mukibutu_09
DONE秋の夜(満月)のウォルナミ話。良い子は真似しちゃダメだよ。
月に酔う満月の夜だった。
何やらご機嫌の様子の奈美がメロディーを口ずさむ。メロディーに合わせて小刻みに揺れながら先程食べた晩御飯の後片付けをしている姿を、ウォルターは座ったソファーから眺めていた。
水道の蛇口を閉めた時には声が小さくなる様子を見るに、水を流してる間はウォルターには聞こえないと思っているらしい。まあそんな彼女の思い込みをよそに、ウォルターはバッチリ彼女の声を拾い、笑い出すのを堪えて震えているわけだが。
スラスラと流れていく音の中「えっと…なんだっけ…」などと歌詞に詰まって零した彼女の独り言ももちろん拾われているわけで、読んでいた本に再び向き直った彼もその言葉に合わせて愉快そうに肩を揺らす。
断続的に流れる水音がはたと止まる。音楽を口ずさむのはとうに止めており、代わりにパタパタと軽やかにフローリングを動く彼女の足音が機嫌の良さを表していた。
2967何やらご機嫌の様子の奈美がメロディーを口ずさむ。メロディーに合わせて小刻みに揺れながら先程食べた晩御飯の後片付けをしている姿を、ウォルターは座ったソファーから眺めていた。
水道の蛇口を閉めた時には声が小さくなる様子を見るに、水を流してる間はウォルターには聞こえないと思っているらしい。まあそんな彼女の思い込みをよそに、ウォルターはバッチリ彼女の声を拾い、笑い出すのを堪えて震えているわけだが。
スラスラと流れていく音の中「えっと…なんだっけ…」などと歌詞に詰まって零した彼女の独り言ももちろん拾われているわけで、読んでいた本に再び向き直った彼もその言葉に合わせて愉快そうに肩を揺らす。
断続的に流れる水音がはたと止まる。音楽を口ずさむのはとうに止めており、代わりにパタパタと軽やかにフローリングを動く彼女の足音が機嫌の良さを表していた。
mukibutu_09
MOURNING誕生日記念。時間が足りなくて入れたい話を入れれなかったし語らせたいことを語る前にウォルターがどっか行っちゃったので供養です。本当は「なんで誕生日知ってるんだろうね?」みたいなことを語りたいし語らせたかった。ちょっと言葉が怪しいかもHappy…「ウォルターさんにも誕生日はあるんですか?」
「ありますよ」
奈美がふと気になって発した疑問は、当たり前ですが?と言うような語気を含んで即答された。
だが、手元の端末と向き合う彼女には意外に思える返答だったらしく、顔を上げて目を丸くする。
「えぇ、あるんですか…。ウォルターさんの幼少期とか想像できないなぁ…」
「はい?」
「え?」
ウォルターが首を傾げる。つられて奈美もキョトンとする。
時間差で(今のは誕生日がいつか聞く流れであって幼少期に思いを馳せるタイミングではなかった)などととんちんかんなことを頭の中でグルグルと考える。
「……あぁ、なるほど」
そんな彼女を差し置いて彼はひとりでに納得し、彼女の思い描くウォルター像との相違部分を簡潔に伝える。
1567「ありますよ」
奈美がふと気になって発した疑問は、当たり前ですが?と言うような語気を含んで即答された。
だが、手元の端末と向き合う彼女には意外に思える返答だったらしく、顔を上げて目を丸くする。
「えぇ、あるんですか…。ウォルターさんの幼少期とか想像できないなぁ…」
「はい?」
「え?」
ウォルターが首を傾げる。つられて奈美もキョトンとする。
時間差で(今のは誕生日がいつか聞く流れであって幼少期に思いを馳せるタイミングではなかった)などととんちんかんなことを頭の中でグルグルと考える。
「……あぁ、なるほど」
そんな彼女を差し置いて彼はひとりでに納得し、彼女の思い描くウォルター像との相違部分を簡潔に伝える。
mukibutu_09
DONE奈美がウォルターに「したい」と言う話お誘いと降りかかる悩みと「怖いんです」
ポツリと彼女が呟く。見下ろす彼の目にはツヤのある漆黒の髪と髪先の鮮やかな青が映る。うつむき、彼の服の袖を掴んで離さない彼女の顔は見えない。ただ髪先の青だけが彼には印象深く映った。
「ウォルターさんが死んじゃうんじゃないかって」
彼女の脳裏を鮮血の記憶がよぎる。血みどろで地を這うウォルターの姿が。
「私が先に死ぬと思ってたのに、貴方の死は意外と近くにあって」
消毒液の香りを思い出す。
「そしたら、急に何もかもわからなくなっちゃって」
「なるべく隠しておきたかったのに、抑えられなくて」
「たくさん楽しい思い出とかあったはずなのに」
「全部抜け落ちて空っぽになっちゃって」
淡い色のフローリングが溢れた雫を弾き、重苦しい空気の中LEDの白だけが煌々と輝く。嗚咽混じりに紡がれる言葉は溢れて、
3738ポツリと彼女が呟く。見下ろす彼の目にはツヤのある漆黒の髪と髪先の鮮やかな青が映る。うつむき、彼の服の袖を掴んで離さない彼女の顔は見えない。ただ髪先の青だけが彼には印象深く映った。
「ウォルターさんが死んじゃうんじゃないかって」
彼女の脳裏を鮮血の記憶がよぎる。血みどろで地を這うウォルターの姿が。
「私が先に死ぬと思ってたのに、貴方の死は意外と近くにあって」
消毒液の香りを思い出す。
「そしたら、急に何もかもわからなくなっちゃって」
「なるべく隠しておきたかったのに、抑えられなくて」
「たくさん楽しい思い出とかあったはずなのに」
「全部抜け落ちて空っぽになっちゃって」
淡い色のフローリングが溢れた雫を弾き、重苦しい空気の中LEDの白だけが煌々と輝く。嗚咽混じりに紡がれる言葉は溢れて、