健気大好き
MOURNING弁護士になった方がいい。そう父親に言われた。けれど。好きな事はブログを書くこと。でも家族からは弁護士になることを望まれている。
好きな事を仕事にするか、周囲から望まれていることを仕事にするかで悩んでいる青年が
心から守りたいと思える人と出会い恋をしていくお話。
大学生×一途青年細身の青年が階段を登っている。
見覚えのある顔だった。すぐには思い出せない。注意深く彼を見た。
暖かくなってきた気温と共に、彼の少し長めの前髪がなびく。
ハッキリと顔が見えたその瞬間、綿矢は目を見開いた。
ふぅふぅと少し膨らんでいるお腹を片手で押さえながら、彼はスーパーの袋とカバンを持って階段を歩いていた。
綿矢 謙介(わたや けんすけ)は先月の事を思い出す。
以前、親に勧められるまま向かった裁判での事。
今も鮮明に思い出せる。
『でも…好き、なんです…お金なら…今は持っていませんが、慰謝料としてこれから働いていくらでもお支払いいたします、……ひっく…別れたく、…ない、です…お願い、佐木川さん‥お願い…』
腹を押さえ、涙ながらに切実な思いを訴える青年が、今もなお綿矢の目に焼き付かれている。
5912見覚えのある顔だった。すぐには思い出せない。注意深く彼を見た。
暖かくなってきた気温と共に、彼の少し長めの前髪がなびく。
ハッキリと顔が見えたその瞬間、綿矢は目を見開いた。
ふぅふぅと少し膨らんでいるお腹を片手で押さえながら、彼はスーパーの袋とカバンを持って階段を歩いていた。
綿矢 謙介(わたや けんすけ)は先月の事を思い出す。
以前、親に勧められるまま向かった裁判での事。
今も鮮明に思い出せる。
『でも…好き、なんです…お金なら…今は持っていませんが、慰謝料としてこれから働いていくらでもお支払いいたします、……ひっく…別れたく、…ない、です…お願い、佐木川さん‥お願い…』
腹を押さえ、涙ながらに切実な思いを訴える青年が、今もなお綿矢の目に焼き付かれている。
健気大好き
MOURNING初めて BL 貧乏 社長 工場勤務社長と工場勤務男性の初めての恋眼鏡がよく似合うオールバックの男が両腕を組み、とある従業員にくどくどと説教をしていた。
「なぜ貴方のような人がこの会社にいるのか理解できませんね」
「はいはい、すみませんでしたね、不相応な従業員で」
「不相応とまでは言っていない。きちんとした言葉遣いで話せないのかと言っているんだ」
「敬語なんてまともに使ったことねえ・・・中卒なんで勘弁してださいよ。これでも綺麗なコトバ選んで説明してるつもりなんです」
次期社長の染屋敷 句朗(そめやしき くろう)はいつものごとく北見に小言をたたいていた。
染屋敷は主に子供用の玩具を製造して大きくなった会社である。
しかし年々ネットゲームに需要が傾き、子供用玩具の売れ行きが怪しくなってきた。
4718「なぜ貴方のような人がこの会社にいるのか理解できませんね」
「はいはい、すみませんでしたね、不相応な従業員で」
「不相応とまでは言っていない。きちんとした言葉遣いで話せないのかと言っているんだ」
「敬語なんてまともに使ったことねえ・・・中卒なんで勘弁してださいよ。これでも綺麗なコトバ選んで説明してるつもりなんです」
次期社長の染屋敷 句朗(そめやしき くろう)はいつものごとく北見に小言をたたいていた。
染屋敷は主に子供用の玩具を製造して大きくなった会社である。
しかし年々ネットゲームに需要が傾き、子供用玩具の売れ行きが怪しくなってきた。
健気大好き
MOURNINGカルガモが歩道を歩いていた。高校生の池場はカルガモたちの安全を考えて警察へ電話をした――――カルガモ親子から始まる恋カルガモの親子が歩道で歩いていた。高校3年生の男子生徒が急いで携帯で連絡を入れた。どこに電話すればいいかわからなかった池場(イケバ)はとりあえず110に電話をかけた。
すぐに交番から駆けつけてくれた男性は20代後半の見た目で、ガッシリとした体躯をしていた。
「よし、いいぞ。このまままっすぐ行けば池につくぞ」
カルガモに向かって話している警官から目が離せなくなっていた。
****
翌日
「やぁ、君は昨日カルガモの電話をくれた子だね。こんにちは。どうしたんだい?」
「あ・・・の・・・」
池場の声は震えていた。用意した菓子を右手で押し出すようにサっと出す。
「あっ、抹茶クッキーかい?ありがとう。大好きなんだ、抹茶味のお菓子」
1629すぐに交番から駆けつけてくれた男性は20代後半の見た目で、ガッシリとした体躯をしていた。
「よし、いいぞ。このまままっすぐ行けば池につくぞ」
カルガモに向かって話している警官から目が離せなくなっていた。
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翌日
「やぁ、君は昨日カルガモの電話をくれた子だね。こんにちは。どうしたんだい?」
「あ・・・の・・・」
池場の声は震えていた。用意した菓子を右手で押し出すようにサっと出す。
「あっ、抹茶クッキーかい?ありがとう。大好きなんだ、抹茶味のお菓子」