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PROGRESSかつてライシン♀があった世界線でシン♀レナ+オールキャラ/Ep.7周辺の時間軸/信仰と呪いと祈りと解呪の話/一応ラストあまやかし⑧* * *
アクセサリーケースから取り出された、ごくごく小さなライフル弾。
「……」
クレナの細い指先が摘まみ上げたそれへと、向ける言葉に窮したシンは口籠る。
対してクレナはシンのそんな反応すら予想通りであるのか。金晶種の瞳がじっとシンを見つめてくる。
「アクセサリー、好きなのを選んで良いって言われたから」
クレナ自身の小指の爪ほどのサイズの、ライフル弾を模した耳飾り。
薄紙の一枚も撃ち抜けやしない紛い物の弾丸が、照明を弾いてゆらゆらと揺れる。
「直接尋ねてあげないと、シン君はクレナちゃんが身に着けているものに何か言うなんてしてあげないものねぇ」
いつの間にかシンの背後に立っていたアンジュが言う。
9815アクセサリーケースから取り出された、ごくごく小さなライフル弾。
「……」
クレナの細い指先が摘まみ上げたそれへと、向ける言葉に窮したシンは口籠る。
対してクレナはシンのそんな反応すら予想通りであるのか。金晶種の瞳がじっとシンを見つめてくる。
「アクセサリー、好きなのを選んで良いって言われたから」
クレナ自身の小指の爪ほどのサイズの、ライフル弾を模した耳飾り。
薄紙の一枚も撃ち抜けやしない紛い物の弾丸が、照明を弾いてゆらゆらと揺れる。
「直接尋ねてあげないと、シン君はクレナちゃんが身に着けているものに何か言うなんてしてあげないものねぇ」
いつの間にかシンの背後に立っていたアンジュが言う。
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PROGRESS学習しないシン♀と86区時代にライシン♀があったことを知っているセオ/出逢ったばかりの頃及びスピアヘッド隊に配属当初/出逢ってすぐはシン♀に対して警戒心強めに役職呼びしていたらいいなという願望/明確なものは何もなかったハルセオを含みます/幣解釈のシン♀は基本的にはド攻め/捏造と妄想あまやかし⑦【幕間三】
今だから言えるけれど。
ライデンだって別に、第一印象は良くなかった。
東部戦線の“死神”に従う人狼。配属された戦隊に死を振り撒いて渡り歩く疫病神の傍らで唯一生き残り続けている“号持ち”。
戦友の血を啜って生きるのは号持ちの宿命だけれど、“ヴェアヴォルフ”なんて極めつけだ。いっそ露骨。
生きのびるために自分以外の全てを喰らう餓狼――なんて。噂の真偽はともかく。狼を想起させるような、野性味の強い容貌をした少年であることは確かだった。
あとすごく戦隊長に甘い。
単身で突っ込んで敵陣を掻き回すとかいう自殺志願で度々指揮を放棄する戦隊長から当前のように指揮系統を引き継ぐし。
鉄面皮で感情の起伏が薄い戦隊長に代わるかのように戦隊員に目を向けて戦隊内の雰囲気を調節しているし。
16619今だから言えるけれど。
ライデンだって別に、第一印象は良くなかった。
東部戦線の“死神”に従う人狼。配属された戦隊に死を振り撒いて渡り歩く疫病神の傍らで唯一生き残り続けている“号持ち”。
戦友の血を啜って生きるのは号持ちの宿命だけれど、“ヴェアヴォルフ”なんて極めつけだ。いっそ露骨。
生きのびるために自分以外の全てを喰らう餓狼――なんて。噂の真偽はともかく。狼を想起させるような、野性味の強い容貌をした少年であることは確かだった。
あとすごく戦隊長に甘い。
単身で突っ込んで敵陣を掻き回すとかいう自殺志願で度々指揮を放棄する戦隊長から当前のように指揮系統を引き継ぐし。
鉄面皮で感情の起伏が薄い戦隊長に代わるかのように戦隊員に目を向けて戦隊内の雰囲気を調節しているし。
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PROGRESSかつてライシン♀があった世界線でシン♀レナ+オールキャラ/Ep.7周辺の時間軸/ようやく青春できるようになった人狼の迷走編/死神が主役ではない話なので彼も出せるかなと思った/捏造と妄想と高濃度幻覚/前に書いたマルセル視点の話と若干リンクしている/あと少し続くあまやかし⑥* * *
ライデン・シュガ。
ギアーデ連邦軍第八六独立機動打撃群、本部付戦隊“スピアヘッド”戦隊副長。
パーソナルネーム“ヴェアヴォルフ”。八六区においては“死神”に従う人狼――激戦区を生き抜いた“号持ち”。連邦が最初に保護した五人のエイティシックスの一人。
火力支援を得意とし、視野の広さに由来するサポート能力に定評がある。そして単騎で突っ込んでどうにかしてきがちな総隊長の補佐に付ける数少ない人物。
総隊長の腹心もとい『女房役』――誰が呼んだか。“お母さん”。
そんな人物が広間の外へと出ていった。
出入り口を見つめたまま固まっている小柄な少年。呆然としている彼の肩を嫋やかな掌が、がっしりと掴む。
12214ライデン・シュガ。
ギアーデ連邦軍第八六独立機動打撃群、本部付戦隊“スピアヘッド”戦隊副長。
パーソナルネーム“ヴェアヴォルフ”。八六区においては“死神”に従う人狼――激戦区を生き抜いた“号持ち”。連邦が最初に保護した五人のエイティシックスの一人。
火力支援を得意とし、視野の広さに由来するサポート能力に定評がある。そして単騎で突っ込んでどうにかしてきがちな総隊長の補佐に付ける数少ない人物。
総隊長の腹心もとい『女房役』――誰が呼んだか。“お母さん”。
そんな人物が広間の外へと出ていった。
出入り口を見つめたまま固まっている小柄な少年。呆然としている彼の肩を嫋やかな掌が、がっしりと掴む。
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PROGRESSかつてライシン♀があった世界線のシン♀レナで、シデンとシン♀の話/ロマンシス/シン♀の外見はシデンと真逆だったら嬉しいなという願望が前提あまやかし⑤【幕間二】
「あたしは死神ちゃんのことが嫌いだよ」
知っている。
そもそもが顔を合わせて数分足らずで殴り合いの蹴り合いになった相手だ。不倶戴天。本能的にそりが合わない。
お互いよく、知っている。
シデンの客室のシャワールームで汗を流して。しかし館内着ではない普通の服は手荷物鞄の中に入れたままであることには脱衣所で気がついた。
だから下着姿でバスルームを出たシンに対してもシデンは平然としていた。同性であるし。そもそもシデンとて着替えている途中であったし。
シンは己の手荷物鞄を探して、少し、瞼を細めた。ベッドの上に置いた覚えは無い。
シンの手荷物鞄を傍らに置いて。シデンはベッドの端に腰掛けている。――鍛え抜かれた鋼の硬質と肉食の獣のしなやかさを連想させる脚が黒いストッキングに包み込まれていく。
4847「あたしは死神ちゃんのことが嫌いだよ」
知っている。
そもそもが顔を合わせて数分足らずで殴り合いの蹴り合いになった相手だ。不倶戴天。本能的にそりが合わない。
お互いよく、知っている。
シデンの客室のシャワールームで汗を流して。しかし館内着ではない普通の服は手荷物鞄の中に入れたままであることには脱衣所で気がついた。
だから下着姿でバスルームを出たシンに対してもシデンは平然としていた。同性であるし。そもそもシデンとて着替えている途中であったし。
シンは己の手荷物鞄を探して、少し、瞼を細めた。ベッドの上に置いた覚えは無い。
シンの手荷物鞄を傍らに置いて。シデンはベッドの端に腰掛けている。――鍛え抜かれた鋼の硬質と肉食の獣のしなやかさを連想させる脚が黒いストッキングに包み込まれていく。
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PROGRESSかつてライシン♀があった世界線でシン♀レナ+オールキャラ/Ep.7周辺の時間軸/ようやく青春できるようになった話/微量のシデシャナ/捏造と妄想あまやかし④ 世の中、絶対なんてないわけだけれど。
昔々の皇帝サマの別荘が元になったとかいうホテルで、給仕から渡された冷たい飲み物なんて代物を手にしていると。人生の展望だとか、未来の見通しだとか。見当をつけるのは中々に難しいことなのではないかと。思わなくもない。
とはいえ。
とりあえず。
「……んー……!」
ぐい、と。
呷る快感を俺は堪能する。
温泉上がりの火照った身体に流し込む、冷たい感触が心地良い。乾いた喉を潤す仄かな甘みと炭酸の刺激。慣れない味だが悪くない。喉の渇きも相まって一気に飲み干した俺に向けられる給仕の女性の微笑。「乳清を原料にした、盟約同盟では広く親しまれている飲み物なんですよ」という説明にへぇと頷く俺の手から、ごく自然に回収されていくグラス。プロの仕事だ。
15936昔々の皇帝サマの別荘が元になったとかいうホテルで、給仕から渡された冷たい飲み物なんて代物を手にしていると。人生の展望だとか、未来の見通しだとか。見当をつけるのは中々に難しいことなのではないかと。思わなくもない。
とはいえ。
とりあえず。
「……んー……!」
ぐい、と。
呷る快感を俺は堪能する。
温泉上がりの火照った身体に流し込む、冷たい感触が心地良い。乾いた喉を潤す仄かな甘みと炭酸の刺激。慣れない味だが悪くない。喉の渇きも相まって一気に飲み干した俺に向けられる給仕の女性の微笑。「乳清を原料にした、盟約同盟では広く親しまれている飲み物なんですよ」という説明にへぇと頷く俺の手から、ごく自然に回収されていくグラス。プロの仕事だ。
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PROGRESSライシン♀/幕間あまやかし③【幕間】
いつにもまして、亡霊の嘆きが酷い日だった。
故に、ほとんど這いつくばりながら報告書を作成していたシンを具合が悪いのに何やってんだこの馬鹿と怒鳴りつけてくる腐れ縁が鬱陶しくて。
だから、おれ以外に一体誰が出来るのだと口うるさい顔面に紙の束を叩きつけてやった。
ろくに初等教育も受けぬうちに収容所へと押し込められたシンたちの世代は読み書きを苦手とする者が多い。シンは例外だ。……あの教会の蔵書と神父さまからの教えを独占していたのがシンだから。
ならばシンがやるのが道理だ。
この腐れ縁とて読書や文字を書いているところなど見たことがない。どうせ書類は突き返される。口を挟むないるだけ邪魔だ――くらいは言ってやろうと思っていた。
1181いつにもまして、亡霊の嘆きが酷い日だった。
故に、ほとんど這いつくばりながら報告書を作成していたシンを具合が悪いのに何やってんだこの馬鹿と怒鳴りつけてくる腐れ縁が鬱陶しくて。
だから、おれ以外に一体誰が出来るのだと口うるさい顔面に紙の束を叩きつけてやった。
ろくに初等教育も受けぬうちに収容所へと押し込められたシンたちの世代は読み書きを苦手とする者が多い。シンは例外だ。……あの教会の蔵書と神父さまからの教えを独占していたのがシンだから。
ならばシンがやるのが道理だ。
この腐れ縁とて読書や文字を書いているところなど見たことがない。どうせ書類は突き返される。口を挟むないるだけ邪魔だ――くらいは言ってやろうと思っていた。