ナンデ
DOODLEド兄 大t屋に行くゆちゃいつかこの味も懐かしい味になる、たぶんね ソファ席にどかりと座って、だらしなく足を開く。大門は肘をついて店員の運んできたお茶と水を受け取りながら、行儀が悪いなと思っている。と言っても大門だってそこまでお上品な人間ではない。むしろここ数年、ドブと共に出かけることが増えたせいか、店員に腹が立ったら怒鳴り散らしたり、無言で釣りを受け取ったり、そういうことを自然とできてしまうようにもなった。世間的に見れば大門も十分に行儀の悪い客だろう。
「お前、何にする?俺ァ今日肉かな、生姜焼き」
「俺ここ初めてなんだよな。定食屋ってことしか知らねえ」
「あー?そうなん?カツにしとけば?これこれ。チキンかあさん煮定食。定番だし」
「親子丼的な意味合いで?」
「名前が?いや、単に家庭料理イメージなんだろ。おふくろの味っていうか」
1108「お前、何にする?俺ァ今日肉かな、生姜焼き」
「俺ここ初めてなんだよな。定食屋ってことしか知らねえ」
「あー?そうなん?カツにしとけば?これこれ。チキンかあさん煮定食。定番だし」
「親子丼的な意味合いで?」
「名前が?いや、単に家庭料理イメージなんだろ。おふくろの味っていうか」
ナンデ
DOODLEドブ兄 出所後に兄を訪ねてくるドブ 甘めずるい奴に惚れたバツ 双子の警察官として、それなりに有名だった。と言っても何も全国区のテレビや雑誌にでた訳では無い。警察署の出している会報に小さな写真付きで載ったり、交通事故防止の講演にふたりで呼ばれ昔話をしたり、そういった人目につく仕事が普通の警察官よりもほんの少しばかり多かった。双子だから覚えられやすく、また双子が警察官を目指すきっかけになった両親の死と今日までの日々がドラマや小説のようだった。新人の時から目をかけてくれた上司などはふたりのことを「えらい」「今のヤツらには珍しく信念ってやつを持ってる」と飲む度に話した。
「それがお前の弁解ってわけ?」
大門が晴れてシャバに舞い戻ってから五年、遅れてドブもやっと刑務所の臭い飯から逃れられた。もう来るなよと看守たちから笑って見送られたその足で向かったのは今や引退し安穏と隠居生活を送っている黒田の元でも、未だ刑務所で規則正しい生活を強いられているヤノを今か今かと待っている忠犬たる部下である関口の元などでも、今はもう昔の女である白川の元でもなく、共犯者としてシノギを幾度も共にした大門堅志朗の元だった。
2736「それがお前の弁解ってわけ?」
大門が晴れてシャバに舞い戻ってから五年、遅れてドブもやっと刑務所の臭い飯から逃れられた。もう来るなよと看守たちから笑って見送られたその足で向かったのは今や引退し安穏と隠居生活を送っている黒田の元でも、未だ刑務所で規則正しい生活を強いられているヤノを今か今かと待っている忠犬たる部下である関口の元などでも、今はもう昔の女である白川の元でもなく、共犯者としてシノギを幾度も共にした大門堅志朗の元だった。
ナンデ
DOODLE出所後のドブ兄 甘め キスの日紫煙のない夜、キスの星を数えて 出所してから初めてのクリスマスは、幸志朗が子どもの背丈ほどのツリーを買ってきて言った。
「兄ちゃん、てっぺんのお星さま、つけていいよ」
にこにこと純真な笑顔でのたまう弟サマに堅志朗ショックを受けたのは、もはや自分たちが40も過ぎた年齢であるのに子どものように"お星さまを飾る権利"を喜ぶと信じていると思われた(実際、弟は譲られたら喜んで付けるのだろう。「いいの!?」と目を輝かせて……)こともあるし、クリスマスという、堅志朗がムショにぶちこまれる羽目になった日を楽しいイベントの日として割り切らなくてはいけない面倒くささと切なさもあったし、何より子どもの頃から兄の言葉と決まっていた「てっぺんのお星さまつけていいよ」が弟の口から出たことがいちばん、辛かった。幸志朗の中で兄という存在はもう唯一絶対じゃないんだと、思い知らされた。
2931「兄ちゃん、てっぺんのお星さま、つけていいよ」
にこにこと純真な笑顔でのたまう弟サマに堅志朗ショックを受けたのは、もはや自分たちが40も過ぎた年齢であるのに子どものように"お星さまを飾る権利"を喜ぶと信じていると思われた(実際、弟は譲られたら喜んで付けるのだろう。「いいの!?」と目を輝かせて……)こともあるし、クリスマスという、堅志朗がムショにぶちこまれる羽目になった日を楽しいイベントの日として割り切らなくてはいけない面倒くささと切なさもあったし、何より子どもの頃から兄の言葉と決まっていた「てっぺんのお星さまつけていいよ」が弟の口から出たことがいちばん、辛かった。幸志朗の中で兄という存在はもう唯一絶対じゃないんだと、思い知らされた。
ナンデ
DOODLEド兄 ホットドッグを食べるだけの小話だからシーツにケチャップを垂らせ 帰るために電車に乗るところで着信音が鳴った。タップで通話を繋げると、もうずいぶん聞きなれた声がする。
「大門くん、今日うち来ない?で、腹減ったからなんか買ってきてよ、金出すからさぁ」
突然、そうやって呼び出された大門は腹いせに、レジで購入できる中でいちばん大きな袋がぱんぱんになるほど食材を買ってきた。ふすんと鼻を鳴らしながら玄関を通り、乱暴にドブのいるリビングの扉を開ける。ドブはひらひら手を振って「いらっしゃい」などと言う。大門は舌打ちで返して、レジ袋をキッチンカウンターにどさりと置いた。
「で、何買ってきたの」
「ホットドッグ」
「えー?腹膨れねえだろ、ンなもん」
「とビール」
「大門くん、天才。さっすがぁ。惚れた。きゃあー抱いてぇー」
2770「大門くん、今日うち来ない?で、腹減ったからなんか買ってきてよ、金出すからさぁ」
突然、そうやって呼び出された大門は腹いせに、レジで購入できる中でいちばん大きな袋がぱんぱんになるほど食材を買ってきた。ふすんと鼻を鳴らしながら玄関を通り、乱暴にドブのいるリビングの扉を開ける。ドブはひらひら手を振って「いらっしゃい」などと言う。大門は舌打ちで返して、レジ袋をキッチンカウンターにどさりと置いた。
「で、何買ってきたの」
「ホットドッグ」
「えー?腹膨れねえだろ、ンなもん」
「とビール」
「大門くん、天才。さっすがぁ。惚れた。きゃあー抱いてぇー」