なりひさ
DONEオクノマワンドロ参加作品まとめオクノマまとめ口説く
「やあノーマン、それともゴブリンかな?」
本当は彼がゴブリンだと知っていたのだが、私は伺うように言った。日当たりのいい窓辺に座っていたゴブリンは胡乱な眼差しを私に向けてくる。
「だったら悪いかよ」
ゴブリンは気に入りのフードを目深に被っていた。こちらの世界に帰ってきてからゴブリンは大人しい。それほどあの薬が強かったということだろうか。
「ノーマンは?」
「ノーマンならしばらく出てこないぞ」
「何かあったか?」
今でもノーマンとゴブリンは一つの体を共有している。最近ではノーマンがゴブリンに体を明け渡すことが多かった。
「知らねえ。疲れたんだとよ」
ゴブリンは会話をするのが嫌だというように顔を背けた。ノーマンのことでゴブリンが知らないことなどないのに、下手な嘘をつく。しかしそれもノーマンのためなのだろう。
8687「やあノーマン、それともゴブリンかな?」
本当は彼がゴブリンだと知っていたのだが、私は伺うように言った。日当たりのいい窓辺に座っていたゴブリンは胡乱な眼差しを私に向けてくる。
「だったら悪いかよ」
ゴブリンは気に入りのフードを目深に被っていた。こちらの世界に帰ってきてからゴブリンは大人しい。それほどあの薬が強かったということだろうか。
「ノーマンは?」
「ノーマンならしばらく出てこないぞ」
「何かあったか?」
今でもノーマンとゴブリンは一つの体を共有している。最近ではノーマンがゴブリンに体を明け渡すことが多かった。
「知らねえ。疲れたんだとよ」
ゴブリンは会話をするのが嫌だというように顔を背けた。ノーマンのことでゴブリンが知らないことなどないのに、下手な嘘をつく。しかしそれもノーマンのためなのだろう。
なりひさ
DONEオクノマ。ハロウィンの話。ワンライ参加作品悪戯 きっかけは些細なものだった。ふとカレンダーが視界に入り、もうそんな時期かと驚いたのだ。そういえば随分と肌寒くなってきたし、冬の気配は日々濃くなっている。
私はオットーの背に触れた。オットーは何やら熱心に計算式を解いている。頭の体操だと言ってやっているが、そんな心配をするのは早過ぎないだろうか。
「トリックオアトリート」
私がそう言うとオットーは持っていたペンを置き、近くの引き出しを開けた。そこからキャンディをいくつか取り出して私の手に乗せる。
「なんだ、用意していたのか」
私はがっかりして手のひらのキャンディを見つめた。しかもそれはシュガーレスの喉飴だった。
「キャンディでは不満か?」
「悪戯をしたかったのだけど」
1423私はオットーの背に触れた。オットーは何やら熱心に計算式を解いている。頭の体操だと言ってやっているが、そんな心配をするのは早過ぎないだろうか。
「トリックオアトリート」
私がそう言うとオットーは持っていたペンを置き、近くの引き出しを開けた。そこからキャンディをいくつか取り出して私の手に乗せる。
「なんだ、用意していたのか」
私はがっかりして手のひらのキャンディを見つめた。しかもそれはシュガーレスの喉飴だった。
「キャンディでは不満か?」
「悪戯をしたかったのだけど」
なりひさ
DONEオクノマ。NWH後の二人。オットーの誘惑。ワンライ参加作品誘惑「ノーマン」
オットーの声は優しかった。まるでいつまでも泣き止まない幼子に話しかけるように落ち着いた声音だった。
「君が好きなものを選んだけど、どれがいい?」
オットーはピンクの箱を開ける。そこに並んだドーナツたちは、カラフルで陽気で過剰なカロリーの塊だった。箱と同じ色のチョコレートがべっとりとかかったものを、オットーは持ち上げる。
「これは私のおすすめだが、どうだい。食べに来ないか?」
オットーが声をかける先は暗い部屋だった。カーテンは全て閉め切っている。空気は澱み、埃も舞っているだろう。その部屋の中央に置かれたベッドにノーマンは潜り込んでいる。何日も。ノーマンやオットーが別の世界へと行き、帰ってきてからずっとだ。
1121オットーの声は優しかった。まるでいつまでも泣き止まない幼子に話しかけるように落ち着いた声音だった。
「君が好きなものを選んだけど、どれがいい?」
オットーはピンクの箱を開ける。そこに並んだドーナツたちは、カラフルで陽気で過剰なカロリーの塊だった。箱と同じ色のチョコレートがべっとりとかかったものを、オットーは持ち上げる。
「これは私のおすすめだが、どうだい。食べに来ないか?」
オットーが声をかける先は暗い部屋だった。カーテンは全て閉め切っている。空気は澱み、埃も舞っているだろう。その部屋の中央に置かれたベッドにノーマンは潜り込んでいる。何日も。ノーマンやオットーが別の世界へと行き、帰ってきてからずっとだ。
なりひさ
DONEオクノマ。オクノマ版ワンドロワンライ参加作品。学生時代の両片思いのふたりそばにいたい「オットー」
遠くから聞こえた声にオットーは足を止めるべきか悩んだ。聞こえなかった振りをする事は出来たが、そうすると余計に煩くなるだろう。その声の主がノーマンである事は分かりきっていた。
「なあオットー!」
結局オットーは足を止めて振り返り、ノーマンがこちらに走ってくるのを待った。
「どうしたノーマン」
ノーマンは随分と遠くから走ってきたのか顔を赤らめていた。きれいな髪がふわふわと揺れている。せっかく綺麗にセットしていただろうに、走ったせいで台無しだった。
「随分と探したぞオットー。どこにいたんだ」
「どこって教授のとこさ」
オットーはまだ息を切らしているノーマンを置いて歩き出す。ノーマンは小走りでついてきた。
1415遠くから聞こえた声にオットーは足を止めるべきか悩んだ。聞こえなかった振りをする事は出来たが、そうすると余計に煩くなるだろう。その声の主がノーマンである事は分かりきっていた。
「なあオットー!」
結局オットーは足を止めて振り返り、ノーマンがこちらに走ってくるのを待った。
「どうしたノーマン」
ノーマンは随分と遠くから走ってきたのか顔を赤らめていた。きれいな髪がふわふわと揺れている。せっかく綺麗にセットしていただろうに、走ったせいで台無しだった。
「随分と探したぞオットー。どこにいたんだ」
「どこって教授のとこさ」
オットーはまだ息を切らしているノーマンを置いて歩き出す。ノーマンは小走りでついてきた。
なりひさ
DONEオクノマワンドロ参加作。お題「世界の終わり」世界の終わり「もし明日世界が終わるなら何がしたい?」
ノーマンの言葉にオットーは彼を見返した。ノーマンは芝生に寝転がってドーナツを食べている。スーツを着なくなったノーマンは昔に戻ったように見えた。
「世界が終わるだって?」
「もし、だよ。もし明日世界が終わるなら、君は何がしたい?」
昼間の公園では場違いの会話のように思えて、オットーは顔を顰めた。
「なぜ世界が終わるのかな。隕石でも落ちるのか、それとも紫色のエイリアンが指を鳴らすのか」
「うちの世界にはいないことを願うよ」
ノーマンは穏やかな表情で公園を見渡していた。広い公園なので様々な人が思い思いに過ごしている。ノーマンの中にいたゴブリンは本当に消えてしまったのか、最近のノーマンはすっかり大人しかった。
1781ノーマンの言葉にオットーは彼を見返した。ノーマンは芝生に寝転がってドーナツを食べている。スーツを着なくなったノーマンは昔に戻ったように見えた。
「世界が終わるだって?」
「もし、だよ。もし明日世界が終わるなら、君は何がしたい?」
昼間の公園では場違いの会話のように思えて、オットーは顔を顰めた。
「なぜ世界が終わるのかな。隕石でも落ちるのか、それとも紫色のエイリアンが指を鳴らすのか」
「うちの世界にはいないことを願うよ」
ノーマンは穏やかな表情で公園を見渡していた。広い公園なので様々な人が思い思いに過ごしている。ノーマンの中にいたゴブリンは本当に消えてしまったのか、最近のノーマンはすっかり大人しかった。