norte724
DONE心象スプレヰ(mental spray)リンネ&ツヅラep
#6 輪廻の続き 歌が聴こえる。
知らないけれど、懐かしい。自然と手足が動いて、踊りだしてしまうような……
「おーい!アンタ大丈夫!?しっかりして!」
馬鹿力で肩を揺さぶられ、僕は目を覚ました。
「……ンボェ!?いってぇ〜な〜!どんだけ揺らしたんだよ!」
「目が覚めた?アンタ気を失ってたのよ?」
ぼやける視界が定まってくると、僕を起こした馬鹿力の持ち主が鮮明に映る。白い帽子、茶色のオーバーオール。緑色のインク、目の周りの特徴的な隈取り……
「イカ……?ぼぼぼぼ僕を倒してもイカ陣営には何の旨味もないんですけど!?」
黒いアンダーツインゲソの少女は腰が抜けたまま両手両足とお尻、使える部位を全て使って後退りした。
「アンタはブキを持っていない。倒す理由なんて無いわ。タコのお嬢さん」
4808知らないけれど、懐かしい。自然と手足が動いて、踊りだしてしまうような……
「おーい!アンタ大丈夫!?しっかりして!」
馬鹿力で肩を揺さぶられ、僕は目を覚ました。
「……ンボェ!?いってぇ〜な〜!どんだけ揺らしたんだよ!」
「目が覚めた?アンタ気を失ってたのよ?」
ぼやける視界が定まってくると、僕を起こした馬鹿力の持ち主が鮮明に映る。白い帽子、茶色のオーバーオール。緑色のインク、目の周りの特徴的な隈取り……
「イカ……?ぼぼぼぼ僕を倒してもイカ陣営には何の旨味もないんですけど!?」
黒いアンダーツインゲソの少女は腰が抜けたまま両手両足とお尻、使える部位を全て使って後退りした。
「アンタはブキを持っていない。倒す理由なんて無いわ。タコのお嬢さん」
norte724
DONE心象スプレヰ(mental spray)シュラep
#5 FILE13の真実 父として教え、導くというのはどうやら兵法を教え、勝利の為に指揮を執るのとは違うらしい。
命を育むというのはどういう事か、妻の提案で花を育てる事にした。
水をやる、光を当てる、いずれ枯れる。それしか分からなかった。
嘆き悲しむというのはどういう事か、妻と子供たちを亡くした時、カズラにはあって俺には無い物だった。
俺には、戦って勝利する事しか分からなかった。
――大縄張大戦 蛸陣営
戦略蛸壺兵器の後方から巨大な管が繋がれているのをシュラは目視で確認した。段々と霧が深まっている。奇襲に最適な環境が整っていた。シュラの意図ではなかったが、奇しくも大縄張大戦緒戦で奇襲をかけられ失った戦力を奇襲で取り返す形となった。
1284命を育むというのはどういう事か、妻の提案で花を育てる事にした。
水をやる、光を当てる、いずれ枯れる。それしか分からなかった。
嘆き悲しむというのはどういう事か、妻と子供たちを亡くした時、カズラにはあって俺には無い物だった。
俺には、戦って勝利する事しか分からなかった。
――大縄張大戦 蛸陣営
戦略蛸壺兵器の後方から巨大な管が繋がれているのをシュラは目視で確認した。段々と霧が深まっている。奇襲に最適な環境が整っていた。シュラの意図ではなかったが、奇しくも大縄張大戦緒戦で奇襲をかけられ失った戦力を奇襲で取り返す形となった。
norte724
DONE心象スプレヰ(mental spray)アマリネ&サラルep
#4 煌めく星のように なぜ蛸を助けるのですか?
蛸共は私の家族を皆殺しにした。あまつさえ私たちの居場所を奪おうとしている。奴等は勤勉で、冷酷で、恐ろしい。
優れた能力を持つ貴方が、私が憧れていた貴方が、蛸を助けるなんて、許せない。
だから刺した。
「私はこの罪を墓場まで持って行くつもりでした。でも私の魂は未だにあなたの夢の中を彷徨い続けている。だから全て話します。私の魂を色濃く受け継いだあなたに」
アマリネおばあちゃんの幽霊は若い頃の姿で、私にそっくりだった。背丈、お気に入りの桃色インク、短く切り揃えた前ゲソ、違っていたのは……
恐ろしいくらいにぎらぎらした目。
「私は、戦友を殺してしまった。ヒト殺しでありながら、のうのうと生きてしまった。シュラさんに拾われたあの日から、あのヒトの為に戦い、戦いの中で死ねたなら本望と思っていたのに」
1554蛸共は私の家族を皆殺しにした。あまつさえ私たちの居場所を奪おうとしている。奴等は勤勉で、冷酷で、恐ろしい。
優れた能力を持つ貴方が、私が憧れていた貴方が、蛸を助けるなんて、許せない。
だから刺した。
「私はこの罪を墓場まで持って行くつもりでした。でも私の魂は未だにあなたの夢の中を彷徨い続けている。だから全て話します。私の魂を色濃く受け継いだあなたに」
アマリネおばあちゃんの幽霊は若い頃の姿で、私にそっくりだった。背丈、お気に入りの桃色インク、短く切り揃えた前ゲソ、違っていたのは……
恐ろしいくらいにぎらぎらした目。
「私は、戦友を殺してしまった。ヒト殺しでありながら、のうのうと生きてしまった。シュラさんに拾われたあの日から、あのヒトの為に戦い、戦いの中で死ねたなら本望と思っていたのに」
norte724
DONE心象スプレヰ(mental spray)カズラ&セタルep
#3 透明な幽霊 誰かが泣いている。
誰かが、どこか遠い所から、俺に呼びかけている。
「もうこれ以上、俺から奪わないでくれ」
*
――セタルがハイカラシティを発ってから数日後
「おお……!あいつに……カズラに生き写しじゃ……!」
ソイとアワの祖父、ソラマはセタルの顔を見た途端、涙をこぼした。
「そんなに似てますか?」
「そりゃ似るじゃろう、血縁なんじゃから」
「へへ……あ、それで、大ナワバリバトルの戦場跡地って……」
「タコツボバレー、ナンタイ山、クレーター跡……いるとしたらこのあたりじゃな」
「よし行こう!ソイのおじいちゃん!お兄ちゃんが絶対見つけるからな!」
*
――大ナワバリバトル時代 戦場
「アマリネ!何やってんだ!」
1115誰かが、どこか遠い所から、俺に呼びかけている。
「もうこれ以上、俺から奪わないでくれ」
*
――セタルがハイカラシティを発ってから数日後
「おお……!あいつに……カズラに生き写しじゃ……!」
ソイとアワの祖父、ソラマはセタルの顔を見た途端、涙をこぼした。
「そんなに似てますか?」
「そりゃ似るじゃろう、血縁なんじゃから」
「へへ……あ、それで、大ナワバリバトルの戦場跡地って……」
「タコツボバレー、ナンタイ山、クレーター跡……いるとしたらこのあたりじゃな」
「よし行こう!ソイのおじいちゃん!お兄ちゃんが絶対見つけるからな!」
*
――大ナワバリバトル時代 戦場
「アマリネ!何やってんだ!」
norte724
DONE心象スプレヰ(mental spray)ローレルep
#2-1 午後の授業 ハイカラシティでナワバリバトルが流行した日から丁度百年前、烏賊と蛸による縄張り争いがあったのは歴史の教科書で君も知ってるよね?大ナワバリバトル、当時は大縄張大戦と呼んでいたけれど、僕はあの戦いの最中、命を落とした。
え?じゃあ今話してる僕は何者かって?
僕という現象は、有機交流電燈のひとつの青い照明のように、あらゆる透明な幽霊の複合体と言うべきか。
君にしか僕の姿は見えないのだから幽霊みたいなものかな。ねえ?スールちゃん。
そろそろ話そうと思ってさ、あの日僕が死んだ理由を、忘れ去られた幽霊達の話を。
*
海面上昇によって烏賊と蛸は縄張りを奪い合うことになった。当時、僕の家は代々糸を紡ぎ反物を織る名家だったのだけれど、蛸軍の進軍によって一族は壊滅した。ただ一人生き残って途方に暮れていた僕を、あのヒトが拾ってくれたんだ。そう、シュラさん。君達四きょうだいのご先祖様だよ。
3294え?じゃあ今話してる僕は何者かって?
僕という現象は、有機交流電燈のひとつの青い照明のように、あらゆる透明な幽霊の複合体と言うべきか。
君にしか僕の姿は見えないのだから幽霊みたいなものかな。ねえ?スールちゃん。
そろそろ話そうと思ってさ、あの日僕が死んだ理由を、忘れ去られた幽霊達の話を。
*
海面上昇によって烏賊と蛸は縄張りを奪い合うことになった。当時、僕の家は代々糸を紡ぎ反物を織る名家だったのだけれど、蛸軍の進軍によって一族は壊滅した。ただ一人生き残って途方に暮れていた僕を、あのヒトが拾ってくれたんだ。そう、シュラさん。君達四きょうだいのご先祖様だよ。
norte724
DONE心象スプレヰ(mental spray)リンネep
#1 輪廻の始まり――大ナワバリバトル時代 戦場
巫女服の少女は息を切らして森を駆けていた。上質な布で作られた水色の袴は所々破けており、付着しているイカ陣営の緑インクとタコ陣営の紫インクが泥と混ざり汚れていた。
「ぜえ……ぜえ……こんな所で僕死ぬのか……でもいいか、潰れちまえあんな家……」
タコの少女は黒いアンダーツインゲソを揺らして悪態をついた。木に寄りかかりあぐらをかいてどっかりと座り込む。半ば諦めるように大きな溜息をついた。
近くの茂みががさごそと音を立てる。タコの少女の肩がビクリと跳ね緊張で体がぎこちなく震える。
「……誰」
目を細めて茂みを睨みつけると、白い帽子と茶色のオーバーオールで統一されたイカの四人組が茂みをかき分けてこちらへ向かって来た。
912巫女服の少女は息を切らして森を駆けていた。上質な布で作られた水色の袴は所々破けており、付着しているイカ陣営の緑インクとタコ陣営の紫インクが泥と混ざり汚れていた。
「ぜえ……ぜえ……こんな所で僕死ぬのか……でもいいか、潰れちまえあんな家……」
タコの少女は黒いアンダーツインゲソを揺らして悪態をついた。木に寄りかかりあぐらをかいてどっかりと座り込む。半ば諦めるように大きな溜息をついた。
近くの茂みががさごそと音を立てる。タコの少女の肩がビクリと跳ね緊張で体がぎこちなく震える。
「……誰」
目を細めて茂みを睨みつけると、白い帽子と茶色のオーバーオールで統一されたイカの四人組が茂みをかき分けてこちらへ向かって来た。