で数える程度。学校はまったく違う場所に位置しているため、登下校が被るなんてことはない。そこで、もし同じ学校だったら……なんて妄想を繰り広げるに至ったのだった。

    「でも今思うと同じ学校じゃなくて良かったなって」
    「え!?なんで!?」

    一瞬、恋人の可愛さに頬を緩めた及川だったが、続いた言葉に緩めた頬がぎくりと固まった。理由を聞きたいような、聞きたくないような。こちらを見ることもせず、段ボールに荷物を詰める後ろ姿をじっと眺めた。箱がいっぱいになったのが、粘着テープをビビビと伸ばし、ビリリと千切る音が室内に響く。テープが剥がれないようにパンパンと端を叩いてから、菅原はくるりと及川の方を向き、ニィッと目を細めた。二人は膝立ち、背中合わせで作業をしていたから、距離はさほど遠くない。菅原が一歩前のめりに手を床につけば、ほぼゼロ距離だ。
    突然近づいてきた菅原に及川はバランスを崩し、尻持ちをつく。及川の姿勢が低くなったところで、するりと猫のようなしなやかさで菅原は及川の耳に顔を寄せた。

    「だって、勉強も部活も手がつかなくなるかもしれないし、もしかしたらお前のことここまで好きになってなかったかも」

    囁きを落とすと面白いくらいに及川の身体が揺れた。その様子を見て、満足した菅原はあっという間に身体を離し、新しい段ボールを取りに部屋の隅へと移動していった。
    「さ、あと少しだし頑張んべ!」
    馬鹿でかい段ボールを片手に笑う姿はさきほどとは打って変わって爽やかだ。「スガちゃんの悪魔……!」とわななく及川を尻目に、ひとつふたつと荷物を段ボールに詰めていった。
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    slow006

    DOODLEリプorマロ来たセリフで短編書くで、リクエストしてもらいました!
    弱っている及川さん良いよねと思いつつ、こんな弱り方するか?と己の解釈と戦っている……。想定していたシチュじゃなかったら申し訳ない……。
    何も云わないで薄暗い玄関にいた。春からの新生活に向けて引っ越したばかりの部屋は物が少なく、未開封の段ボールがそこらかしこに鎮座している。引っ越した、と言ってもまだ準備段階。ここに住んでいるわけではなく、住環境を整えている真っ最中だ。照明もまともに機能しているのは部屋のなかだけ。玄関は用意していた電球ではワット数が合わず、そのままになっている。

    三月も終わりに差し掛かった頃、菅原のもとに一件のメッセージが届く。「これから会えない?」とただ一言。差出人は及川徹。半年ほど前から菅原と交際をしている、要は恋人である。恋人といっても付き合い始めた時期が悪い。部活だ受験だと慌ただしく互い違いになることもしばしば。そもそも通う学校が違う。きちんとしたデートは指で数える程度。なんとか隙間を見つけては逢瀬を重ねていたが、それでもやっぱり恋人というには時間が足りない気がしていた。そして、この春から二人は離れ離れになる。菅原は地元の大学へ進学。及川は単身、アルゼンチンに行くという。どうやら知己の人物を師事してとのことだが、よもや誰が予想できただろうか。それを初めて耳にしたとき、菅原は「そっか」とただ一言だけ返した。完全なるキャパシティオーバーで受け止めるのがやっとだった。
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    slow006

    DOODLE第17回 菅受けワンドロワンライ、「嘘・ハプニング」及菅で参加させていただきました。麦茶カランができたので満足ですが、時間が色々足りなかった。もうちょっと細かい描写入れたかった。
    嘘つきジージーと蝉が鳴く。夏休み真っ只中の小学生がはしゃぐ声が聞こえる。生温い風がそよりと部屋を抜けて窓辺に吊るした風鈴が揺れる。外の明かりに頼った室内は薄暗く、窓一面に広がる青色はまるで額に収まった絵画のようだった。外は雲ひとつない青空で、まさにレジャー日和。今遊ばずして、いつ遊ぶ。夏の陽気に誘われて外へ繰り出すぞ!とはならず、及川と菅原は勉強会を開いていた。夏休みと言えど受験生。部活がない日は勉強だ。及川の部屋に折り畳みのテーブルを広げ、それぞれの得意教科を教え合っていた。参考書を共有しやすいようにL字に座り、黙々と勉強。つい先ほどまでは。

    「ごめん、パーカー踏んで滑った」
    「や、大丈夫」

    今は、及川が菅原を押し倒し、すっぽり菅原を覆っている。きっかけは「麦茶、おかわり持ってくるね」と及川が立ち上がったこと。その足元には菅原を迎えに行く際に来ていたUVカットパーカーがあった。すべすべした素材のUVカットパーカーは滑りやすい。おまけに畳の上だと摩擦も少ない。つるりと滑ってすってんころりん。そばにいた菅原を巻き込んで、という具合である。幸いにも、及川が咄嗟に床に手をついたため菅原を押し潰すことはなかった。自分の下にいる菅原も、見る限りどこかを強く打った様子はなさそうだった。大事な時期に怪我をしたりさせたりするのは困る。及川はホッと胸を撫で下ろし、もう一度菅原のほうに目を向けた。
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    slow006

    DOODLE第16回 菅受けワンドロワンライ、「ごほうび」及菅で参加させていただきました。
    ドサリ。ベッドにうつ伏せに倒れ込んで、及川はふぅと息を吐いた。時刻は午前零時を回ったところ。疲労で鉛みたいに重い身体をもぞりもぞりと動かして、体制を横向きに変える。明かりを消してしまったので室内は暗いが、窓の外から入ってくる薄明かりでぼんやりと部屋の様子が見える。机の上は書類と文房具が散乱、椅子の背もたれには脱いだのか洗ったのかわからない服がかかっている。カバンは床に放りっぱなし。未だかつてない荒れ具合だ。

    この二週間の忙しさは尋常じゃなかった。クラブチームでの日々のトレーニングはもちろんのこと、慰問ボランティア、スポンサーとの会合などなど。オフシーズンといえど、なかなかのハードスケジュールが組まれており、それに加えて、ビザの更新時期が来たのだ。及川は飄々とした立ち振る舞いから軽薄な印象を持たれることはあるが、基本真面目な男である。学生時代、夏休みの宿題は計画的に進めるタイプであったし、無論こうした重要書類の申請などは、事前に準備を済ませ期日に間に合うようにしている。ところが、今回からビザ更新の代行先を変えたのがいけなかった。弁護士に依頼して動きがないまま二ヶ月、三ヶ月と経ち、あと少しで半年というところで、見かねたチームメイトが仲介に入ってくれた。蓋を開けてみれば、及川の依頼は手付かず。「アジア人のガキ」という認識で舐められていたのである。えらいこっちゃとチームメイトも巻き込んで奔走し、どうにかこうにか申請に漕ぎつけた。そんなこんなで日常生活が犠牲となり、この有様だ。
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    slow006

    DONE第14回 菅受けワンドロワンライ、「とろける」及菅で参加させていただきます。
    第14回 菅受けワンドロワンライ「とろける」夏が終わり涼しい秋へ、と思いきや異常気象により一気に真冬の寒さとなった。つい先日まで真夏日を観測していたのだ。当然寒さへの備えなどなく、寝具は夏使用のまま。どうにかこうにか引っ張り出した毛布のみが頼みの綱である。次の休日、防寒に向けて環境を整えようと及川と菅原は約束……したものの、それまでは寒いもんは寒い。ましてや菅原はバレーを辞めてから随分経ち、筋肉がないわけではないけれど現役の頃よりは確実に基礎体温が落ちている。そんなこんなでここ数日は及川にひっついて眠る。夏の間は暑いからくっつくなと及川を冷たくあしらっていたくせに、とんだ手のひら返しである。
    とはいえ、及川とて満更でもなく、この状況を享受していた。腹に回る手、足は少しでも温度を得ようと及川の足に絡んでいる。背中側は見えないけれど、顔から腰まで沿うようにぴったりくっついているのがわかる。これでもまだ寒いのか、埋まるのではないかというくらいに擦り寄ってくるものだから、及川は一度菅原からの拘束をほどき、寝返りを打って菅原を腕の中に収めた。
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