enokoro_TRPG
DONE羊水に溺れて死にたい/たくしゅ二次創作です ざあざあと降る雨がスカートを濡らす。傘は上半身についていくけれど、踏み出す足を守ってはくれなかった。濡れるのは嫌だ。重くなったスカートは足に纏わりついて不快だし、視界に雫が映ると前が見えない。
だけど、雨は嫌いじゃなかった。濡れた体を放っておけない人が俺のために存在する。そんなことも有り得るのだと最近は知っていた。扉を開けて出迎えてくれたその人を見ると、温かい湯船に浸かっているような気分になる。全てを曝け出す心許なさに、それを覆うほどの安心感だ。
「わー、びっしょびしょ」
目を丸くした秋先輩がばたばたと忙しなく動く。これくらい大丈夫です、と言って中に入れば、彼はすかさず口を挟む。
「風邪引くから駄目だってば。そうやってすぐ意地張る……」
1016だけど、雨は嫌いじゃなかった。濡れた体を放っておけない人が俺のために存在する。そんなことも有り得るのだと最近は知っていた。扉を開けて出迎えてくれたその人を見ると、温かい湯船に浸かっているような気分になる。全てを曝け出す心許なさに、それを覆うほどの安心感だ。
「わー、びっしょびしょ」
目を丸くした秋先輩がばたばたと忙しなく動く。これくらい大丈夫です、と言って中に入れば、彼はすかさず口を挟む。
「風邪引くから駄目だってば。そうやってすぐ意地張る……」
enokoro_TRPG
SPOILER祈りとはたこの形をしている/昼食泥棒後日談 多くのひとが寝ている寮内は、夜の廊下を思わせる静けさに包まれている。髪を縛り直して炊飯器を開ければ、つやつやの米が炊き上がっていた。
あくびをしながら白米を弁当箱に詰めて、ウインナーを取り出す。ぼうっと湯気を見つめていると、先週後輩とした会話を思い出した。
「お弁当、食べてみたかったんです」
そう言われたとき、どんな顔をすれば良いか正直わからなかった。初めてなの、と掠れた声を誤魔化すように着席を促して、ざわつく胸の内を隠す。嬉しそうな顔を見てすぐに溶けた違和感は、そのままにして良いのかわからない。
お弁当を食べたことがないひとが身近にいるなんてびっくりした。
ひーちゃんも手作りのお弁当なんて食べたことがなさそうだけど、それは家がでかすぎるからだ。きっと一流のシェフを呼んで目の前で作らせるような生活をしていたんだろう。だから良いと言う話ではないけれど、パンの耳を食べているような人間とはまた違う。
931あくびをしながら白米を弁当箱に詰めて、ウインナーを取り出す。ぼうっと湯気を見つめていると、先週後輩とした会話を思い出した。
「お弁当、食べてみたかったんです」
そう言われたとき、どんな顔をすれば良いか正直わからなかった。初めてなの、と掠れた声を誤魔化すように着席を促して、ざわつく胸の内を隠す。嬉しそうな顔を見てすぐに溶けた違和感は、そのままにして良いのかわからない。
お弁当を食べたことがないひとが身近にいるなんてびっくりした。
ひーちゃんも手作りのお弁当なんて食べたことがなさそうだけど、それは家がでかすぎるからだ。きっと一流のシェフを呼んで目の前で作らせるような生活をしていたんだろう。だから良いと言う話ではないけれど、パンの耳を食べているような人間とはまた違う。
koyubikitta
TRAININGtrpg用に作った黒セーラー眼鏡会計の「捏ね」 ママの「目が覚めた」のはぼくが十二歳の時だったと思う。時期が曖昧なのは、ぼくがママの異変になかなか気が付けなかったからだ。本当はもっと早くだったのかもしれない。
「ママが間違ってた。これまでごめんね」
よく聞くセリフだったからぼくはママそんなことないよ、と普通に返事をした。ママは辛そうな顔をした。ぼくは目の前のグラタンが冷める前に食べたかったけど、今スプーンでふうふうして食べたりしたら止められるだろうとも思ったから、迷っていた。
グラタンのチーズが固まっていく変化には気づいていたけど、ママが違う人みたいに変わっていることはわかっていなかった。
その日は気まずい空気のままぬるいグラタンを食べた。
「ママ、予定表の来週、埋めて」
2641「ママが間違ってた。これまでごめんね」
よく聞くセリフだったからぼくはママそんなことないよ、と普通に返事をした。ママは辛そうな顔をした。ぼくは目の前のグラタンが冷める前に食べたかったけど、今スプーンでふうふうして食べたりしたら止められるだろうとも思ったから、迷っていた。
グラタンのチーズが固まっていく変化には気づいていたけど、ママが違う人みたいに変わっていることはわかっていなかった。
その日は気まずい空気のままぬるいグラタンを食べた。
「ママ、予定表の来週、埋めて」