はねた
TRAININGファ環とオル相前提、ファットさんとあいざわ先生きみは太陽 花の下で子どもが眠っている。くるりとまるまって、ちいさな頭をかたわらのひとの膝にのせている。
尖った耳、黒髪がさらさらと風になびく。ファットガムはベンチに両腕をまわし、こどもの眠りを妨げないようにしていた。
足音に気がついたか、その目がこちらに向けられる。その姿はずいぶんと痩せて、戦の激しさをものがたっていた。
「よお」
短いひとことにも西の風情がある。そういえば数日前、会議のために方々からヒーローが集まるという話を聞いていた。返事のかわりに相澤は片手をあげる。ベンチに歩み寄れば、金属の義足がかしゃりと鈍い音を立てた。
昼の陽射しがきらきらと、ファットガムの髪を金色に透かす。秋海棠の花が背後にあって、ベンチのなかばほどを覆っていた。戦況は厳しく、いつであれ予断を許さない、そのなかにあって、ファットガムと眠る子どもの姿はまるで一幅の絵のようだと、そう思ったけれどもそれを口にするのはやめておいた。
2670尖った耳、黒髪がさらさらと風になびく。ファットガムはベンチに両腕をまわし、こどもの眠りを妨げないようにしていた。
足音に気がついたか、その目がこちらに向けられる。その姿はずいぶんと痩せて、戦の激しさをものがたっていた。
「よお」
短いひとことにも西の風情がある。そういえば数日前、会議のために方々からヒーローが集まるという話を聞いていた。返事のかわりに相澤は片手をあげる。ベンチに歩み寄れば、金属の義足がかしゃりと鈍い音を立てた。
昼の陽射しがきらきらと、ファットガムの髪を金色に透かす。秋海棠の花が背後にあって、ベンチのなかばほどを覆っていた。戦況は厳しく、いつであれ予断を許さない、そのなかにあって、ファットガムと眠る子どもの姿はまるで一幅の絵のようだと、そう思ったけれどもそれを口にするのはやめておいた。
かもちゃ
PROGRESS進捗なかなか出せなくてすみません…!最近のやつはぐちゃぐちゃで時間かかりそうだったので、下描き段階で撮ったスクショ掲載します。
プロヒーローも有名人…プライベートで外出する時に変装する人絶対いるよね…!ということで「髪型、服装変えてみた」に挑戦。飯田君は色々四角く描けば近付けると思っている(甘い考え) 4
はねた
TRAINING轟夫妻を書きました。窓絵 縁側に花びらが散る。
曇り空にうっすらと陽がにじんで、あたりの景色をぼんやりとさせる。
庭の木々からこぼれた赤い花弁も、広縁に腰かけたひとの背も、だからだろうか、どこかうそごとめいていた。
わたしは縁を隔てて座敷に膝をついている。
風はなくて、あたりはしんとしていた。
陽射しは広縁のなかほどでとぎれる。敷居からすこしさきにある薄い光と、その境をかたちづくる影とをわたしはみつめる。
「そもそも炎と氷がくっつけば最強なんて小学生みたいなこと考えるの、あなたつくづくばかよね」
縁側にいるひとはふりかえらないまま、その背がわずかに震えた。
「わたし言えばよかった」
応えはないから、わたしは好きなことを口にする。
2465曇り空にうっすらと陽がにじんで、あたりの景色をぼんやりとさせる。
庭の木々からこぼれた赤い花弁も、広縁に腰かけたひとの背も、だからだろうか、どこかうそごとめいていた。
わたしは縁を隔てて座敷に膝をついている。
風はなくて、あたりはしんとしていた。
陽射しは広縁のなかほどでとぎれる。敷居からすこしさきにある薄い光と、その境をかたちづくる影とをわたしはみつめる。
「そもそも炎と氷がくっつけば最強なんて小学生みたいなこと考えるの、あなたつくづくばかよね」
縁側にいるひとはふりかえらないまま、その背がわずかに震えた。
「わたし言えばよかった」
応えはないから、わたしは好きなことを口にする。
はねた
TRAININGA初と二初ってこんなかんじかなという印象です。gift どうぞ、と幼い声がした。
ぞ、のあたりが舌足らずに、ちいさなこぶしがさしだされる。閉じきらない短い指のあいだにどんぐりがひとつのぞいていた。
いいものだねと、もうひとり、先のものよりいくらか年嵩の声がした。
ちいさな指が、それよりもすこしおおきな手にどんぐりを落とす。
どうぞとくりかえされた、声にはどこか誇らしげな響きがあった。
少年のてのひらに載せられたどんぐりはずいぶんとちいさい。茶色のおもてがなめらかに、うっすらと光っていた。
「なかなかいいものだね。どこで見つけたのかな。もうすこし頑張れば、もっとたくさん拾えたかもしれないね」
少年の言葉に、こどもはポケットからもうひとつどんぐりをとりだす。
1405ぞ、のあたりが舌足らずに、ちいさなこぶしがさしだされる。閉じきらない短い指のあいだにどんぐりがひとつのぞいていた。
いいものだねと、もうひとり、先のものよりいくらか年嵩の声がした。
ちいさな指が、それよりもすこしおおきな手にどんぐりを落とす。
どうぞとくりかえされた、声にはどこか誇らしげな響きがあった。
少年のてのひらに載せられたどんぐりはずいぶんとちいさい。茶色のおもてがなめらかに、うっすらと光っていた。
「なかなかいいものだね。どこで見つけたのかな。もうすこし頑張れば、もっとたくさん拾えたかもしれないね」
少年の言葉に、こどもはポケットからもうひとつどんぐりをとりだす。
はねた
TRAININGファ環+オル相前提のようなそうでないような、ファットさんと相澤先生の話を書きました。相澤先生の足まわりが苦手な方はご注意下さい。
一景 陽は黒衣に馴染まないから、そこばかりが影となる。
相澤はベンチに腰かけている。木造りのそれはすこしささくれていて、その隙間を蟻が這ってゆく。
組んだ足のさき、金属がてらりと鈍く輝いた。靴はベンチの下にあって、脱ぎ捨てたまま転がっている。
義足の継ぎ目には熱が溜まり、うしなったはずの指先がきりきりと痛む。膝のあたりで痛覚をとどめることは最近になって覚えた。頭はしんとしたまま、どこかが痺れたようになる。
金属の足をベンチの上でぶらぶらとさせる。きょうは盛大だなとひとごとのように眺めている、と、どこかで遠く鐘の音がした。戦のさなかにありながら、そうしたところばかり学問の場らしさをとどめているのがおかしい。いまにも生徒たちがあちらこちらから現れてきそうな、けれどあたりは白日のうちに静かだった。
2212相澤はベンチに腰かけている。木造りのそれはすこしささくれていて、その隙間を蟻が這ってゆく。
組んだ足のさき、金属がてらりと鈍く輝いた。靴はベンチの下にあって、脱ぎ捨てたまま転がっている。
義足の継ぎ目には熱が溜まり、うしなったはずの指先がきりきりと痛む。膝のあたりで痛覚をとどめることは最近になって覚えた。頭はしんとしたまま、どこかが痺れたようになる。
金属の足をベンチの上でぶらぶらとさせる。きょうは盛大だなとひとごとのように眺めている、と、どこかで遠く鐘の音がした。戦のさなかにありながら、そうしたところばかり学問の場らしさをとどめているのがおかしい。いまにも生徒たちがあちらこちらから現れてきそうな、けれどあたりは白日のうちに静かだった。
はねた
TRAININGトガちゃんのことが気になる環さん、とファットさん太陽と花 少女の姿を見たのは一瞬で、そのときなにが起きていたのかも実際よくはわかっていなかった。
あとから事態の顛末とその個性を聞いて、ああそうなのかとおもった。
そうなのかとそれで済ませたはずの、けれどしばらく経っても少女の姿は頭のなかから消えることなく、むしろどんどんとふくらんでいくばかりでそんな自分に環はとまどった。
とまどいながらも頭の隅で、なんとはなしに納得もしていた。
対象の血を吸うことでそのものになりきる個性をもつ少女はヴィランとなり、対象を食べそのものの力を得る自分はヒーローとなった。相手の命を奪っているのはどちらなのだろうと、おもえば善悪がよくわからなくなった。
わからないままにふらふらとしていたところ、ファットガムに食事に誘われた。
3046あとから事態の顛末とその個性を聞いて、ああそうなのかとおもった。
そうなのかとそれで済ませたはずの、けれどしばらく経っても少女の姿は頭のなかから消えることなく、むしろどんどんとふくらんでいくばかりでそんな自分に環はとまどった。
とまどいながらも頭の隅で、なんとはなしに納得もしていた。
対象の血を吸うことでそのものになりきる個性をもつ少女はヴィランとなり、対象を食べそのものの力を得る自分はヒーローとなった。相手の命を奪っているのはどちらなのだろうと、おもえば善悪がよくわからなくなった。
わからないままにふらふらとしていたところ、ファットガムに食事に誘われた。
はねた
TRAININGファ環。まえの続きです。
ファットさんの打ち返し編。
誰がために鐘は鳴る 続き きんこんかんとチャイムが鳴る。
四限目の終わりを告げる鐘とともに、生徒たちがわれがちに食堂へと駆けてゆく。ヌーの草原大移動もかくやという勢いに、ところどころ流されつつも環は屋上へと向かった。
昇降口の扉を開けたとたん、まっしろい陽の光が目を刺した。ううとうなりつつ、環はしばしばと瞬きをする。
あたりはがらんとしていた。
空は晴れわたっていて、真っ青ななかに鳥の影がぽつんと落ちている。陽は中天にあって、コンクリートの地面のうえ昇降口の影がくっきりと刻まれていた。
影のなかにはミリオがいた。その隣にはねじれがいて、こちらを認めるなりやっほーとかわいらしく手をふってくれる。ねじれのスカートの上にも、地面に敷いたピンク色のハンカチの上にも菓子パンがいくつも置かれている。
5460四限目の終わりを告げる鐘とともに、生徒たちがわれがちに食堂へと駆けてゆく。ヌーの草原大移動もかくやという勢いに、ところどころ流されつつも環は屋上へと向かった。
昇降口の扉を開けたとたん、まっしろい陽の光が目を刺した。ううとうなりつつ、環はしばしばと瞬きをする。
あたりはがらんとしていた。
空は晴れわたっていて、真っ青ななかに鳥の影がぽつんと落ちている。陽は中天にあって、コンクリートの地面のうえ昇降口の影がくっきりと刻まれていた。
影のなかにはミリオがいた。その隣にはねじれがいて、こちらを認めるなりやっほーとかわいらしく手をふってくれる。ねじれのスカートの上にも、地面に敷いたピンク色のハンカチの上にも菓子パンがいくつも置かれている。
はねた
TRAININGファットさんと環さんが大阪でおでんを食べにいく話。環さんの初恋自覚編。
ファットさんの打ち返し編はまた今度。
誰がために鐘は鳴る たこ、なす、ひろうす、ああやっぱりコロにしといて。
生中ひとつ、あとお湯割り、えー、麩ぅあれへんの。
馴染みのないイントネーションとあちらこちらから巻き起こる賑やかな笑い声に、なんとはなし肩身が狭くなって環はおひやのグラスを抱えた。
おでん屋の一角だった。調理場を囲んで凹形になったカウンターの、入口のあたりにいま環はいる。隣にはファットガムがいて、もぐもぐと蒟蒻をほおばっている。
高架下にある店内は昼だというのにぼんやりと暗い。十人も入れば満杯になるだろう店内はカウンターと壁との距離が近く、ひとびとは先客のうしろを横歩きして席に着く。
水曜日の午後3時だった。サラリーマン風の男がふたり黙々と大根を食らう横で濃い化粧の老女がビールの大ジョッキを掲げ、さらにその向こうではちいさい女の子をまんなかにした家族連れがにこやかに箸を進めている。
4696生中ひとつ、あとお湯割り、えー、麩ぅあれへんの。
馴染みのないイントネーションとあちらこちらから巻き起こる賑やかな笑い声に、なんとはなし肩身が狭くなって環はおひやのグラスを抱えた。
おでん屋の一角だった。調理場を囲んで凹形になったカウンターの、入口のあたりにいま環はいる。隣にはファットガムがいて、もぐもぐと蒟蒻をほおばっている。
高架下にある店内は昼だというのにぼんやりと暗い。十人も入れば満杯になるだろう店内はカウンターと壁との距離が近く、ひとびとは先客のうしろを横歩きして席に着く。
水曜日の午後3時だった。サラリーマン風の男がふたり黙々と大根を食らう横で濃い化粧の老女がビールの大ジョッキを掲げ、さらにその向こうではちいさい女の子をまんなかにした家族連れがにこやかに箸を進めている。
はねた
TRAININGリハビリをする相澤先生と心配するオールマイトを書きました。恋と熱 外は暗い。
ガラス窓に映るのは自分の姿、その向こうに木々の輪郭がうっすらと浮かぶ。昼ともなれば庭の景色が患者の目を楽しませる、そこはいま闇に塗りこめられていた。
あまい人工的な匂いがあたりには満ちている。リハビリ器具や薬剤、床のワックスがいりまじった、そうしてどこかに饐えたひとの熱がある。
掃き清められたフローリングの床に、蛍光灯のあかりがまるく滲んでいた。
平行棒はリハビリテーションルームの隅にあった。
オレンジ色に塗られた棒をつたい、相澤はゆっくりと歩く。静かなあたりに義足の金具と床の触れ合うかしゃかしゃという音がする。
病衣の裾が足にまとわりつく。皮膚と金属の境目がどこなのか、痛みと薬のせいかいまだによくわからない。右足を踏みこめば、喉元に圧迫感のようなものがせりあがる。
2424ガラス窓に映るのは自分の姿、その向こうに木々の輪郭がうっすらと浮かぶ。昼ともなれば庭の景色が患者の目を楽しませる、そこはいま闇に塗りこめられていた。
あまい人工的な匂いがあたりには満ちている。リハビリ器具や薬剤、床のワックスがいりまじった、そうしてどこかに饐えたひとの熱がある。
掃き清められたフローリングの床に、蛍光灯のあかりがまるく滲んでいた。
平行棒はリハビリテーションルームの隅にあった。
オレンジ色に塗られた棒をつたい、相澤はゆっくりと歩く。静かなあたりに義足の金具と床の触れ合うかしゃかしゃという音がする。
病衣の裾が足にまとわりつく。皮膚と金属の境目がどこなのか、痛みと薬のせいかいまだによくわからない。右足を踏みこめば、喉元に圧迫感のようなものがせりあがる。
まったりと
DONE実はホの気持ち筒抜けな両片想いでしたーな炎ホ■世界観gdgdのなんちゃって学パロ
■学生ヒーローあり
■なんでも食べられる方向け
※方言
「ずーか(ずぅか)」=ずるか=ずるい 5887
はねた
TRAINING両片思いからのオル相を書きました。はつ恋の 風が吹いて、空は青い。
なかば開いた窓から夏の匂いが忍びこむ。校舎に沿い生えた木々が、陽を透かして床に薄い光を溜める。
相澤は窓辺に背を預けている。
仮眠室でのことだった。雑然とした室内、中央に据えられたソファにはいま男がひとり腰かけている。ときおりずずとコーヒーを啜る音がした。おなじインスタントコーヒーでもナンバーワンヒーローが飲んでると様になるもんだと、それは口にしないで相澤もマグカップをかたむける。
テーブルの上には何通も、色とりどりの手紙が置かれている。一番上にある菫色の封筒の、筆跡が綺麗だなとそんなことをとりとめなく思った。ナンバーワンヒーローへのファンレターなら気合も入ろうというものかと、おそらくは年齢も住むところもそれぞれだろう差出人たちのことを考えた。
3968なかば開いた窓から夏の匂いが忍びこむ。校舎に沿い生えた木々が、陽を透かして床に薄い光を溜める。
相澤は窓辺に背を預けている。
仮眠室でのことだった。雑然とした室内、中央に据えられたソファにはいま男がひとり腰かけている。ときおりずずとコーヒーを啜る音がした。おなじインスタントコーヒーでもナンバーワンヒーローが飲んでると様になるもんだと、それは口にしないで相澤もマグカップをかたむける。
テーブルの上には何通も、色とりどりの手紙が置かれている。一番上にある菫色の封筒の、筆跡が綺麗だなとそんなことをとりとめなく思った。ナンバーワンヒーローへのファンレターなら気合も入ろうというものかと、おそらくは年齢も住むところもそれぞれだろう差出人たちのことを考えた。
はねた
TRAININGデクくんとお母さんのことがわりとずっと気になってますという妄想です。デクくんと勝ちゃん、おさななじみは強いですね。
きみに読む物語 こどもの声がする。
覚えのある少年の、夢うつつでオールマイトはそれを聞く。
「お母さんが缶詰とかいろいろ送ってくれたんだ」
ハァと気のない返事もまた、知った少年のものだった。
休憩室のソファにオールマイトは座っている。
すこし休むだけのつもりがどうやら眠ってしまっていたらしい、気づけばかたわらには少年がふたりいて、手持ち無沙汰げに雑談をしていた。
OFAの継承者とその幼なじみの少年だった。
ふたりはテーブルをはさんで向かいあっている。爆豪がこちらの前に、緑色の頭はとなりにあって視界の端をちらちらとする。
現状や今後の課題を確認するためにふたりを呼びだしたのは自分だったなと、まださめやらぬ頭で考えた。
1833覚えのある少年の、夢うつつでオールマイトはそれを聞く。
「お母さんが缶詰とかいろいろ送ってくれたんだ」
ハァと気のない返事もまた、知った少年のものだった。
休憩室のソファにオールマイトは座っている。
すこし休むだけのつもりがどうやら眠ってしまっていたらしい、気づけばかたわらには少年がふたりいて、手持ち無沙汰げに雑談をしていた。
OFAの継承者とその幼なじみの少年だった。
ふたりはテーブルをはさんで向かいあっている。爆豪がこちらの前に、緑色の頭はとなりにあって視界の端をちらちらとする。
現状や今後の課題を確認するためにふたりを呼びだしたのは自分だったなと、まださめやらぬ頭で考えた。
はねた
TRAININGhrak初心者、勝デクのちいさいころが気になってたまらないという妄想をしたためました。もしかしたらの物語「こないだねえ、相澤先生が廊下で通りすがりにね、たぶんすごく眠かったみたいでね、だっていつもよりすごい目充血してて、だからだとおもうんだけど私のなまえ混ぜちゃって『おちゃらか』って呼んだの。これは乗っとかないととおもってね、『ホイ!』て返事しました」
「それがたまたまそのとき隣にいたエリちゃんのツボに入ったらしく、最近どこでもかしこでもいきなりその真似をするらしい。ほうっておくとひとりでずっと、おちゃらか! ホイ! と相澤先生と麗日さんの口調を真似しては得意げにしているとミリオ先輩が言っていた」
「無限黒歴史再放送スピーカー…それで最近相澤先生なんだかぐったりしてるんだね……」
グループワークの最中だった。国語の授業で百人一首の歌のひとつを選んで作者や来歴を調べるというもので、くじびきの班決めで麗日さんと飯田くんと僕という組になって、それでいまこうして机をくっつけてノートを広げて勉強を、しているつもりがなんとなく雑談にシフトしてしまっている。
2145「それがたまたまそのとき隣にいたエリちゃんのツボに入ったらしく、最近どこでもかしこでもいきなりその真似をするらしい。ほうっておくとひとりでずっと、おちゃらか! ホイ! と相澤先生と麗日さんの口調を真似しては得意げにしているとミリオ先輩が言っていた」
「無限黒歴史再放送スピーカー…それで最近相澤先生なんだかぐったりしてるんだね……」
グループワークの最中だった。国語の授業で百人一首の歌のひとつを選んで作者や来歴を調べるというもので、くじびきの班決めで麗日さんと飯田くんと僕という組になって、それでいまこうして机をくっつけてノートを広げて勉強を、しているつもりがなんとなく雑談にシフトしてしまっている。
はねた
TRAININGOFA初代と二代が気になります。デクくんはいい子ですね。ever 石くれの下で与一は眠っている。
横向きにまるまった姿がまるで胎児のようだと、そんなことを考えた自分にちいさく舌打ちする。
コンクリートの床よりもずっと白い、その横顔をしばらく眺めた。
伸びたきりの髪もシャツの袖からのぞく痩せた手首も、記憶にあるものと寸分変わらない。
細いその肩に、与一は世界のはじまりを担ったままいつまでもおろさずにいる。
伏せられた睫毛がかすかに震えた。
のばしかけた手を、けれどもそのままおろす。拳を握りこめば爪が刺さったかちりりと痛んだ。生きてもいないのにおかしなことだとひとごとのように感心した。
灯もないのに部屋はあかるい。三方の壁はほぼ朽ちているというのに、ただ一面ばかり、重厚な鉄扉がはめこまれている。
2998横向きにまるまった姿がまるで胎児のようだと、そんなことを考えた自分にちいさく舌打ちする。
コンクリートの床よりもずっと白い、その横顔をしばらく眺めた。
伸びたきりの髪もシャツの袖からのぞく痩せた手首も、記憶にあるものと寸分変わらない。
細いその肩に、与一は世界のはじまりを担ったままいつまでもおろさずにいる。
伏せられた睫毛がかすかに震えた。
のばしかけた手を、けれどもそのままおろす。拳を握りこめば爪が刺さったかちりりと痛んだ。生きてもいないのにおかしなことだとひとごとのように感心した。
灯もないのに部屋はあかるい。三方の壁はほぼ朽ちているというのに、ただ一面ばかり、重厚な鉄扉がはめこまれている。
はねた
DOODLEhrakを読んで、OFA初代と2代が気になるようになりました、という感想です。花の人 白い壁はところどころ割れて瓦礫となっている。
がらんとした部屋には窓もない。壁の一面にものものしい鉄扉があるきりの、室内には豪勢な椅子がやっつ並んでいた。玉座とでもいうつもりか、いっそ舞台じみたその光景をぼんやりと眺めていると、ふと肩のうしろあたりにあたたかいものが触れた。
指をとられて、握りかえさずにいると意趣返しのつもりか軽く手の甲をつねられる。
生きているはずもないのに、おたがいまだひとのふりをしている。面倒な性分だと頭の片隅でちらりとおもった。
ぐるりとめぐらされた玉座はどれも空っぽだった。それぞれの主たちは、いつか九つめの座をになうだろう少年の退去とともにどこかへと姿を消していた。
「俺は出してやっただろうが」
1501がらんとした部屋には窓もない。壁の一面にものものしい鉄扉があるきりの、室内には豪勢な椅子がやっつ並んでいた。玉座とでもいうつもりか、いっそ舞台じみたその光景をぼんやりと眺めていると、ふと肩のうしろあたりにあたたかいものが触れた。
指をとられて、握りかえさずにいると意趣返しのつもりか軽く手の甲をつねられる。
生きているはずもないのに、おたがいまだひとのふりをしている。面倒な性分だと頭の片隅でちらりとおもった。
ぐるりとめぐらされた玉座はどれも空っぽだった。それぞれの主たちは、いつか九つめの座をになうだろう少年の退去とともにどこかへと姿を消していた。
「俺は出してやっただろうが」
はねた
DONETLでお見かけするオル相を書きました。うららかさんがすきです。
きみはいいこ「先生、わたしね」
少女の上履きのかかとがとんとんと廊下をはねる。ときおり少女のからだごとふわりと浮きあがって、それからゆっくりと着地する。
「なんもかんも、軽ーくなればいいとおもっとった。お父ちゃんの仕事も、お母ちゃんの仕事も、難しいことようわからんけど重たくならんで、みんな楽しくしあわせになれればいいなって」
開けはなたれた窓、夏の日差しが少女の姿も影も白くする。みんみんと蝉が鳴いていた。顎のあたりを汗が滑って、黒ずくめの服にぽつりと染みて消えていく。
だからこんなかな、と少女は笑う。やわらかな声音、うららかさは夏にあっても変わらない。
「だからこんな、ふわふわーってなるようになったんかな」
スカートの裾をひるがえし少女はふりかえる。
1936少女の上履きのかかとがとんとんと廊下をはねる。ときおり少女のからだごとふわりと浮きあがって、それからゆっくりと着地する。
「なんもかんも、軽ーくなればいいとおもっとった。お父ちゃんの仕事も、お母ちゃんの仕事も、難しいことようわからんけど重たくならんで、みんな楽しくしあわせになれればいいなって」
開けはなたれた窓、夏の日差しが少女の姿も影も白くする。みんみんと蝉が鳴いていた。顎のあたりを汗が滑って、黒ずくめの服にぽつりと染みて消えていく。
だからこんなかな、と少女は笑う。やわらかな声音、うららかさは夏にあっても変わらない。
「だからこんな、ふわふわーってなるようになったんかな」
スカートの裾をひるがえし少女はふりかえる。
はねた
TRAININGhrakを無料配信でぼちぼち読みました。物間くんがすきです。
ぼくのひみつ 「物間くんのコスチュームってちょっと指揮者っぽいよね」
寮の談話室で、夜で、一日実践と特訓と座学で疲れきってあとはもう寝るだけででもなんでだかみんな妙にテンションがあがったきりでって感じでA組とB組と十何人かごちゃごちゃ集まった、なかでだれだかわからないだれかがぽそりとそんなことを言った。だれだかわからないっていうのは顔となまえが一致しないとかじゃなくて具体的に人数が多すぎてうるさくてワーワーみんな好き放題しゃべってるなかのだれかってことで。
ユニフォーム談義なのかとおもったらそんなことはなくて、だれそれの個性がどうのとか、だれそれの髪型がかわいいとかまねしたいとかなんだかそんなことがウワーと、あちこちからめまぐるしく洪水みたいに流れてくるから、だからだれに返事したらいいのかもわからないままハハハと僕はにこやかに笑う。紳士的に。つとめて紳士的に。指揮者ハハハ望むところだよかっこいいよねみんなのことまとめるってつまり翻ればみんながいないとだめってことなんだよね僕の個性も指揮者もひとりでは何もできないって意味ではおんなじっていうかいやコスチューム選びなんて自分でオッケー出してやってることではありますけどねとかなんてヒーローらしからぬかつ青少年の鬱屈そのものなことは口にはしないでとりあえず、ハハハと笑い続けてたらすれちがいざまにうるせえよと爆豪にののしられてオチが、ついたのでまあいろいろおもうところはあるもののそんな感じですまそうとしてたらなんでだか隣にいつのまにかいた緑谷が、だれだかが言った指揮者呼びを僕よりも丁寧に拾ってそうだねと言った。
1941寮の談話室で、夜で、一日実践と特訓と座学で疲れきってあとはもう寝るだけででもなんでだかみんな妙にテンションがあがったきりでって感じでA組とB組と十何人かごちゃごちゃ集まった、なかでだれだかわからないだれかがぽそりとそんなことを言った。だれだかわからないっていうのは顔となまえが一致しないとかじゃなくて具体的に人数が多すぎてうるさくてワーワーみんな好き放題しゃべってるなかのだれかってことで。
ユニフォーム談義なのかとおもったらそんなことはなくて、だれそれの個性がどうのとか、だれそれの髪型がかわいいとかまねしたいとかなんだかそんなことがウワーと、あちこちからめまぐるしく洪水みたいに流れてくるから、だからだれに返事したらいいのかもわからないままハハハと僕はにこやかに笑う。紳士的に。つとめて紳士的に。指揮者ハハハ望むところだよかっこいいよねみんなのことまとめるってつまり翻ればみんながいないとだめってことなんだよね僕の個性も指揮者もひとりでは何もできないって意味ではおんなじっていうかいやコスチューム選びなんて自分でオッケー出してやってることではありますけどねとかなんてヒーローらしからぬかつ青少年の鬱屈そのものなことは口にはしないでとりあえず、ハハハと笑い続けてたらすれちがいざまにうるせえよと爆豪にののしられてオチが、ついたのでまあいろいろおもうところはあるもののそんな感じですまそうとしてたらなんでだか隣にいつのまにかいた緑谷が、だれだかが言った指揮者呼びを僕よりも丁寧に拾ってそうだねと言った。