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    norte724

    お茶が好き

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    norte724

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    心象スプレヰ(mental spray)
    アマリネ&サラルep

    #心象スプレヰ

    #4 煌めく星のように なぜ蛸を助けるのですか?
     蛸共は私の家族を皆殺しにした。あまつさえ私たちの居場所を奪おうとしている。奴等は勤勉で、冷酷で、恐ろしい。
     優れた能力を持つ貴方が、私が憧れていた貴方が、蛸を助けるなんて、許せない。
     だから刺した。
    「私はこの罪を墓場まで持って行くつもりでした。でも私の魂は未だにあなたの夢の中を彷徨い続けている。だから全て話します。私の魂を色濃く受け継いだあなたに」
     アマリネおばあちゃんの幽霊は若い頃の姿で、私にそっくりだった。背丈、お気に入りの桃色インク、短く切り揃えた前ゲソ、違っていたのは……
     恐ろしいくらいにぎらぎらした目。
    「私は、戦友を殺してしまった。ヒト殺しでありながら、のうのうと生きてしまった。シュラさんに拾われたあの日から、あのヒトの為に戦い、戦いの中で死ねたなら本望と思っていたのに」
    「……おばあちゃんは、死にたかった?」
    「ええ」
     おばあちゃんの目に迷いはなかった。

       *

    ――ハイカラシティ チームシブリングの家
     お兄ちゃんはカズラさんの幽霊を探しに行くために家を離れることになった。スーちゃんも私も一緒に行きたい!って沢山駄々をこねたけど、長い距離を移動するのってすごく疲れるから、体を大事にしてほしい。お兄ちゃんに任せろ!お兄ちゃんはそう言い残して旅に出た。
     それからお兄ちゃんが帰ってくるまで、ふさぎ込むスーちゃんはとてもじゃないけど見ていられなかった。
     どうしてこんなに悲しいんだろう。
     生まれる前、私がスーちゃんの元気を多く取っちゃったから?
     私がカズラさんを探しに行こうって言い出したから?
     どうして私の行動は回り回って大切なヒトを悲しませるんだろう。
    ――私なんて、いなければいいのに。

       *

    ――タコツボバレー
     タコゾネス訓練生のベースキャンプだったものが桃色のインクで塗り潰されていた。
     サラルはナイフでゲソを短く切り落とした。あちこち破れたイカリスウェットを脱ぎ捨て、倒れたタコゾネスからプロテクターを剥ぎ取り、身に付ける。
    (わかんないよ)
     サラルはパプロの穂先を地面に突き立てて、咆哮する。
    (どうすればみんなを悲しませずに死ねるのかわかんないよ!)
     ひとしきり叫んで崩れ落ちた体をゆっくりと持ち上げる。
    「もう、誰にも会わないよ。さよなら」
     ナイフを首筋に当てて呟く。こんなにぐしゃぐしゃになった顔なんて誰にも見られたくないから――
    「サラル!」
     後ろからナイフごと手を掴まれた。振り返ると、夜空色の瞳と目が合った。緑色のゲソ先が味噌のように茶色く濁っている少年だった。
    「ヨダカくん」
    「……っ」
    「ダメだよ、そんなに強く握ったら、血、出ちゃうよ」
     ヨダカくん、そんな顔もするんだ。そういえば、ヨダカくんが泣いてるとこ、一度も見たことなかったな。
    「あはは!変なの!いっつも死にたいヨダカくん止めてたのは私なのに、今度はヨダカくんが止めてくれたんだね」

       *

    ――数年後 オルタナ
    「私の事はどれだけ恨んでくれても構わないと思っていたのに、とんだ拍子抜けです」
    「そんな事言わないでよ〜せっかくまた会えたのにさ〜……」
     液晶画面に映し出された幽霊達が他愛ない会話を繰り広げている。
    「おばあちゃん、成仏できそう?」
     桃色のゲソを短く切り揃えて炙りゲソにした孫がにこやかに尋ねる。
    「ええ、これでようやく」

    ――オルタナの一件からさらに数ヶ月後
    「あの時私もベースキャンプにいたんだよ!ほんとびっくりしたんだから!」
     ネリバースの一件で記憶を取り戻したツェネちゃんが私事件、サラル事件の当事者だったのを笑いながら、面白可笑しく話してくれたのは、ほんの少し未来の話――
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    【注意とごあいさつ】
    ・まだ知己ですが、そのうちR-18に突入
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    江家の晩餐(含光君の恋文・番外編)江家の晩餐

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     こじんまりと、静かな宴が行われていた。

     雲夢は国の中央に属する。辛・酸・甘、麻辣、清淡など、各地の味覚や製法を取り入れた独特の食文化が自慢だ。新鮮な山河の素材に薬膳効果のある山菜を加え、最大限のもてなしに厨房は大わらわ、春節のような賑わいだった。

     だがしかし。

    「……」
    「……」
    「……」

     春のすがすがしい夜風が流れる大広間では、少しも晴れやかでない男達が三人、円卓に向かって座していた。

     江宗主・江晩吟。
     この宴を用意させた本人だが、少しも客をもてなす様子がない。もてなすどころか、苦虫を嚙み潰したような表情で、無言のまま卓を睨んでいる。恐ろしくも美しかった紫蜘蛛・虞夫人を彷彿とさせるような形相だ。宗主の低気圧に慣れた家僕たちも身をすくめ、(なにか不備があったのでは)と互いの顔を見合わせている。
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