出汁晶
MEMO悲鳴嶼師範の粛清。夢のような夢ではないような。推しに殺されたい。「師範」部屋から出てきた悲鳴嶼師範が玄関に向かうから、外に行くならお供しようと立ち上がる。途端、「来るな」と低い低い声で制された。
「任務のお邪魔はしません。いつものようにお供させてください」
「任務ではない。伴はいらない」
「でも、」
「いいから来るな」
「・・・はい」
師範は頑固な人だ。自分がお願いしても、駄目な時は絶対駄目だ。
「今日は帰らない。いつも通り鍛錬を」
「・・・はい。お気をつけて」
任務ではないと言ったその通り、師範はいつもの日輪刀を持ってはいなかった。代わりに手にあるのは、見慣れない普通の刀。色からして日輪刀ではあるのだろう。
「行ってらっしゃい・・・」
師範はあの日どころか翌日も帰らなかった。泣き腫らした瞼を閉じて滝に打たれているのを見つけた時、心配したんですよと自分は怒ったんだ。
そんな事を今、思い出した。
「・・・・・・お前には、使いたくなかった」
師範は泣きながら、庭に正座する自分の前であの刀を鞘から抜いた。
任務先で邂逅した鬼は、自分の妹だった。殺さないでと頼んだ。一緒に逃げようと手を握った。師範はあの子をいとも容易く葬り去った。自分の目の前で。
そ 861