限界羊小屋
DONEリンフレ FWRPG次元初代のキツネノイズが復活して襲ってくる話
フォクシー・パニック『ごきげんよう、渋谷の民よ』
突然の大音量。フレットは思わず耳に手を当てる。そろそろ聴き慣れてきたとはいえ、寝起き一発目に金髪ホストの顔面ドアップは結構キツい。暇なのだろうか。
『ハロウィンを楽しんでいるか?今日は街もずいぶんとネツを帯びているね……』
「ハロウィン、かぁ」
シイバの言うとおり、まだ昼間だというのにスクランブル交差点は人の群れでごった返していた。蝙蝠の羽根をリュックに付けた人、猫耳のカチューシャを付けた人、ゴスロリで全身を固めた人……コスプレを楽しむ様々な、人。事情が事情でなければ自分もあの中に交じってはしゃいでいただろう—-親友を誘って。
「騒がしーね」
『実は先日、渋谷にかつて居たという面白いノイズの話を聞いてね……俺の部下が復活させてくれたよ。それで今日は特別なゲームを用意した。楽しんでもらえるといいのだが……』
5928突然の大音量。フレットは思わず耳に手を当てる。そろそろ聴き慣れてきたとはいえ、寝起き一発目に金髪ホストの顔面ドアップは結構キツい。暇なのだろうか。
『ハロウィンを楽しんでいるか?今日は街もずいぶんとネツを帯びているね……』
「ハロウィン、かぁ」
シイバの言うとおり、まだ昼間だというのにスクランブル交差点は人の群れでごった返していた。蝙蝠の羽根をリュックに付けた人、猫耳のカチューシャを付けた人、ゴスロリで全身を固めた人……コスプレを楽しむ様々な、人。事情が事情でなければ自分もあの中に交じってはしゃいでいただろう—-親友を誘って。
「騒がしーね」
『実は先日、渋谷にかつて居たという面白いノイズの話を聞いてね……俺の部下が復活させてくれたよ。それで今日は特別なゲームを用意した。楽しんでもらえるといいのだが……』
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DONEリンフレ クリア後世界雨の日とともだち
I.O.U. many things 特段会おうと思っていた訳でもなかった。仮に見かけたとしても声をかけるつもりはなかった。ただ、改札から漏れ出る雑踏を離れ、駅舎の屋根の際でぽつんと雨を眺めている後ろ姿が目に入った時、少し憐むような、同情するような気持ちがリンドウの中に芽を吹いた。
「……傘、持ってこなかったのか」
「あ……リンドウ」
振り向いたフレットは、ちっす、と力なく片腕を上げた。
「朝は雨予報無かったじゃん、リンドウもそれ折り畳みでしょ?」
「そうだけど」
彼の言う通り、意識して持ってきた訳ではない。朝のニュースでは降水確率は30%で、些事に細かく振り回されることを好まないリンドウは手持ちの傘を持たずに出かけてきた。ところが電車が五反田に差し掛かる頃には窓に水滴が張り付いており、今や勢いこそ弱いものの、しとしとと柔らかく冷たく肌に張り付くような雨模様になっていた。リュックのサブポケットに折りたたみの傘が突っ込んであったのがたまたま功を奏しただけである。
2798「……傘、持ってこなかったのか」
「あ……リンドウ」
振り向いたフレットは、ちっす、と力なく片腕を上げた。
「朝は雨予報無かったじゃん、リンドウもそれ折り畳みでしょ?」
「そうだけど」
彼の言う通り、意識して持ってきた訳ではない。朝のニュースでは降水確率は30%で、些事に細かく振り回されることを好まないリンドウは手持ちの傘を持たずに出かけてきた。ところが電車が五反田に差し掛かる頃には窓に水滴が張り付いており、今や勢いこそ弱いものの、しとしとと柔らかく冷たく肌に張り付くような雨模様になっていた。リュックのサブポケットに折りたたみの傘が突っ込んであったのがたまたま功を奏しただけである。
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DONEリンフレ プロローグif、超暗いリスタがなかった世界線 「墨絵」のフレット視点
幽霊 渋谷は今日も晴れ模様。ビルの群れに切り取られた痛いほどの青色の上を、強い風に圧された雲が快速で横切っていく。眠くなりそうに真っ白な日差しが燦々と休日の光景を照らしている。短く刈りそろえられた芝生が気持ちよさそうに太陽を満喫していた。人々はテイクアウトのコーヒーを片手に、連れと睦みあって笑っている。
友人はその中を縫って歩いていた。ただ独り、光を拒絶するように画面に目を落としたままで歩いていた。
ミヤシタパークを降り、山手線の高架下を潜る。
グロい、とすら思えなかった。それはもはや人の形を留めていなかった。奇妙なことに俺はその場でリンドウが行手を遮られて遠くに離され、自分の体だったものが車に乗せられていくのを見ていた。リンドウが見なくてよかったと思う。それに見たところで自分と判別できるかどうかすら微妙なラインだった。
2940友人はその中を縫って歩いていた。ただ独り、光を拒絶するように画面に目を落としたままで歩いていた。
ミヤシタパークを降り、山手線の高架下を潜る。
グロい、とすら思えなかった。それはもはや人の形を留めていなかった。奇妙なことに俺はその場でリンドウが行手を遮られて遠くに離され、自分の体だったものが車に乗せられていくのを見ていた。リンドウが見なくてよかったと思う。それに見たところで自分と判別できるかどうかすら微妙なラインだった。
限界羊小屋
DONEリンフレ プロローグifで超暗いリスタがない世界線
墨絵 ミヤシタパークを降り、山手線の高架下を潜る。晴れた日でもこの高架下はまるで光を拒絶するように暗く、淀んでいる。道路の脇に白い花と菓子がひっそりと据えられていた。白い靴が退屈なテンポでアスファルトを踏み、神宮通りに向けてトンネルを抜けると再び陽光が眩しく視界を埋め尽くす。
赤い絵の具を垂らしたみたいだった。
乾いたその色が、今も風景の端を染めているように錯覚する。
スマホを取り出して”ポケコヨ”の画面を開く。マップを開いて辺りを確認すると、道の向こうにカーバンクルが一匹表示された。レアリティは高くないがどうせ暇だしいないよりはマシだ。そのまま交差点を渡ろうとして、高く鋭い警告音に咎められた。視線を上げると歩行者用信号はとっくに赤に変わってしまっている。追い立てられるように急いで歩道に駆け戻り、スミマセン、と心の中で謝った。信号待ちの人並みがうんざりしたようにこちらを睨んでいる。
1974赤い絵の具を垂らしたみたいだった。
乾いたその色が、今も風景の端を染めているように錯覚する。
スマホを取り出して”ポケコヨ”の画面を開く。マップを開いて辺りを確認すると、道の向こうにカーバンクルが一匹表示された。レアリティは高くないがどうせ暇だしいないよりはマシだ。そのまま交差点を渡ろうとして、高く鋭い警告音に咎められた。視線を上げると歩行者用信号はとっくに赤に変わってしまっている。追い立てられるように急いで歩道に駆け戻り、スミマセン、と心の中で謝った。信号待ちの人並みがうんざりしたようにこちらを睨んでいる。