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    なりひさ

    @Narihisa99

    二次創作の小説倉庫

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    なりひさ

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    オクノマ。オクノマ版ワンドロワンライ参加作品。学生時代の両片思いのふたり

    #オクノマ
    okunoma

    そばにいたい「オットー」
     遠くから聞こえた声にオットーは足を止めるべきか悩んだ。聞こえなかった振りをする事は出来たが、そうすると余計に煩くなるだろう。その声の主がノーマンである事は分かりきっていた。
    「なあオットー!」
     結局オットーは足を止めて振り返り、ノーマンがこちらに走ってくるのを待った。
    「どうしたノーマン」
     ノーマンは随分と遠くから走ってきたのか顔を赤らめていた。きれいな髪がふわふわと揺れている。せっかく綺麗にセットしていただろうに、走ったせいで台無しだった。
    「随分と探したぞオットー。どこにいたんだ」
    「どこって教授のとこさ」
     オットーはまだ息を切らしているノーマンを置いて歩き出す。ノーマンは小走りでついてきた。
    「今からは暇なんだろう?」
    「いいや。レポートがあるから帰るよ」
    「それってこの前に書いていたやつだろう。それなら完璧すぎるほど完璧だったじゃないか」
    「また勝手に読んだのか。とにかく帰る」
     ノーマンはオットーの肘のあたりを掴んで立ち止まった。そのせいでオットーも足を止めることになる。
    「なぜそんなに忙しいんだ。まさか教授がオットーだけに課題を多く出しているとでも?」
    「学生なんだから勉学に励んで何が悪い」
    「真面目なオットー・オクタビアス。勉強も遊びも君なら完璧だろう。言えよ。君にガールフレンドができたんだ。そうだろう?」
     ノーマンは内緒話をする悪友のような顔で言う。そうであったらよかったとオットーは思った。ノーマンは存在もしないオットーのガールフレンドを詮索してくる。オットーはお喋りな口の前に人差し指を立てた。
    「ひとつ、ガールフレンドはいない」
     きっぱりと言ったオットーの言葉に、ノーマンは少し頬を緩めた。まるで嬉しいのを隠しきれないように。
    「ひとつ、ついてくるな」
    「なぜ」
     オットーは憮然とした顔でなおもついてくる。オットーは歩幅を広めて早足で歩いた。
    「本当に忙しいからだよ。君に構っている時間がなくて残念だ」
    「本当だろうね。君が俺を避けているんじゃないかって気がしたんだけど」
     オットーは図星をさされたが、正直に「そうだ」なんて答えるわけがなかった。オットーはひとつ息をつき、背負ったバックパックを担ぎ直して肩をすくめた。
    「それこそおかしな話だ。君を避ける理由なんてどこにある」
    「ああ、もちろんそうさ。だからこれから付き合ってくれるだろう?」
     ノーマンは捨てられた子犬のような眼差しを向けてくる。この男のタチが悪いのは、それを自覚してやっているところだ。
    「それとこれは話が別だ」
     傲慢で自信過剰なノーマン・オズボーン。それに似合う実力があるのもいけない。そのせいで嫌でもこの男の魅力に惹きつけられてしまう。オットーはその第一の被害者というわけだ。
    「なぁオットー」
     甘ったれた声で呼ぶんじゃない。これだから嫌なのだ。ここで離れなければ、この男に飲み込まれてしまう。それは太陽の引力のようだった。
    「じゃあなノーマン。君こそ良い人と出会ったら真っ先に私に報告してくれよ」
     ひらりと軽やかに手を振ってオットーはノーマンとは別の道を歩き出す。もし振り返っていたら、ノーマンがひどく悲しそうな顔をしていたのを見ただろう。だがオットーは振り返らず、ノーマンもそれ以上追わなかった。そばにいたいという一言が伝えられないまま、二人の間を東風が吹き抜けていった。

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