狭山くん
TRAINING2022-08-23/高校時代に空閑とハーレーで走った道を1人で走る汐見♂の話。今週末にはハッピーハッピーです(予言)空閑汐♂デイリー【Memories】23 ひとり荒野をバイクで駆ける。この場所で暮らしはじめて少しした頃に買ったバイクはすっかり馴染んでしまって。汐見は休暇の殆どをこうやってバイクを走らせ過ごしていた。
同じ部隊の先輩は気のいい人間で、同期は学生時代からの仲ではある。けれど、余暇の時間まで過ごしたいとはどうしても思えなくて。大体の誘いを断り結局一人で過ごすことが多いのだ。あまりにも人付き合いが悪くて、自分でも笑ってしまう。そんな自分が平穏に過ごせているのは、ひとえに同期であるフォスターがフォローしてくれているお陰だろう。
――ヒロミに何を言われたのかは知らないが。
フォスターは保護者よろしく汐見を構い、汐見が辟易とするようなあからさまな誘いの防波堤のような位置にその身を置いていて。軍に入ってから筋肉も持久力も学生時代よりも増えたとは言え、体質的なものなのか見た目はどうしても細く軟弱に見える汐見からして見れば羨ましい事この上ない恵まれた体格を持つフォスターはこの場所でグリズリーと呼ばれていた。
1230同じ部隊の先輩は気のいい人間で、同期は学生時代からの仲ではある。けれど、余暇の時間まで過ごしたいとはどうしても思えなくて。大体の誘いを断り結局一人で過ごすことが多いのだ。あまりにも人付き合いが悪くて、自分でも笑ってしまう。そんな自分が平穏に過ごせているのは、ひとえに同期であるフォスターがフォローしてくれているお陰だろう。
――ヒロミに何を言われたのかは知らないが。
フォスターは保護者よろしく汐見を構い、汐見が辟易とするようなあからさまな誘いの防波堤のような位置にその身を置いていて。軍に入ってから筋肉も持久力も学生時代よりも増えたとは言え、体質的なものなのか見た目はどうしても細く軟弱に見える汐見からして見れば羨ましい事この上ない恵まれた体格を持つフォスターはこの場所でグリズリーと呼ばれていた。
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TRAINING2022-08-22/空閑と吉嗣先生回。夢を掴める人間なんてひと握りだよねって話。空閑汐♂デイリー【Memories】22「よぉ、久々だな」
「ご無沙汰してます」
久々に訪れた国際航空宇宙学院の飛行教官室で、ひらりと片手を揺らし空閑を迎えたのは吉嗣であった。吉嗣の姿を見つけた空閑も会釈で返す。
「悪いな、卒業生講話やってくれる奴が見つからなくてなぁ」
「っていうか、良いんですか俺で。最終的に航宙士学院中退ですよ?」
何年経っても変わらないジャージ姿で空閑を迎え入れる吉嗣が気安い口調で言葉を紡げば、空閑は眉を下げて彼へと問う。それは依頼を受けた時から、空閑の心に引っかかっていた部分でもあった。
「それで良いんだよ。卒業生講話って基本成功したパターンしか出て来ないけどさ、この学校に入れたからと言って全員が上手く行く訳でもねぇし……そうなった時に立て直せない奴の方が多いんだよ。お前も、分かるだろ?」
1022「ご無沙汰してます」
久々に訪れた国際航空宇宙学院の飛行教官室で、ひらりと片手を揺らし空閑を迎えたのは吉嗣であった。吉嗣の姿を見つけた空閑も会釈で返す。
「悪いな、卒業生講話やってくれる奴が見つからなくてなぁ」
「っていうか、良いんですか俺で。最終的に航宙士学院中退ですよ?」
何年経っても変わらないジャージ姿で空閑を迎え入れる吉嗣が気安い口調で言葉を紡げば、空閑は眉を下げて彼へと問う。それは依頼を受けた時から、空閑の心に引っかかっていた部分でもあった。
「それで良いんだよ。卒業生講話って基本成功したパターンしか出て来ないけどさ、この学校に入れたからと言って全員が上手く行く訳でもねぇし……そうなった時に立て直せない奴の方が多いんだよ。お前も、分かるだろ?」
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TRAINING2022-08-19/ヴィン汐♂事後ーーーーーーー!!!!!!!事後だからセーフだと思いたいセーフでしょ。事後のベッドでタバコを吸うのは私の癖のサビでもある。空閑汐♂デイリー【Memories】21 一人で眠れるようになった、あの頃は手にしようともしなかった煙草を覚えた。それは全部、もう一度ひとりで生きていけるようにしようとしたからだ。けれど――あの熱を喪った寒さだけは、ひとりではどうする事も出来なかった。
「ん……、アマネ……?」
「悪い、起こしたか」
出張で地球に来ていると連絡をくれたのはフェルマーだった。久々に飲もうかと、フェルマーが泊まるホテルの一室で買い込んだアルコールを開け気づいた時には泣いていた。
こんな事を言えるのは、フェルマーにだけで。空閑が隣に居ない日々があまりにも色彩に乏しくて、寒く悲しく――寂しいものだなんて吐露する事が出来る相手を、汐見はフェルマーしか知らなかったのだ。
1286「ん……、アマネ……?」
「悪い、起こしたか」
出張で地球に来ていると連絡をくれたのはフェルマーだった。久々に飲もうかと、フェルマーが泊まるホテルの一室で買い込んだアルコールを開け気づいた時には泣いていた。
こんな事を言えるのは、フェルマーにだけで。空閑が隣に居ない日々があまりにも色彩に乏しくて、寒く悲しく――寂しいものだなんて吐露する事が出来る相手を、汐見はフェルマーしか知らなかったのだ。
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TRAINING2022-08-20/遂に8月分も20本目!カウントダウンが始まった気もしますが来週まではこんな感じ。空閑汐♂デイリー【Memories】20「アマネの事抱いたから」
酒を飲みながら思い出したようにそう口にしたフェルマーの言葉に、空閑は固まっていた。沈黙に満ちたテーブルの周囲で賑わう人々の喧騒が遠い。その沈黙を打ち破ったのは篠原だった。
「ヴィン! お前なぁ!」
固まったままの空閑を横目に、隣に座るフェルマーの頭を軽く叩き声を荒げた篠原は大きく一つ息を吐く。何を言い出すかと思ったら、あまりにも碌でもない言葉で辟易とする。汐見の考えが解らない訳ではなかったし、汐見がフェルマーに縋ればそうなる予感もしていたが――それを空閑に言うか? 普通。ようやく篠原がオーベルトへの赴任を決め久々に集まろうと顔を合わせたメンバーは篠原と空閑とフェルマーで。高師は先約があるとこの場所には居ない。恐らく告白されたからと適当に付き合っている相手とのデートだろう。高師は高師でどんな心境の変化があったのか、大学卒業後短いスパンで恋人が変わっている。そして、高師が居らず空閑が居る場所でそんな爆弾を落とすフェルマーはきっと確信犯だ。
1230酒を飲みながら思い出したようにそう口にしたフェルマーの言葉に、空閑は固まっていた。沈黙に満ちたテーブルの周囲で賑わう人々の喧騒が遠い。その沈黙を打ち破ったのは篠原だった。
「ヴィン! お前なぁ!」
固まったままの空閑を横目に、隣に座るフェルマーの頭を軽く叩き声を荒げた篠原は大きく一つ息を吐く。何を言い出すかと思ったら、あまりにも碌でもない言葉で辟易とする。汐見の考えが解らない訳ではなかったし、汐見がフェルマーに縋ればそうなる予感もしていたが――それを空閑に言うか? 普通。ようやく篠原がオーベルトへの赴任を決め久々に集まろうと顔を合わせたメンバーは篠原と空閑とフェルマーで。高師は先約があるとこの場所には居ない。恐らく告白されたからと適当に付き合っている相手とのデートだろう。高師は高師でどんな心境の変化があったのか、大学卒業後短いスパンで恋人が変わっている。そして、高師が居らず空閑が居る場所でそんな爆弾を落とすフェルマーはきっと確信犯だ。
キツキトウ
INFO2022/8/20イベント参加と頒布のお知らせ。販売場所はboothさん。
路地裏に佇む骨董屋の様に、「ふとした時」に「寄り道感覚」でお立ち寄りください。
■箱庭堂 : https://kitukitou.booth.pm/
■BOOTH Festival 創作BL回 : https://booth.pm/ja/exhibitions/bf-bl 4
狭山くん
TRAINING2022-08-19/今日は汐見♂不在な汐見♂の話。フォスターは空閑汐♂を4年間見てその後1人になった汐見♂を3年見てるので偶に見てられないと思う事もありそう。空閑汐♂デイリー【Memories】19 軍に入って二年、五年間同じ学び舎で暮らした同期をイーグルと呼ぶのにも慣れた頃。酒場ではその男の話題で盛り上がっていた。
「アイツ、またモーション掛けられてたんだってよ」
「今度は誰だ?」
「整備のクラウディア! 俺も狙ってたのになぁ」
「お前とイーグルを比べたらイーグルに行くだろそりゃ」
先輩達の話を聞き流しながら、この酒場に居ない男の事を思い出す。大胆かつ繊細な操縦はかつてのまま、振る舞いはどこか機械的になってしまった男。空閑が居なくなったというそれだけで、彼はそれまで持っていた筈の人間味を削ぎ落としていった事をこの場所でフォスターだけが知っている。
この部隊に配属された頃にはもう、殆ど笑うこともなくなっていた汐見はしかし男女問わず周囲の人間を虜にしていた。着痩せをするタイプなのだろう、細身の長身は脱げば引き締まった筋肉を纏い、その整った相貌も歳より若く見えるものの精悍な青年らしさを湛えていて。
1145「アイツ、またモーション掛けられてたんだってよ」
「今度は誰だ?」
「整備のクラウディア! 俺も狙ってたのになぁ」
「お前とイーグルを比べたらイーグルに行くだろそりゃ」
先輩達の話を聞き流しながら、この酒場に居ない男の事を思い出す。大胆かつ繊細な操縦はかつてのまま、振る舞いはどこか機械的になってしまった男。空閑が居なくなったというそれだけで、彼はそれまで持っていた筈の人間味を削ぎ落としていった事をこの場所でフォスターだけが知っている。
この部隊に配属された頃にはもう、殆ど笑うこともなくなっていた汐見はしかし男女問わず周囲の人間を虜にしていた。着痩せをするタイプなのだろう、細身の長身は脱げば引き締まった筋肉を纏い、その整った相貌も歳より若く見えるものの精悍な青年らしさを湛えていて。
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TRAINING2022-08-18/本日は空閑編!ようこそオーベルト!って言いながらもまぁ不穏。ヴィンは割と汐見♂モンペなとこあるよね。空閑汐♂デイリー【Memories】18 かつて目指したものにはなれなかった、けれどもかつて目指した場所には辿り着く事が出来た。一度は喪ったと思っていた全ては、まだ自分の中に残されていて――喪失感に打ちのめされそうになる夜に抗い、空閑は約束の場所へと降り立つ事が出来たのだ。
「ようこそ、オーベルトへ」
静かの海に位置するオーベルトの玄関口であるオーベルト宇宙港で空閑を迎え入れたのは、いち早くオーベルト勤務を拝命し既にこの地で働きはじめていたフェルマーで。整った相貌にお手本みたいな笑みを浮かべて空閑を出迎えた彼に、空閑は小さく笑みを浮かべて頷いた。
「――で、アマネの事振ったんだって?」
宇宙港から少し進んだ場所にあるノースエリアのダイニングバーで、フェルマーは不機嫌そうな表情を浮かべてビールを呷る。刺すように繰り出されたフェルマーからの問いに、空閑は困ったように笑みを浮かべながらも頷いて。
1705「ようこそ、オーベルトへ」
静かの海に位置するオーベルトの玄関口であるオーベルト宇宙港で空閑を迎え入れたのは、いち早くオーベルト勤務を拝命し既にこの地で働きはじめていたフェルマーで。整った相貌にお手本みたいな笑みを浮かべて空閑を出迎えた彼に、空閑は小さく笑みを浮かべて頷いた。
「――で、アマネの事振ったんだって?」
宇宙港から少し進んだ場所にあるノースエリアのダイニングバーで、フェルマーは不機嫌そうな表情を浮かべてビールを呷る。刺すように繰り出されたフェルマーからの問いに、空閑は困ったように笑みを浮かべながらも頷いて。
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TRAINING2022-08-17/本日の空閑汐♂デイリーは汐見♂編。これから空閑と汐見♂のそれぞれの1年づつを上げていきます。空閑と汐見♂だと別れてダメージ強いのは汐見♂の方だよなぁ。空閑汐♂デイリー【Memories】17 荒涼とした赤い大地を見つめ、密かに嘆息する。そんな汐見の態度を横目で見ていたフォスターは困ったように笑いながらも、彼の背中を景気付けとでも言うように叩いていた。
「今日も一日、働くぞ」
「解ってるさ、今日も一日墓場で飛んでやる」
航宙士学院を主席で卒業した汐見は、フォスターと共に軍人としての道を進み始めていた。新兵教育を修了し、出された辞令は二人揃ってモハーヴェ宇宙港勤務。近くには飛行機の墓場と呼ばれる場所があるその地では、地球と軌道ステーションを結ぶスペースプレーンが飛んでいた。
在学中に各種ジェット戦闘機の飛行ライセンスを取得し、航宙徽章を持つ二人は殆どが航宙士学院卒業生で構成される部隊へと配属されたのだ。
1313「今日も一日、働くぞ」
「解ってるさ、今日も一日墓場で飛んでやる」
航宙士学院を主席で卒業した汐見は、フォスターと共に軍人としての道を進み始めていた。新兵教育を修了し、出された辞令は二人揃ってモハーヴェ宇宙港勤務。近くには飛行機の墓場と呼ばれる場所があるその地では、地球と軌道ステーションを結ぶスペースプレーンが飛んでいた。
在学中に各種ジェット戦闘機の飛行ライセンスを取得し、航宙徽章を持つ二人は殆どが航宙士学院卒業生で構成される部隊へと配属されたのだ。
狭山くん
TRAINING2022-08-16/今日の空閑汐♂デイリーは空閑の再起動編。夢を絶たれて全てを失った気分になっても、夢の為に努力したものは決して消えることはないんですよね。空閑汐♂デイリー【Memories】16 手を伸ばせば後少しで届きそうだった夢が、指先から零れていったあの日から一年が経った。傷跡こそ残ったが、後遺症と言えるような不具合もなく――医者からもう大丈夫だと言われた日に「鉄棒で大回転も出来ますか?」と訊いてみた空閑へ、医者は笑って頷くという太鼓判でもって放免されていた。
「空閑、明日の授業俺の代わりにやってもらって良いか?」
「一年の航空機概論でしたっけ? 良いですよ」
そうして空閑は、古巣でもある国際航空宇宙学院日本校の高等部へと戻り吉嗣のアシスタントとして日銭を得ているのだ。
空閑が軌道ステーションの医療センターから地球へと移る入院先に決めたのは、日本校に併設された医学部附属病院で。そこで空閑を迎えてくれたのが、吉嗣だった。
1286「空閑、明日の授業俺の代わりにやってもらって良いか?」
「一年の航空機概論でしたっけ? 良いですよ」
そうして空閑は、古巣でもある国際航空宇宙学院日本校の高等部へと戻り吉嗣のアシスタントとして日銭を得ているのだ。
空閑が軌道ステーションの医療センターから地球へと移る入院先に決めたのは、日本校に併設された医学部附属病院で。そこで空閑を迎えてくれたのが、吉嗣だった。
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TRAINING2022-08-15/今日の空閑汐♂デイリーは汐見♂の卒業話である。夢を叶えたのにどうにも気持ちが晴れない汐見♂の話。逢えない時間が愛育てる……のさ……ッ!空閑汐♂デイリー【Memories】15 渡されたのは、精巧な銀細工のブローチだった。八年半もの間、この徽章を求めてきたのは嘘ではない。手のひらの上で真新しい光を放つ細い銀の線で構成された楕円形の徽章を見つめ、今この場に居ない男の事を想う。
「ミスターシオミ、受領のサインを」
流石に重要な受領確認は未だに紙で行われるらしい。教員が差し出したバインダーとペンを受け取って、少し考えてから肩口のペン差しに入れていたボールペンを抜き出す。
「良いものを持ってるな」
「これならずっと使えると思って、高校卒業の記念に買ったんですよ」
汐見の言葉に教員は鷹揚に頷き、サラサラと書かれていくサインを見つめていた。それはかつて同じ場所を目指していた愛しい男と揃えで買った白銀色に輝くボールペンだった。
1084「ミスターシオミ、受領のサインを」
流石に重要な受領確認は未だに紙で行われるらしい。教員が差し出したバインダーとペンを受け取って、少し考えてから肩口のペン差しに入れていたボールペンを抜き出す。
「良いものを持ってるな」
「これならずっと使えると思って、高校卒業の記念に買ったんですよ」
汐見の言葉に教員は鷹揚に頷き、サラサラと書かれていくサインを見つめていた。それはかつて同じ場所を目指していた愛しい男と揃えで買った白銀色に輝くボールペンだった。
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TRAINING2022-08-14/空閑汐♂デイリー3日ぶりの更新です!こんな感じの話が多分2週間弱続きます……2週間後には楽しい話になれば……いいよね……(決意)空閑汐♂デイリー【Memories】14「なぁ、ヒロ……じゃない、な」
テキストから顔を上げながら溢された汐見の声に、フォスターは呆れたように息を吐く。航宙士学院の五年生として軌道ステーションにある国際航空宇宙学院のサテライトキャンパスで勉学に励むフォスターは、自習室で隣に座る汐見へ掛ける言葉に迷っていた。
「なぁ汐見」
フォスターの声に視線だけを向ける汐見の瞳は冷め切っていて、その事実に苦々しい気分になる。数ヶ月前までは、その瞳には自信だとか熱だとかそういった感情があった筈なのに。視線だけでフォスターの呼びかけに反応する汐見に、少しだけ逡巡するように言葉を探しながらも空気を震わせていく。
「もう、三ヶ月経つんだ。気晴らしでもした方が、いいんじゃないだろうか」
1090テキストから顔を上げながら溢された汐見の声に、フォスターは呆れたように息を吐く。航宙士学院の五年生として軌道ステーションにある国際航空宇宙学院のサテライトキャンパスで勉学に励むフォスターは、自習室で隣に座る汐見へ掛ける言葉に迷っていた。
「なぁ汐見」
フォスターの声に視線だけを向ける汐見の瞳は冷め切っていて、その事実に苦々しい気分になる。数ヶ月前までは、その瞳には自信だとか熱だとかそういった感情があった筈なのに。視線だけでフォスターの呼びかけに反応する汐見に、少しだけ逡巡するように言葉を探しながらも空気を震わせていく。
「もう、三ヶ月経つんだ。気晴らしでもした方が、いいんじゃないだろうか」
狭山くん
TRAINING2022-08-11/3本連続更新の3本目です!狭山くんは明日から14日の夜明けまでエゾロッカーになるので次の更新は14日になります┏( .-. ┏ ) ┓空閑汐♂デイリー【Memories】13「アマネ、別れよっか」
普段と変わらない柔らかな笑みを浮かべ、柔らかな声で紡がれた彼の言葉は、汐見を打ちのめすには充分すぎるものであった。
軌道ステーションで起こった過激派テロリストによる占拠未遂事件は、空閑と汐見の手によって破綻したが、その代償はあまりにも大きかった。
テロリストの手に握られた拳銃から放たれた銃弾は、空閑の身体を貫き左肩を破壊して。あの日、空閑の傷口を押さえていた手に感じた彼の血潮の熱さと、ぬらりとした感触、そしてむせ返るほどの鉄の匂いは汐見の記憶にこびり付いて離れない。
数日間眠り続けた空閑の隣でこのまま目覚めないのではという不安すら、今こうして言葉を交わす事ができるようになったというのに全く離れることはなくて。
1391普段と変わらない柔らかな笑みを浮かべ、柔らかな声で紡がれた彼の言葉は、汐見を打ちのめすには充分すぎるものであった。
軌道ステーションで起こった過激派テロリストによる占拠未遂事件は、空閑と汐見の手によって破綻したが、その代償はあまりにも大きかった。
テロリストの手に握られた拳銃から放たれた銃弾は、空閑の身体を貫き左肩を破壊して。あの日、空閑の傷口を押さえていた手に感じた彼の血潮の熱さと、ぬらりとした感触、そしてむせ返るほどの鉄の匂いは汐見の記憶にこびり付いて離れない。
数日間眠り続けた空閑の隣でこのまま目覚めないのではという不安すら、今こうして言葉を交わす事ができるようになったというのに全く離れることはなくて。
狭山くん
TRAINING2022-08-11/3本連続更新2本目!2本目!ってテンションの話ではない。空閑汐♂デイリー【Memories】12 安静を命じられたベッドの上で、嫌な考えだけが巡る。医者が言うには後数週間はこの軌道ステーションで過ごし、そこから先は地球の病院で本格的な治療をするらしい。大した娯楽もない医療センターのベッドで日がな一日天井を見つめ続ける空閑は、何度目かもわからないため息を吐き出した。
学院は勝手に退学させられて、それだけはどうしても許せなかった空閑は一方的に家族との縁を切った。地球に帰っても、帰る場所すらない。
「……あれは悪手だったなぁ」
普段の空閑であれば、話半分に聞き流して当面の寝床を確保するくらいはしていただろう。けれど、幼い頃からの夢に手が届く直前で勝手に終止符を打たれてしまった事だけは、どうしても笑って流す事はできなかったのだ。
1974学院は勝手に退学させられて、それだけはどうしても許せなかった空閑は一方的に家族との縁を切った。地球に帰っても、帰る場所すらない。
「……あれは悪手だったなぁ」
普段の空閑であれば、話半分に聞き流して当面の寝床を確保するくらいはしていただろう。けれど、幼い頃からの夢に手が届く直前で勝手に終止符を打たれてしまった事だけは、どうしても笑って流す事はできなかったのだ。
狭山くん
TRAINING2022-08-11/13日まで夜バタバタしてるので今日は3本更新です、の、その1。空閑汐♂デイリー【Memories】11「だから、言ったでしょう。危ないことなんてやめてって!」
絶対安静。軌道ステーションに用意された医務室のベッドから動くなと医者に厳命された空閑は、辟易しながら眉を寄せた。空閑の浮かべた表情に、ベッドの横に立つ女は更に声高に自身の主張だけを叫んで。
軌道ステーションの占拠を目論んだテロリストと一戦やらかし――その結果こうしてベッドから動く事すら許されない身分になってしまった空閑は、その生命だけはこの世に取り留める事に成功していた。
事件があったのは一週間前、空閑の意識が回復したのは四日前、そして眠り続ける空閑の隣に付き添い続けていたという汐見を訓練場へ行くように言い聞かせたのが三日前だった。
不幸な事故だった――けれど、汐見がこうならなくて良かったとも思う。あの場所に行こうと誘ったのは、空閑だったから。
1754絶対安静。軌道ステーションに用意された医務室のベッドから動くなと医者に厳命された空閑は、辟易しながら眉を寄せた。空閑の浮かべた表情に、ベッドの横に立つ女は更に声高に自身の主張だけを叫んで。
軌道ステーションの占拠を目論んだテロリストと一戦やらかし――その結果こうしてベッドから動く事すら許されない身分になってしまった空閑は、その生命だけはこの世に取り留める事に成功していた。
事件があったのは一週間前、空閑の意識が回復したのは四日前、そして眠り続ける空閑の隣に付き添い続けていたという汐見を訓練場へ行くように言い聞かせたのが三日前だった。
不幸な事故だった――けれど、汐見がこうならなくて良かったとも思う。あの場所に行こうと誘ったのは、空閑だったから。
狭山くん
TRAINING2022-08-10/空閑汐♂デイリー、5年目冒頭からして不穏。ここから2週間位はだいたいこんな感じです。空閑汐♂デイリー【Memories】10 どちらが叫んだのか、それともどちらともが叫んだのか。吠えるような男の叫び声が空気を震わせ、盾になろうとした身体は跳ね飛ばされていた。肩には衝撃が走る。
「――ッヒロミ!!」
何発かの銃声が響き、隔壁が閉じる金属音やサイレンが反響していた。その中でも、吠えるように叫ぶ男の声だけは、不思議とクリアに空閑の耳まで届く。
「ヒロミ、大丈夫だ。急所は逸れてる、大丈夫だから」
言葉の間に隙さえあれば大丈夫だと、何度も繰り返し口にしている男の声に彼の体重が掛けられていない方の腕を上げる。利き腕は無事だ。切れ長の瞳からポロリと溢れる雫が、綺麗だなんて。多分今彼に伝えたら怒られてしまうだろう。
けれど、とても綺麗だと思ったんだ。
995「――ッヒロミ!!」
何発かの銃声が響き、隔壁が閉じる金属音やサイレンが反響していた。その中でも、吠えるように叫ぶ男の声だけは、不思議とクリアに空閑の耳まで届く。
「ヒロミ、大丈夫だ。急所は逸れてる、大丈夫だから」
言葉の間に隙さえあれば大丈夫だと、何度も繰り返し口にしている男の声に彼の体重が掛けられていない方の腕を上げる。利き腕は無事だ。切れ長の瞳からポロリと溢れる雫が、綺麗だなんて。多分今彼に伝えたら怒られてしまうだろう。
けれど、とても綺麗だと思ったんだ。
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TRAINING2022-08-09/今日のデイリーはヴィンと篠原(と高師くん)卒業おめでとう回!汐見♂と空閑は5年制なのであと1年!空閑汐♂デイリー【Memories】09 掲げられるグラスの数は四。高師だけが居ないその席でフェルマーは上機嫌だった。
「兎にも角にも、卒業おめでとう」
「ありがと! アマネとヒロミはあと一年だね」
カルアミルクをちびりと飲みながら上機嫌で頷くフェルマーを空閑は不思議そうに見つめて。
「ヴィン、高師と別の会社に行くっていうのに、寂しがらないんだね」
空閑の疑問は尤もだとフェルマーは頷いて「寂しいは寂しいし、今日来なかったのも意地っ張りだなぁって思うけど、ボクらは結局同じ場所を目指してるからね。すぐにまた逢えるでしょう?」と笑う。
高師と篠原はフェルマーが採用された企業の同業他社への入社を決めていた。それでも、同じ業界でこれからも暮らす事が分かっていれば、そこまで寂しさはない。
955「兎にも角にも、卒業おめでとう」
「ありがと! アマネとヒロミはあと一年だね」
カルアミルクをちびりと飲みながら上機嫌で頷くフェルマーを空閑は不思議そうに見つめて。
「ヴィン、高師と別の会社に行くっていうのに、寂しがらないんだね」
空閑の疑問は尤もだとフェルマーは頷いて「寂しいは寂しいし、今日来なかったのも意地っ張りだなぁって思うけど、ボクらは結局同じ場所を目指してるからね。すぐにまた逢えるでしょう?」と笑う。
高師と篠原はフェルマーが採用された企業の同業他社への入社を決めていた。それでも、同じ業界でこれからも暮らす事が分かっていれば、そこまで寂しさはない。
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TRAINING2022-08-08/今日の空閑汐♂デイリーは空閑とフォスター。フォスターは良い奴だよな……私は君の事がだいぶ好きだよ……空閑汐♂デイリー【Memories】08 エンジンが空気を震わせていた。バリバリと空気を引き裂くエンジン音を轟かせ、その機体は空へと舞い上がる。
「お、今日もやってるな」
「やってるねぇ」
教室で座学の復習をしていた空閑とフォスターは窓の外へと視線を向ける。雲を描き空を自在に舞うのは汐見が操縦するジェット練習機で。眩しげに目を細めて見つめる空閑に、フォスターは呆れたようにため息をひとつ零していた。
「それにしてもあいつ、課外で取れるライセンス全部取り終わってるのにまだ乗ってるのか」
五年目の大気圏外実地訓練に進む為に必要なライセンスは授業中の訓練で取れるようなカリキュラムを組んであり、希望者の中から実技成績順に選抜される課外訓練ではその他にもこの場所で取れるライセンスの取得が出来るシステムで。一年次から成績上位をキープし続けている汐見はその課外訓練の全てに参加していたのだ。
1230「お、今日もやってるな」
「やってるねぇ」
教室で座学の復習をしていた空閑とフォスターは窓の外へと視線を向ける。雲を描き空を自在に舞うのは汐見が操縦するジェット練習機で。眩しげに目を細めて見つめる空閑に、フォスターは呆れたようにため息をひとつ零していた。
「それにしてもあいつ、課外で取れるライセンス全部取り終わってるのにまだ乗ってるのか」
五年目の大気圏外実地訓練に進む為に必要なライセンスは授業中の訓練で取れるようなカリキュラムを組んであり、希望者の中から実技成績順に選抜される課外訓練ではその他にもこの場所で取れるライセンスの取得が出来るシステムで。一年次から成績上位をキープし続けている汐見はその課外訓練の全てに参加していたのだ。
狭山くん
TRAINING2022-08-07/これが一昔前の夢小説だったら最後に(確かなものなど、何も無いというのに)ってグラデーション大文字が入る(最悪の演出)空閑汐♂デイリー【Memories】07 長期休みを終えた秋の空は高い。
「天高く馬肥ゆる秋、正に秋高気爽だな」
そう口にして笑う汐見の隣で空閑も釣られて笑みを浮かべていた。三年次を修了し、ようやくこの学院でも四年目の授業が始まる。
「それにしても、この休みも楽しかったね」
「だな」
空閑と汐見は揃って日本には帰らず、同じく帰省をしなかった篠原と共にフェルマーの家で世話になっていた。ドイツ国内だけではなく隣国まで足を伸ばし観光に勤しんだ日々を思い返した空閑は小さく笑う。
「途中で高師が合流したのには笑ったよな」
「意外と付き合いいいんだよね」
空閑達は後二年あるが、フェルマーを含めた他の三人は今年が最終学年だ。就職や卒論等で忙しくなる前に思い出作りをしようというのが今回の観光三昧となった理由の最たるもので。それを知ってか知らずか、丁度旅程の最後に入れていたオクトーバーフェスには早めに帰省を切り上げた高師も合流していたのだ。
1193「天高く馬肥ゆる秋、正に秋高気爽だな」
そう口にして笑う汐見の隣で空閑も釣られて笑みを浮かべていた。三年次を修了し、ようやくこの学院でも四年目の授業が始まる。
「それにしても、この休みも楽しかったね」
「だな」
空閑と汐見は揃って日本には帰らず、同じく帰省をしなかった篠原と共にフェルマーの家で世話になっていた。ドイツ国内だけではなく隣国まで足を伸ばし観光に勤しんだ日々を思い返した空閑は小さく笑う。
「途中で高師が合流したのには笑ったよな」
「意外と付き合いいいんだよね」
空閑達は後二年あるが、フェルマーを含めた他の三人は今年が最終学年だ。就職や卒論等で忙しくなる前に思い出作りをしようというのが今回の観光三昧となった理由の最たるもので。それを知ってか知らずか、丁度旅程の最後に入れていたオクトーバーフェスには早めに帰省を切り上げた高師も合流していたのだ。
はるもん🌸
MOURNINGイタズラ癖が一生治らない魏嬰。どこまで本気なのか「あついあつい」とパタパタと手で顔をあおぐ。
「魏嬰、整えなさい」
少しでも風通しがよくなるように胸をはだけさせていた。
それを藍忘機が咎める。ヘーイと魏無羨は適当に返事をした。
服を整えたのを確認し、藍忘機は本の続きに目を落とす。
涼しそうな彼がうらめしく、ちょっとイタズラしてやろうと魏無羨は考えた。
「あー喉がかわいたなぁ」
「水でいいか」
パタンと読んでいた本を閉じ、藍忘機は立ち上がる。
魏無羨も同じように立ち上がった。
「いや、水じゃだめだな。もっとこう…濃いやつがいい」
「果汁を持ってこよう」
「いーや駄目だ」
「何が良いんだ」
「これが…いいカナ」
魏無羨は膝立ちになり、ちょうど前にある藍忘機のソレを指でつついた。ようやく揶揄われている事に気づき、藍忘機は「君!」と声を上げる。
544「魏嬰、整えなさい」
少しでも風通しがよくなるように胸をはだけさせていた。
それを藍忘機が咎める。ヘーイと魏無羨は適当に返事をした。
服を整えたのを確認し、藍忘機は本の続きに目を落とす。
涼しそうな彼がうらめしく、ちょっとイタズラしてやろうと魏無羨は考えた。
「あー喉がかわいたなぁ」
「水でいいか」
パタンと読んでいた本を閉じ、藍忘機は立ち上がる。
魏無羨も同じように立ち上がった。
「いや、水じゃだめだな。もっとこう…濃いやつがいい」
「果汁を持ってこよう」
「いーや駄目だ」
「何が良いんだ」
「これが…いいカナ」
魏無羨は膝立ちになり、ちょうど前にある藍忘機のソレを指でつついた。ようやく揶揄われている事に気づき、藍忘機は「君!」と声を上げる。
はるもん🌸
MOURNING忘羨がセ・・・ッしてます。大人の方だけどうぞご覧くださいませ。実況魏嬰午前から、しとしとと雨が静かに降りだしていた。
濃厚な空気をはらんだ雲深不知処には多数の弟子がいるが、天気の機嫌が思わしくない時は人の通りは少なくなる。
そんな事で、きっと誰もこの近くを通らないと見越した魏無羨は彼を誘惑した。思惑は成功し、今まさに上を向き、立派に反りあがったソレを魏無羨は受け入れようとしていたところである。
「こんなところで、そんなところを固くさせちゃうなんて、お前もなかなかやるなぁ?」
「君のせい」
まさにそうなのだ。しばらく藍忘機は魏無羨が肌を露出させ、遊び始めた間出来うるだけ見ないよう努めて己を律していた。そうしていると、アンアンと一人であらぬところに指を入れ遊び始めてしまった。これを放置する事など、できなかったのである。
2284濃厚な空気をはらんだ雲深不知処には多数の弟子がいるが、天気の機嫌が思わしくない時は人の通りは少なくなる。
そんな事で、きっと誰もこの近くを通らないと見越した魏無羨は彼を誘惑した。思惑は成功し、今まさに上を向き、立派に反りあがったソレを魏無羨は受け入れようとしていたところである。
「こんなところで、そんなところを固くさせちゃうなんて、お前もなかなかやるなぁ?」
「君のせい」
まさにそうなのだ。しばらく藍忘機は魏無羨が肌を露出させ、遊び始めた間出来うるだけ見ないよう努めて己を律していた。そうしていると、アンアンと一人であらぬところに指を入れ遊び始めてしまった。これを放置する事など、できなかったのである。
狭山くん
TRAINING2022-08-06/空閑汐♂とフォスターで酒を飲む話。多分他の同期も近くでワイワイやってるんだろうけども。空閑汐♂デイリー【Memories】06「そういえば、お前らっていつから付き合ってんだ?」
「今更それ聞くのか」
すっかり常連になってしまった敷地内で営業をしているダイニングバーで、そう口火を切ったのはフォスターであった。生真面目な性質がどこか高師を思わせる――しかし意外とウィットに富んだところもあるフォスターの言葉に、汐見は呆れたような声色で首を傾げていた。
そんな汐見の隣でジンジャーエールを喉に流していた――同期達からビールを奪われ禁酒を発令されてしまった空閑は「高校の頃からだよ、二年の時だっけ?」と口にする。
「じゃぁ、もう五年の付き合いになるのか」
指折り数えて頷くフォスターに「そもそもヒロミとは一年の時から寮も同室だし、ここ入学するまで半年インターバルあったからな。実質七年くらい一緒にいるぞ」と汐見は注釈のように言葉を紡いだ。
1597「今更それ聞くのか」
すっかり常連になってしまった敷地内で営業をしているダイニングバーで、そう口火を切ったのはフォスターであった。生真面目な性質がどこか高師を思わせる――しかし意外とウィットに富んだところもあるフォスターの言葉に、汐見は呆れたような声色で首を傾げていた。
そんな汐見の隣でジンジャーエールを喉に流していた――同期達からビールを奪われ禁酒を発令されてしまった空閑は「高校の頃からだよ、二年の時だっけ?」と口にする。
「じゃぁ、もう五年の付き合いになるのか」
指折り数えて頷くフォスターに「そもそもヒロミとは一年の時から寮も同室だし、ここ入学するまで半年インターバルあったからな。実質七年くらい一緒にいるぞ」と汐見は注釈のように言葉を紡いだ。
狭山くん
TRAINING2022-08-04/そうだ!ドイツは飲酒可能年齢早いんだった!!!!!って突如気付いてやっと酒飲み話が解禁されました!酒タバコが手癖すぎる。空閑汐♂デイリー【Memories】04 カチンと軽い音を立ててガラスが触れ合う。そうして各々が己のグラスの中身を呷れば、そういえば。とフェルマーが声を上げた。
「五人でお酒飲むってはじめてじゃない?」
「そういやそうだな、俺らは同期と飲みに行く事もあるけど五人揃うのは初めてか」
ジョッキに満たされたビールを一息に半分飲み干した汐見が、フェルマーの言葉に同意する。
「ていうか、汐見お前相変わらず強いのな」
一気に半分に減らされたビールを見ながらちびりとジョッキに口を付ける篠原に指摘され「そうか?」と首を傾げれば、篠原は「俺のジョッキとの差を自覚しろ」と揶揄う調子で言葉を重ねた。
「あれっ? 浩介はアマネと飲んだことあるの?」
「あぁ、ホラ、ドイツはビールだと十六で解禁だろ。一年の冬季休暇でヴィンの所に泊まった時に三人でな」
1151「五人でお酒飲むってはじめてじゃない?」
「そういやそうだな、俺らは同期と飲みに行く事もあるけど五人揃うのは初めてか」
ジョッキに満たされたビールを一息に半分飲み干した汐見が、フェルマーの言葉に同意する。
「ていうか、汐見お前相変わらず強いのな」
一気に半分に減らされたビールを見ながらちびりとジョッキに口を付ける篠原に指摘され「そうか?」と首を傾げれば、篠原は「俺のジョッキとの差を自覚しろ」と揶揄う調子で言葉を重ねた。
「あれっ? 浩介はアマネと飲んだことあるの?」
「あぁ、ホラ、ドイツはビールだと十六で解禁だろ。一年の冬季休暇でヴィンの所に泊まった時に三人でな」
狭山くん
TRAINING2022-08-03/空閑汐♂デイリー8月分3本目!!学院2年目の空閑汐♂、以前書いたハッピーエンド空閑汐♂+シェルツちゃんネタを入れとかねばならぬと思った。
空閑汐♂デイリー【Memories】03「アマネ! この間女の子に熱烈な告白されたんだって?」
久々にご飯でも、と顔を合わせた瞬間に楽しそうにそう口にするのはフェルマーで。そんなフェルマーの第一声に汐見は肩を竦める。
「よく知ってるな、女の子って言っても本当に小さな子供だったからな。すぐに忘れるだろ」
「あれは本気の目だったよ、俺あの後ヴィンに泣きついたもん」
汐見の肩口から不満げに声を上げるのは空閑で。ズシリと体重を掛けられた汐見は、その重量には文句を言わず「出所はお前かよ」と呆れたように深いため息を一つ零した。
「空閑は相変わらずだな、クラスでもこんな感じなの?」
「入学したての頃にヒロミが牽制しまくったせいで、同期達から生暖かく見守られるようになった」
1079久々にご飯でも、と顔を合わせた瞬間に楽しそうにそう口にするのはフェルマーで。そんなフェルマーの第一声に汐見は肩を竦める。
「よく知ってるな、女の子って言っても本当に小さな子供だったからな。すぐに忘れるだろ」
「あれは本気の目だったよ、俺あの後ヴィンに泣きついたもん」
汐見の肩口から不満げに声を上げるのは空閑で。ズシリと体重を掛けられた汐見は、その重量には文句を言わず「出所はお前かよ」と呆れたように深いため息を一つ零した。
「空閑は相変わらずだな、クラスでもこんな感じなの?」
「入学したての頃にヒロミが牽制しまくったせいで、同期達から生暖かく見守られるようになった」
狭山くん
TRAINING2022-08-02/今日の空閑汐♂も和気あいあい。多分今日出てる4人が学院内メインでつるんでいくんだと思います(感想文)空閑汐♂デイリー【Memories】02 冬入学と呼ばれる秋口から始められた授業も、ようやく一年目の折り返しと共に春が訪れる。二十人しか居ない同期達の中にも連帯感が生まれ始めた頃、学生達の端末に配信された順位表に声を上げたのはリュカ・シャルパンティエで。
「うわ、シオお前また実技一位かよ」
げぇ、というわざとらしい声と共に投げられた言葉に「上位にならないと課外の飛行訓練参加できないだろ」と汐見は眉を寄せる。
「課外飛行したいってだけで上位掻っ攫ってくのヤバいだろ」
「アマネだからねぇ」
汐見とシャルパンティエのやりとりにのんびりと口を挟むのは空閑、そんな空閑に続くようにフォスターも頷いた。
「大胆かつ繊細な操縦はいつ見ても惚れ惚れするぞ、そろそろジェット練習機に移行するんじゃないか? 教官が扱き甲斐があると言っていたな」
938「うわ、シオお前また実技一位かよ」
げぇ、というわざとらしい声と共に投げられた言葉に「上位にならないと課外の飛行訓練参加できないだろ」と汐見は眉を寄せる。
「課外飛行したいってだけで上位掻っ攫ってくのヤバいだろ」
「アマネだからねぇ」
汐見とシャルパンティエのやりとりにのんびりと口を挟むのは空閑、そんな空閑に続くようにフォスターも頷いた。
「大胆かつ繊細な操縦はいつ見ても惚れ惚れするぞ、そろそろジェット練習機に移行するんじゃないか? 教官が扱き甲斐があると言っていたな」
狭山くん
TRAINING2022-08-01/空閑汐♂デイリーも3ヶ月目に突入!ここからは怒涛のハッピーエンドまで駆け足です。ハッピーエンドになる筈なんだ。空閑汐♂デイリー【Memories】01 視界に現れたスラリとした細い体躯を持つ青年に、エリアス・フォスターは眉を寄せる。線が細いアジア人と思しき青年は、彼よりも体格の良い青年と連れ立ってこの場所にやってきた。
航宙士学院の入学生に指定されたこの教室に居るという事は、厳しい選抜を潜り抜けたフォスターの同期である筈だ。しかしフォスターから見た細身の青年の姿は、とてもではないがストレートで入学していたフォスターと同い年かそれよりも年上だとは思えなかった。
「なぁ君……たち? 高等部と間違えてないか?」
隣接する本校に設置された高等部への留学生が迷ってしまったのだろうか、そして彼らは英語を聞き取れるのだろうかと思いながらも恐る恐る声を掛けたフォスターに細身の青年は呆れたように眉を寄せ、その隣の青年は面白そうにカラカラと笑う。
1320航宙士学院の入学生に指定されたこの教室に居るという事は、厳しい選抜を潜り抜けたフォスターの同期である筈だ。しかしフォスターから見た細身の青年の姿は、とてもではないがストレートで入学していたフォスターと同い年かそれよりも年上だとは思えなかった。
「なぁ君……たち? 高等部と間違えてないか?」
隣接する本校に設置された高等部への留学生が迷ってしまったのだろうか、そして彼らは英語を聞き取れるのだろうかと思いながらも恐る恐る声を掛けたフォスターに細身の青年は呆れたように眉を寄せ、その隣の青年は面白そうにカラカラと笑う。