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    出汁晶

    SSにもなってないネタをつらつら(予定)

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    出汁晶

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    悲鳴嶼師範の粛清。夢のような夢ではないような。推しに殺されたい。

    #鬼滅の刃
    DemonSlayer
    #kmtマイナス
    kmtMinus

    「師範」
    部屋から出てきた悲鳴嶼師範が玄関に向かうから、外に行くならお供しようと立ち上がる。途端、「来るな」と低い低い声で制された。
    「任務のお邪魔はしません。いつものようにお供させてください」
    「任務ではない。伴はいらない」
    「でも、」
    「いいから来るな」
    「・・・はい」
    師範は頑固な人だ。自分がお願いしても、駄目な時は絶対駄目だ。
    「今日は帰らない。いつも通り鍛錬を」
    「・・・はい。お気をつけて」
    任務ではないと言ったその通り、師範はいつもの日輪刀を持ってはいなかった。代わりに手にあるのは、見慣れない普通の刀。色からして日輪刀ではあるのだろう。
    「行ってらっしゃい・・・」
    師範はあの日どころか翌日も帰らなかった。泣き腫らした瞼を閉じて滝に打たれているのを見つけた時、心配したんですよと自分は怒ったんだ。

    そんな事を今、思い出した。

    「・・・・・・お前には、使いたくなかった」
    師範は泣きながら、庭に正座する自分の前であの刀を鞘から抜いた。
    任務先で邂逅した鬼は、自分の妹だった。殺さないでと頼んだ。一緒に逃げようと手を握った。師範はあの子をいとも容易く葬り去った。自分の目の前で。
    そして今度は自分の番だ。
    「・・・その刀は、」
    「私の初めの日輪刀だ」
    ちゃんと手入れしているから今でも綺麗に斬れる、と師範は言った。
    そうか、いつもの日輪刀では、人間の身体は酷い有様になるからか。鬼のように勝手に消えはしないから。あの日師範がこの刀を持ってどこへ、誰の元へ行ったのか、今頃やっと分かった。
    「せめてもの情けだ」
    言った師範の声はやっぱり低くて、少しだけ震えていた。
    「師範」
    「・・・言い残す事があるなら聞こう」
    見慣れた色の見慣れない刀が、自分の首を狙っていた。
    師範に見えないのは承知の上で、自分は笑った。同じ人に斬られれば、あの子と同じところに行けるかもしれない。
    「有難う御座いました。ご武運を」
    「・・・聞き届けた」
    不出来な弟子で、ごめんなさい。

    鈍い光が反射した涙が、まるで血のようだった。
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    出汁晶

    MEMO粛清の何年も後で。玄弥目線。「良かったら、一つ花を貰えないだろうか」
    世話している盆栽に花がついたと話をすると、悲鳴嶼さんはそう言った。そんな事をこの人が言うのは珍しくて了承して、剪定して花を一つ大きな手に乗せた。
    「有難う」
    飾るんだろうか、見えないから香りを楽しむんだろうかと思っていると、悲鳴嶼さんは庭の隅にぽつんとある墓の元へと歩いて行った。小さな土山の上に渡した花を置いて、手を合わせる。
    「・・・ずっと気になってたんですけど、そこ、誰が居るんですか」
    隊の共同墓地ではなくわざわざ自分の屋敷の庭に墓を作るなんて、余程大切にしていた隊士だったんだろう。もしや恋人だろうか。
    答えは無いかもと思いながら聞いたけど、悲鳴嶼さんは答えた。
    「・・・お前の先輩だ」
    「先輩・・・」
    咄嗟に頭を過ぎったのは、「またあの人が弟子をとるなんてな」と言った音柱の姿だ。また、と云う事は、俺の前に誰が居たんだろう、悲鳴嶼さんの弟子が。
    何故今居ないのかは、誰も教えてくれなかった。でもこの組織に居れば、いつ誰が死んだっておかしくない。
    俺は悲鳴嶼さんの横に並んで、一緒に手を合わせた。あんたもこの人の無茶苦茶な指導に振り回されたんですか 680

    出汁晶

    MEMO悲鳴嶼師範の粛清。夢のような夢ではないような。推しに殺されたい。「師範」
    部屋から出てきた悲鳴嶼師範が玄関に向かうから、外に行くならお供しようと立ち上がる。途端、「来るな」と低い低い声で制された。
    「任務のお邪魔はしません。いつものようにお供させてください」
    「任務ではない。伴はいらない」
    「でも、」
    「いいから来るな」
    「・・・はい」
    師範は頑固な人だ。自分がお願いしても、駄目な時は絶対駄目だ。
    「今日は帰らない。いつも通り鍛錬を」
    「・・・はい。お気をつけて」
    任務ではないと言ったその通り、師範はいつもの日輪刀を持ってはいなかった。代わりに手にあるのは、見慣れない普通の刀。色からして日輪刀ではあるのだろう。
    「行ってらっしゃい・・・」
    師範はあの日どころか翌日も帰らなかった。泣き腫らした瞼を閉じて滝に打たれているのを見つけた時、心配したんですよと自分は怒ったんだ。

    そんな事を今、思い出した。

    「・・・・・・お前には、使いたくなかった」
    師範は泣きながら、庭に正座する自分の前であの刀を鞘から抜いた。
    任務先で邂逅した鬼は、自分の妹だった。殺さないでと頼んだ。一緒に逃げようと手を握った。師範はあの子をいとも容易く葬り去った。自分の目の前で。
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